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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
龍界決闘/―――
265/276

257 霊廟前



 「――ここは…」


 戦いの最中、トドメを放った一撃の後。

 それを阻んだ砕けた箱から放たれた光に飲まれ、ヤマトは気付けば見知らぬ場所。


 「が…ぐぅッ!?体が…反動か…」


 その場所が何処かも分からぬうちに、先に訪れたのは全身の痛み。

 無茶な戦い方をした代償が発露する。


 「相手が大罪だからと言って、やり方が乱暴過ぎます!お兄ちゃん!」

 「ティア…そうか、デバフの圏外だから」

 

 そんな痛みに震えるヤマトに、小人ティアが動き出しお小言を告げる。

 彼女が動けるという事は、ここはしっかりとデバフ圏外。

 シラハからは相応に離された証明でもある。


 「アリアは…居ない?」

 「不明です。転移の折に引き剥がされて別の場所に出現してるのでしょう」

 「転移…確かにあれは転移の感覚だったけど…あれ?これは…龍の気配?」

 「ですね。ここは…そうですか、この場所は」


 そしてアリアの不在を認識し、自らに起きた出来事を振り返ったヤマト。

 するとこちらへと近づいて来る龍の気配を感じ取る。


 「…おっと、めんどうながらに不法侵入者を追い出しに来れば、見知った人間のご登場か」

 「あ…シュルトリアさん…ですよね?姿が人型ですけど」

 「ん?あぁ、そういえばこっちの姿は初めてか。でも視えてるなら答えは分かるだろ?」


 そうして対面するのは、見た目は全く見知らぬ容姿の人物。

 だがその正体、鑑定の眼で見抜いた情報は【シュルトリア】。

 龍主候補でもあった白き龍、しかし今は真っ白な髪の人の姿。


 「この姿の方が楽で便利な時もあるから、龍には珍しく覚えた側なんだよ俺は。で…俺の姿はどうでも良しに、そっちはなにしにここに来たの?一応ここ、部外者立ち入り禁止なんだけど?」

 「いやちょっとトラブルで跳ばされまして…ちなみにここ何処ですか?」

 「あー、この洞窟はともかく、この先は一応秘密の場所なんだけど…どうするか」

 「ここは龍の中でも一部の者しか立ち入りが許されない場所。そして、この先にあるのは〔宣誓の霊廟〕です。普段は閉じられたその場所は《龍主継承》の時にだけ開かれる、歴代龍主の祀られし場所です」


 そんなシュルトリアに尋ねたこの場所。

 ここが何処か分かっているヤマトに対して、少々説明に苦慮する様子を見て代わりに答えたティア。

 龍界のどこか分からぬ場所にある、墓所とはまた別の洞窟の中。

 そしてこの先にあるのは〔宣誓の霊廟〕。

 歴代龍主の魂が祀られ、龍主を次代に継ぐ儀式の際にのみ開かれ立ち入ることが許される場所。


 「ここに貴方が居るという事は、今まさに龍主の継承を?」

 「ちっこいのは随分かしこいな。その通り、今まさに向こうで龍主継承が行われている。龍主様の申し出で色々手順すっ飛ばして本命儀式を開催中だ。俺たちは立会人だったけど…流石にこの行程は二人だけのものだから今は護衛というか門番役だな。めんどうだけど」

 「俺たち?」

 「あぁ、ブルと、あとブルガーも居る。向こうに」


 そして普段立ち入り禁止のこの場所にシュルトリアが居るという事は今まさに龍主の引継ぎが行われているという事。

 予定された装飾(・・)を全て外した簡素な…いや本来の必要だけの行程をこなしている最中であるらしい。


 「で、そんなボロボロになるほど外の騒ぎは大事なのか?いや…まずは休める方が先か。ほら捕まれ。霊廟そのものには案内出来ないけど、待機所…控え室?そんな感じの小屋になら案内できるからそこで少し休め」

 「すいません、ありがとう…」


 色々と尋ねたい事がある両者だが、まずはボロボロのヤマトの休息が優先。 

 シュルトリアに支えられたヤマトは、そのままその奥の小さな建物に運ばれた。




 「――ヤマト?なんでここに…いや、こっちに来い!」

 「ブルガー、今見張りをしてるのはブルか?」

 「はい、そうです。ほら、とりあえず横になれ」


 そしてその小屋にはお茶を飲んでゆっくりしている龍人ブルガーの姿があった。

 ここに来るはずのないヤマトの存在に驚きつつ、すぐにヤマトの状態に気付いて簡易ベットへと案内する。 

 

 「ここには治癒役がいない。とりあえず…これ飲んで、これ食って、これ貼って休んどけ」

 「ゴクリ…モグモグ」


 そのままこの場で取れる最大の対処を施して貰うヤマト。

 するとそんなヤマトの体にシュルトリアが触れる。


 「じっとしてて…こんな感じかな?」

 「これって…治癒?使えたんですか?」

 「実はね。まぁ本職には程遠い、自分の怪我を誤魔化す為だけに覚えた独学のやり方だし、他者を癒すのは初めてだから大した効果は期待できないけど、まぁないよりもマシでしょ」

 「はい、ありがとうございます」


 本来頑丈で回復力も高い龍には珍しい治癒の力を披露するシュルトリア。

 確かにたどたどしく腕は未熟、しかしこの場においてはあるだけありがたい力。

 

 「で、これやってる間に、外の事教えてくれる?面倒事は知りたくないけど、知らない方が面倒になりそうだし」

 「あ、はい。外は今――」


 そうしてヤマトの体を休める間に、外での出来事を語りだす。

 ずっと龍主継承に連れ回されていたシュルトリア達は、外で騒ぎがあるのは理解しているがその内容は把握していなかった。

 


 「…スライム、あの研究施設絡みか?」

 「研究施設?えっと、勇者パーティーが踏み切んだっていうアレ?」

 「あぁ」


 すると話に上がるのは以前、勇者パーティーが調査した施設について。

 エルフの里で出会った人型スライムの生まれ場所と推測される研究所。

 今回の特殊なスライムも、出処は同じだという推測は簡単に行き着く。


 「それにエルフのシラハ、今は七罪の魔人か…こんなところで勇者パーティー案件に遭遇するとは」

 

 そして一番の問題になる七大罪の魔人の出現。

 魔王に関わる事柄は、ブルガーが所属する勇者パーティー案件。

 龍界では無縁と思われたその事象が、予想外に舞い込む今の事態。

 

 「…噂をすれば、かな?」

 「え?あ…この気配は!?」


 そんな存在を二人に告げたヤマト。

 だがその直後、その噂話が本人を呼び寄せることになる。


 「俺が行きます。シュルトリアは治療と守りの方をお願いします」

 「一人で行くんですか!?」

 「一人じゃない。俺は召喚士だからな」


 望まれぬ来客の登場に動き出したブルガー。 

 儀式の最中の霊廟を背にして、新たな戦いが始まろうとしている。





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