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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
龍界決闘/―――
245/276

237 龍界の海水浴



 「――うわ、海しょっぱ!」

 「川と全然違うね」

 「簡単に体が浮く…楽」


 初めて入る海に驚くそよ風団の三人。

 故郷での川遊びは経験のある彼らだが、海に実際に浸かるのは今日が初めて。

 当然川と海では勝手は違うが、それでも泳ぐ術は身に付けているので差異にもいずれ慣れるだろう。 


 「それにしても…水着って、なんだか下着と変わらないように思うのだけど?」

 「まぁ言いたいことは分からなくないけど」


 そんな三人を見守る保護者ポジションのヤマトやアリア。

 するとヤマト達のその恰好に、アリアが疑問を呈する。


 ――今日は海水浴として、龍界の海岸にやって来た一同。

 港町と違いしっかりと浜辺で海水浴の出来る環境。

 海で泳ぐ経験のないそよ風団を初めとして集う人々は、泳ぐ前提の者たちは皆水着姿でやって来ている。


 「けどまぁ男の、このぐらいの恰好なら町でもたまに見かけるでしょ?」

 「まぁね、やたらと筋肉質な人が多かったけど」


 そしてヤマトの纏う水着は、シンプルな海パン。

 かつての前世の世界の一般的な、短パンタイプの男性水着。

 下半身以外は素肌丸出しで、格好としてはどうかという疑問も分からなくはない姿。

 しかし男性の場合は、町中でもズボン一枚で過ごす人々が極一部ながらに存在するので、この程度の露出度は人にもよるが問題視されるものではない。


 「でも女の子達は…足とかしっかり出てるけど良いのかしら?」


 対して女性陣の纏う水着は、前世知識で言えば学校の指定水着のようなもの。

 上下一体でシンプルなデザインのワンピースタイプの水着というところか。

 こちらの世界の常識では、あまり露出度の高い水着はない。

 手足を出すぐらいで、おへそや背中が大きく出るような水着はそもそも好まれない。

 ゆえに自然と共通規格の一択になる女性水着の選択肢。

 個性を出すのはいわゆる色や、刺繍や僅かな装飾の類。

 そよ風団の中では、ヒスイはライトグリーン、タリサはブルーの水着を纏っていた。


 「ちなみに、アリアは着替えないの?」

 「あら?私の水着姿が見たいの?」

 「いや、そこはそんなに興味はないかな」

 「それはそれで何となく不満感じるのだけど、まぁ水着とかは精霊には必要ないし、泳ぐ用だと言われても興味もあんまりね。このまま泳げばいいだけだし」

 「まぁそうだけどね」


 ちなみに精霊アリアはいつもの姿。

 精霊、特に水に属する彼女にとって水着など無くともそのまま海に飛び込むだけのお話である。

 そもそも彼女が纏っているように見える衣服は彼女の体の一部としてそういう見た目に模しているだけだ。

 服という概念が必要ない存在が、人間に見た目を合わせてくれているだけ。

 勿論それを変化させる事で水着を纏うように見える姿にはなれるが、わざわざ決まった姿を変更するの面倒だし、そこまでの興味も水着に対して持っていない。

 かといって用意された水着を纏うのは水に触れる上で逆に邪魔になる。


 「そんな感じに、私自身は特に水着に興味はないのだけど…あの姿をブルガーが見れないのはだいぶ勿体ないとは理解はできるわね」

 「まぁ…そこはそうかもね」


 そして次にアリアが注目したのは、そよ風団のゲストの姿。

 勇者パーティーの弓使いメルト。

 彼女も彼らと共に水着姿で海辺に立つのだが…彼女の纏う水着は真っ白な水着。


 (美人の白水着って映えるなぁ。ブルガーさん居たら動揺しそう)


 綺麗な水着姿を見せるメルト。

 その姿は…ここには居ないブルガーには見られないもの。

 もし居たなら面白い反応が見れたかもしれない。


 「ブルガーも、一緒に来ればよかったのに」


 龍人ブルガーは例の一件、ブルムンドラの戦いの日以降はヤマト達とは完全に別行動。

 日に何度か顔を合わす機会はあっても、軽い挨拶だけでまともな会話は一度もない日々が続いていた。


 「で…あっちは相変わらず…というかしっかりとハマってるわね、王女様は」


 そんな一行とはまた別に、少し離れた場所に集う別の一団の姿が視界に小さく映っている。

 それは王女リトラーシャ率いる一団。

 肌を露出させる水着姿とは正反対に長ズボンに長袖の衣服、麦わら帽子にサングラスを掛け、日差しを遮るパラソルの下に収まり海に向けて釣り竿をふるっていた。

 港町で初めて覚えた釣りにしっかりとハマった王女様は、この龍界の海でも海水浴そっちのけで釣りにいそしんでいた。

 

 (そもそも王女様だと肌を人前で露出させるのも微妙ではあるだろうけど…にしてもそこまでガッツリハマるとは)


 もはやメルトの付き添いもなく堂々とした佇まいの釣り人王女。

 港で知り合った釣りおじさん達のアドバイスもすべて吸収し、既にそれなりに腕があるらしい。


 「まぁ、付き添う彼らは大変そうだけど」


 ただしそれをただ一人で楽しめる立場にはない。

 当然のように付き添う騎士や従者たち。

 雲一つない快晴の日差しの下で、いつもの騎士装備を全く緩めずに涼しい顔をして佇む護衛。

 お世話をする従者たちの被る帽子すら視界の邪魔と被らない仕事人。

 その苦労は尊敬の域。


 「それと…龍も海で泳ぐものなのね」

 「あれは泳ぐというより飛び込みだけど」


 そしてまた別の方角。

 浜辺に影響をあまり与えない沖合にて遊ぶのは子供の龍達。

 空から落ちるように水しぶきを上げながら海に飛び込み、また空に上がっては飛び込んでを繰り返した遊んでいた。

 

 「ちなみに…そのお目付け役は寝てていいのかしら?」

 「ぐー…ぐー…ぐー…」


 そんな子供の龍達の、海遊びの保護者としてヤマト達の背後で眠る(・・)白龍シュルトリア。

 元龍主候補の彼は子供龍を見守る役目でここにありながら、グウグウ眠っているのだった。


 「これでも気配の察知は出来てるみたいなので大丈夫だと思いますよ多分」


 するとティアが、この状態でも問題ないだろうと口にした。

 そもそも彼がここに居るのは、子龍達が龍界の外に出る可能性を懸念してのこと。

 陸であれば分かりやすいが、海は境界線を見失いやすい。

 龍界の外に出れば例え龍だろうと魔物に襲われる可能性が出る。

 ゆえに子供たちが龍界を誤って出てしまわないようにシュルトリアが寝ながら見守っているのだった。 


 「あと、ティアは泳げるの?」

 「溺れはしませんし、水中移動も可能ですが…泳げるかと言えば微妙ですね。こう、アリアさんと似たような感じになるので」

 「あぁ、まぁ泳ぐというより歩くとか飛ぶ感じよね。私は」


 なおティアやアリアも、当然海への適正は高い。

 しかし人間のように泳ぐというよりは水中を縦横無尽に飛ぶ(・・)イメージ。

 足も手も動かさず浮いて飛ぶような感覚で真っ直ぐに海の中をつき進める。

 ついでに海の中で歩く事もできる。

 ゆえに泳ぐ(・・)とはちょっと違う二人の海水浴。

 

 「おーい!ヤマトさんも一緒に!」

 「アリアさんとティアちゃんもー!」


 そうして場を見守るヤマト達に、そよ風団からお誘いが掛かる。


 「まぁ、行きましょうか。せっかく来てるのだし」

 「そうだね」

 

 そのままヤマト達も合流し、海での賑やかな時間を過ごすのであった。


 

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