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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
龍界決闘/―――
239/276

231 龍墓の骨



 ――龍界の山の中腹にある洞窟の入口。

 中に進み遭遇したのは〔龍墓〕。

 龍種や龍人、この領域に住まう者達の墓地。


 「ここに並ぶ墓石は全部龍人のものだ」


 広い空間に綺麗に等間隔に並ぶのは龍人達の墓石。

 死した龍人達は家系に添ってそれぞれの墓石の下に埋葬される。

 形式として言えば人種族と似通った文化であるようだ。


 「………」

 「ん?あぁ祈ってるのか。俺ら龍人にはない作法だがありがとな」


 するとヤマトは目の前の墓石の並ぶ空間に向け手を合わせる。

 墓所の文化は似通っていても、墓石に向けて祈るようなことは龍人にはないようだ。


 「じゃあ龍人はここで何をするの?」

 「祈りはしないが、まぁ世間話か?息子が結婚したぞとか、アイツが子供を産んだとか」


 わざわざ墓石の前で祈りはしないが、死者の身内の報告をする為にやってくる。

 それもまた立派な墓参りの一環。 

 

 「とまぁ、実は今回の用件は更にこの向こうなんだよ。俺ら龍人の墓には用はない」

 

 とは言え今居るここは今回の用事の本題ではないらしい。

 墓所を歩いて更に奥に進む一行。

 龍人の墓のある広場を通り過ぎ、再び洞窟の道を進む。

 奥に進むことで更に少し肌寒さが増した気がする。


 「さて、ここの分かれ道は…どっちに行くと思う?」


 すると一本道に現れた分かれ道。

 右と左の二つの選択肢。


 「うーん、右かしら?」

 「よし、じゃあこっちだ!」

 「ん?」


 案内のバリトーに何故か問われた二択に応えたアリア。

 そのままその示した道を選び進む一行。


 「…よし!こっちじゃなかった!戻るぞー」

 「ちょっと?」

  

 だがある程度進んだところ、反転し来た道を引き返すことになる。


 「いやぁすまん。数十年振りに来るとこだから右か左か覚えてなかったわ」


 案内を任されたバリトーだったが、彼にとってもここはあまり馴染みある場所ではない。

 そのせいで単純に道が分からなくなり、示された二択でハズレを引いた結果引き返す羽目になった。


 「ちなみの、この道進んでたら何があったの?」

 「あぁこっちは龍たちの墓所だな。まぁ龍人の墓と違ってデカイ石がドンと置かれてるだけだが。龍たちは埋葬する文化ではないからな」


 そしてこの間違えた道を進んだ場合、待っていたのは龍の墓。

 龍人の個別の墓所とは違い一纏めにドンと大きな巨石の墓所があったのだという。


 「龍の死骸は埋めないの?」

 「あぁ。外で死んだやつらはまぁ…倒したやつや見つけたやつが素材として持ち帰るからここに死骸は届かない。この辺りで死んだやつらは基本的に火葬で全部燃やしちまうから結局ここには残らない。たまーに遺言で俺ら龍人の為に素材として残してくれる御方もいるが、活用させて貰った部位以外は結局残りは燃やすからな」


 龍の文化では死骸は火葬、それも骨も残らぬ強火で焼き尽くすようだ。

 ただ、頑丈な龍の骨を燃やしきるには相当な火力が必要。

 それを行えるのも龍であり、彼らにとってはそれも供養という事なのだろう。


 「じゃあこっちは何があるの?」

 「こっちもまぁ墓ではある。ただしワイバーンとか、龍族以外で龍と呼ばれるやつらの墓所だけどな」


 改めて進む左の道。

 この先にあるのはワイバーン達の墓。

 龍系統の生命体ではあるが龍族のくくりには含まれない、人によっては亜龍種族と呼ぶ者もいるその他の龍(・・・・・)

 この龍界にはそんな彼らも住まい、この地で死すればむ墓所に眠ることになるという。

 今回ヤマト達が呼び出された用事はそちらにあるようだ。


 「と…ここがワイバーン達の墓だな」


 そして辿り着いたのは更なる墓所。

 ワイバーン達の眠る場。

 家系事に個別に墓石が用意されていた龍人、一纏めに巨石がドンとあるらしい龍の墓ともまた違う。

 そこにあったのは洞窟の中の〔花畑〕。


 「ワイバーン達の死骸はそのまま埋めたりはしない。文化がどうこうって話じゃない。龍とは言われるが種として抵抗力の弱いあいつらの体は完全に燃やし尽くさないと下手に残すとアンデットになる可能性が残るからな」


 死してなお死骸が力を持つ龍や龍人と違い、ワイバーンなどは生ける屍と化す可能性がある。

 龍人や龍のようにアンデット化すら寄せ付けない程の種の力はなく、かといって対策なしに放っておけるほど弱い種でもない。

 これにおいては中途半端な位置に居る彼らは、もしもの時には厄介な存在になってしまう。

 ゆえに彼らの死骸は完全に燃やしきる。

 墓に埋めるべきものは何もないため、代わりにここには花が植えられるということらしい。


 「おぉ、来なさったかの」

 「おう、じいさん待たせたな!」


 するとその花畑で待っていたのは老いた龍人。

 その役職には"墓守"と記されていた。


 「わしゃぁここの管理を任されておる墓守じゃ」


 ただただその【墓守】とだけ名乗るおじいさん。

 龍たちの墓の守り人を担う存在。


 「そなたが件の客人かのう」

 「あ、初めましてヤマトと申します」

 「精霊のアリアよ」

 「ティアと言います」

 「ほっほ。人に精霊によく分からんちっこいの。なんともちぐはぐな面々よのう。さぁさこちらに来るのじゃ」

 

 そして軽く名乗ると、そそくさと本題に入り出す墓守。

 案内されるのはさらに奥。

 花畑を過ぎて、短い道を進んだ先にあるまた別の広場。


 「ここはちょっとした作業場じゃな。邪魔かもしれんが避けて進んどくれ」

 「これって…骨?」


 辿り着いたのは作業場と言われた場所。

 そこには()が並べられていた。


 「これは、ワイバーンの亡骸?」


 広場の地面に綺麗に並べられた骨の正体は〔ワイバーンの死骸〕。

 肉はなく骨だけの姿で、これから骨格標本でも組み立てるのかというように全身しっかりと揃えて並べられていた。

 

 「こいつはあんたらの言う賢者から届けられた標本じゃ」

 「賢者シフル?」


 話によればこれは以前に、今回の船旅よりも前に賢者シフル名義で龍界に届けられた荷物の一つだったらしい。

 

 「その賢者によればこの骨にはワイバーンとしておかしな点(・・・・・)があるらしく調べとくれと届けられたらしいのじゃ」

 「おかしな点ですか?」


 賢者はこのワイバーンの骨におかしな何かを見つけて、その調査を龍界に依頼した。

 そしてその役目の代表となったのが、墓守として骨にも詳しいらしいこのおじいさん。


 「手紙によれば、コイツはどうやら人の国の王都を襲ったスカルワイバーンの一体の骨らしいんじゃ」

 「王都…あ、あの時の!?」


 するとその出所に、ヤマトは心当たりを見つける。

 王都を襲った【スカルワイバーン】。

 それはヤマトも遭遇したもの。

 最初の魔王勢力による王都襲撃時に、ヤマト自身も対峙し倒した敵。

 これはそのうちの一体の、比較的全身がしっかりと残っていた亡骸のようだ。


 「ほう、あんたもコイツが動いてるのを見たもんか?」

 「あ、はい。戦った相手なので」

 「そうかい、それは良いオマケだな。よければ少し話を聞かせてくれ」

 「え?もしかしてこれが呼ばれた本題ですか?」

 「ん?いやそれは別じゃ。あんたらがここに来た用件とは別に、これについての話も聞かせてくれんか?」


 そしてその事実を、ヤマトがこれが動く姿を目撃した一人だと知った墓守は本題とは別にこれの調査のお手伝いとして話を聞かせて欲しいと頼んでくる。


 「本題の方はいいのかしら?」

 「急ぐものでもなしにの。来るのが少し早すぎた。もうちょい経たんと見せようもない」


 ここに来た本題からは逸れるが、出来れば協力して欲しいと言う墓守。

 ヤマト達の来るペースが少し早かったようで、本題を語るには時間が空いている。

 その時間で少し目の前の骨について話がしたいという。


 「まぁそれなら俺は良いですが」

 「ヤマトが良いなら良いんじゃない?」

 「です」

 「ありがとう。では早速話を――」


 こうして呼ばれた目的とはズレるが、目の前のスカルワイバーンについて、王都襲撃時の話を語ることになったのだった。

 

 

 


 


 

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