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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
龍界決闘/―――
237/276

229 龍界の山登り



 「――ふぁぁ…朝か…んっと」


 朝、目を覚まして立ち上がるヤマト。

 宿は和の様相の旅館の一室だが、布団は無く普通にベットが並んでいた。

 ただし部屋の中には畳の敷かれた完全な和室も備えられており、久々に懐かしい匂いを感じた。

 

 「アリア、朝だよ」

 「んー…むにゃ…おはよう…」

 「おはよう」


 そんな畳の部屋で眠る精霊アリア。

 普段はヤマトの中で眠る彼女は、なんだか畳に興味を惹かれたようで実体化したまま畳の上に寝転がり眠り夜を越していた。

 

 「ちなみに…ティアはどこに?」


 なお小人モードのティアもアリアと共に畳の部屋で眠ったはず。 

 しかしぱっと見でその姿は見えない。


 「んー?その辺に居ない?」

 「いや見当たらな…ん?」


 姿の見えないティアを探して見渡すヤマトだが…一つ違和感を見つけた。

 

 「…アリア。ちょっと立ってみて?」

 「こう?」

 

 その疑惑を確かめる為に、アリアに立つよう促すヤマト。

 それに従いゆっくりと立ち上がったアリア。

 

 「…居たなぁ」

 「…居たわね」


 結果として見つけた小人ティアの姿。

 だが畳の上でクタっとうつ伏せで寝転がる。

 しかもその位置は先ほどまでアリアが寝転がっていた場所。


 「…ティア潰した?」

 「かもしれないわね」


 畳部屋で一緒に寝ていたアリアとティア。

 だか小柄過ぎるティアはそのまま、寝返りを打ったアリアに潰されてしまったようだ。


 「――アリアさんとはもう一緒に寝ません。ぐすん」

 「ごめんねーヨシヨシ」


 その後目覚めたティアは若干拗ねてそっぽを向く。

 何とか機嫌を取ろうと、抱えて頭をなでるアリア。

 かつての、ちゃんとした人間体なら起きなかっただろう事故。

 勿論この程度で怪我をしたりするほどやわではない小人ではあるが、乗っかったアリアを跳ねのけるだけの力はないので潰されてから起きるまでの一時間ほどは苦しい思いをしたようだ。


 「人よりも高い位置で寝るか距離を取るか…あとはティア用の、なんかこう小さなベットやら囲われた寝床みたいなのを用意するのもありかなぁ」

 

 ティアの寝床事情を検討しつつ、龍界での朝を迎えたヤマト達。

 食堂での朝は普通のパン食が並び、ご飯を期待してちょっとがっかりするコハクらと朝の時間を過ごした。。



 「――おうおはよう。登山の準備は出来てるか?」


 その後、予定通り迎えに来た龍人バリトー。

 今日の予定は打診された登山。

 ヤマト一行に龍人の族長より促された申し出を受けてのもの。


 「ちなみに何も頂上にという話でもない。目的地は山の中腹。そこにある小さな洞窟の中だ」


 向かうのは山の中腹の洞窟。

 正直言えばワイバーンなどに乗り飛んでいくのが一番早い手。

 しかしそこは洞窟、大柄な龍には入りがたい場所ではあり、それと同時にそこは別の意味でも…むしろそちらこそ本題として、移動に頼れない理由があった。


 「ちなみにそこは龍にとっては忌み地(・・・)とでも言うべき…まぁ近寄りたくない場所でな、乗せてもらってビュンとは行かないから普通に歩いてくれ」


 そもそもそこはワイバーンや龍たちにとって近づきたくない場所。

 仮に送ってほしいとお願いしても断られる。

 ゆえに自力での登山が必要。


 「…龍はともかく、龍人が飛んでいくのはダメなの?」


 だが根本的に龍人は自力で飛べる者が多い。

 何ならティアを何処かにしまって、アリアは飛んで追うかヤマトに還るかすれば後はバリトーがヤマトを抱えて飛ぶだけで登山を大幅にショートカットできる。


 「あーうんまぁ、それもそうなんだが…龍たちほどでもないんだが、龍人の俺たちもあそこはちょっとアレな場所でな。こう…飛べない訳じゃないんだが嫌な感覚(・・・・)が翼に残って後を引くというか…いやまぁどうしても時間を節約したいっていうのなら頑張りはするが…」

 「あ、いえ無理はしないで大丈夫です。どうせ暇なのでゆっくり行きましょう」

 「助かる」


 苦い顔で言い淀みながら説明するバリトー。

 それだけ山の空が、龍人には苦手な理由があるようだ。

 上手く言語化は出来ないが、少なくともマイナスになるのは違いない。

 だからこそ出来るなら自分たちの足で登っていく道を選びたい。

 当然ヤマト達は別に急いでいるわけでもないので登山を選ぶ。



 「そんじゃ行くぞー。きつかったら遠慮なく言えよ?ちゃんと休み挟むから」


 こうしてバリトーの案内で、ヤマト達は山登りに向かった。

 龍界において最も高い山…に連なる山の一つ。

 龍界と人の領域を隔てる高い高い壁ともなる自然の産物。

 航海か山越え、ここにたどり着く為の道筋の二択の一つと向き合う。


 (登山かぁ…学校行事で二回ぐらい登ったことはあるけど、それ以外だと初めてだな)


 そもそも登山の経験値の浅いヤマトだが、道中は案外しっかりと、狭いが安定した道が作られていた。


 「というか…この雰囲気って…」

 「そういうものですよ。自然の山というものは」


 その登山の道中で、感じた既視感を言葉にする前にティアが答える。

 感じたのはあの神様の領域の空気にちょっと似た雰囲気。

 空気は勿論、感覚的にも少しではあるがあの場所を思い出す。

 ティア曰く自然の山というのはそういうものなのだと言う。

 知る者にだけ感じ取れる感覚。

 

 「だからこそ…ここにアレ(・・)があるのでしょう」

 

 そしてティアはどうやらこの先に、今回の目的地に何があるのかを知っているようだ。


 「……だーれも疲れた様子はねぇな」


 そのまま歩み続ける一同。

 結構登って来たのが、誰も疲れを露わにはしない。

 龍人、使い魔、精霊、肩の上に乗って歩いていない小人。 

 山登り程度で音を上げる面々ではない。


 「良いことだが無理はするなよ。この先は道が荒れるし狭くもなる。無理して足を滑らせて落ちても馬鹿らしいからしっかりと安全第一でな」


 そうして登山は後半戦に。

 だんだんと荒くなる道に速度が少し落ち始める一行。

 それでも確実に進み続けて…数時間歩き辿り着いた目的地。

 山の中腹に空いた洞窟の入口。


 「この中だ。少し冷えると思うから服は自由に羽織ってくれ」


 辿り着いた入り口に踏み込む一行。

 龍の巨体では決して入れない洞窟の道。

 歩いて歩いて、数分後、洞窟の中の広間に辿り着く。


 「――ここは…」

 「お墓かしら?」


 その場所、辿り着いたその場は静かで冷たい空気の包む、悲しい雰囲気を纏う場所だった。

 

 「ここは〔龍墓〕とも言うべき墓場(・・)だ。亡くなられた龍の眠る場所だな」




 

 


 

 


 


 

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