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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
龍界決闘/―――
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228 龍人の食事




 「――意外とちゃんとした料理ばかりね。生肉がドンと出てくると思ってた。あむあむ」

 「アリア、流石にそのイメージは失礼じゃ…」

 「気にするなヤマト。似たようなことは俺も何度も聞かれた。大体どこでも龍のイメージで食にこだわりないように思われるんだよ。龍人もな」


 龍人たちの住まう町…いや人口の規模で言えば村と言うべきなのかもしれない。

 そこには龍人たちの住まいは勿論、客人用に一つだけ〔旅館〕のような和に寄ったデザインの建物があり、王女一行はその旅館に招かれる。

 その後、始まったのは夕食の時間。

 ここへ来た理由が理由だけに、歓迎会のような宴こそないものの龍人にとっても力の入ったご馳走が持て成しとして目の前に並べられていた。

 だがそれらは精霊アリアの…いや、この世界の人族には意外なラインナップだったようだ。


 「龍たちはまぁよく言えば何でも食べる、微妙な言い方をすれば雑食。肉は生で問題ないし、大食らいで質よりも量なのが多い。そこらへんは人族の認識と現実は変わらないが…そのせいか俺ら龍人まで似たような印象になってるみたいなんだよな。だから勇者パーティーでも、特にピピとかには『生肉じゃないくていいの?』とか本気で聞かれたからな」

 

 そんな外界での認識に、龍人であるブルガとバリトーは若干呆れるような口調になる。


 「俺、生肉なんて一度も食ったことないぞ?」 

 「俺は子供の頃にあるけど、ブルムンドラが美味そうに食ってるから試しにって。でも美味くは感じなかったな」

 「生でも食べられるのは食べられるのね」

 「まぁ食える。好んでは食わんが」


 それらのイメージの大元は正に龍からのもの。

 龍の強さは肉体強度やパワーだけなく、それこそ消化器官の強さも兼ね揃える。

 生肉を食おうとお腹は壊さないし、多少の毒は毒たりえない。

 ゆえに『何でも食う』龍たち。

 そしてその血を継ぐ龍人たちも『おおよそ何でも食える』種族。

 ただし大事なのは食う(・・)食える(・・・)の違い。

 龍は文字通り何でも食うが、龍人たちは体の機能上で可食範囲は広いものの〔食えるが食わないもの〕も多い。

 生肉も食えるが、しかし率先して食おうとは思わず他種族同様にちゃんと調理を施して食う。


 (でもまぁ…それにしても、これ完全に和食だよなぁ)


 それ自体は特に意外性もなかったヤマトだが、並ぶ料理が旅館の和風な雰囲気にピッタリ過ぎる和食ばかりなのがビックリであった。

 天ぷらなどこちらの世界ではあまり馴染みのない料理が目の前に並ぶ。

 和え物、漬物、汁物、料理をするどころか普通に手の掛かるものまで並んでいる。

 その上で白ご飯も茶碗いっぱいに盛られていた。

 雑食イメージからすればむしろ手が込み過ぎてギャップが凄そうな光景。


 「まぁ、お兄ちゃんの想像通りですよ。パクパク」


 すると過った思考を、言葉に出していないのに先読みしたティア。

 つまりこれらは故郷(・・)から流れてきた文化。

 かつての何処かの時代に、この世界に舞い降りた勇者なり迷い人の影響でこの龍人の住まう地に広まった日本の文化だったようだ。


 (でも着物類は見当たらないし、建築様式と食文化ぐらいか。世界としてはこの辺の侵食はどうなのかと思うけど、個人的には懐かしい味だな。あむあむ)


 カレーライスを始め、時々触れる日本の文化。

 その中でもしっかりがっつりとした龍人の地での邂逅は、ヤマトとしては有難いものではあった。


 「というか…その姿でも食事はするの?」

 「しますよー。これも魔力的な低燃費ゆえ、別の手段で補ってるんです。パクパク」


 なお小人状態のティアもそんな和食料理を堪能していた。

 ヤマトが細かく小さく切った料理を手掴みで口元に運んでいく。


 「ティアちゃん、これも食べる?」

 「こっちはこっちは?」

 「頂きます!パクパク」


 するとそんなティアに、小さく切った自分の料理を差し出してくる女性陣。

 そよ風団のヒスイとタリサは、小動物に餌付けするように小人を愛でている。


 「モグモグモグ…モグモグ…おかわり!」


 その二人の隣でパーティー唯一の男子コハクは食事を大層気に入ったようでおかわりしていた。


 「…ちなみに、なんで叔父さんがいるんだ?」

 「あ?居ちゃ悪いのか?」

 「悪くは無いけど良くも無いんじゃ…」


 そして何故か、王女一行の食事の場にバリトーも加わりブルガーの隣で同じ内容の食事を取っている。

 ここには給仕を担う龍人以外には誰も同席していないのに、バリトーだけは堂々と居座っていた。

 

 「まぁ飯はともかく、正式にお前らの案内役になったから挨拶がてらにな。ガツガツ」

 「挨拶で飯を…ん?叔父さんが案内役?王女様の?」

 「いや、お前ら…ヤマト達の方だ」

 「え?こっちですか?」


 そんなバリトーは自らに任せられた役目を告げる。

 それも主題となる王女一行へのものでなく、ヤマト達…一種の女神組への案内や世話役のようなもの。

 立場上はあくまでも一行のおまけのはずのヤマト達に別途人が付いてそれがバリトーだという。


 「あぁ、族長の指示でな。どうやら見て欲しいもの(・・・・・・・)があるらしく、その案内役兼要望云々あれば聞く役に俺は指名されたらしい。ガツガツ」

 「親父がヤマトに?」 


 龍人の長、つまりブルガーの父親がヤマトたちに見せたいものがある。

 その案内役として交流を持ったバリトーが宛がわれた。


 「というわけで明日か明後日ぐらいに時間が欲しいそうだが」

 「明日で構いませんよ。あ、でもアリアとティアは…」

 「私も行くわよ」

 「ティアもです!」

 「良し。じゃあ後で伝えとくわ。ガツガツ」


 ここへは護衛としてやって来たが、既に龍や龍人の庇護下ゆえそれも最早無用。

 となると船の出向まで、単純に暇な時間になる。

 なのでこの打診を断る理由はない。


 「そんじゃ今日はしっかり食って休め。明日は山登り(・・・)するからな!」

 「山登り?」


 こうして龍の領域に辿り着いたヤマト。

 彼はその翌日に、山登りをする事となったのだった。

 

 

 

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