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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
使い魔人生/始まりと出会い
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22 中級昇格と臨時パーティー


 「――はい。確かに証明サインを確認しました。依頼はこれで達成となります。報酬は現金と口座のどちらに?」

 「全額口座で」


 冒険者ギルドには銀行のように現金を預け、冒険証(カード)で自由に引き出す事が出来る。

 そしてギルド内での買い物に限り、電子マネーのような支払い機能も発揮する。

 真面目に多機能で便利だ。


 「振り込みが完了しました。今回の指名依頼は以上で終了になります。――そして今回の貢献により中級昇格が可能になりました。昇格しますか?」

 「はいお願いします」


 本人の事情次第では昇格を保留にする事も出来るらしいのだが、ヤマトは特に止める理由もないのでそのまま昇格する。

 むしろ中級に昇格する事で得られる、一人前の証明とそれに伴う発言力の向上のほうが重要だ。

 何かトラブルに巻き込まれた時、下級か中級かで言葉の信憑性が大きく変わることは、先日の盗賊引き渡しの際に実感している。

 〔ヤマトが倒した〕という事を兵士に信じて貰うのに時間が掛かった。

 結局盗賊相手に使用した魔法を一式披露して、ようやく信じて貰えた。 

 あまり人前で手の内を晒したくはないので、言葉と階級で信用して貰えるようになりたい。


 「更新が完了しました。冒険証(カード)をお返しします」


 戻って来た冒険証(カード)は、確かに〔中級〕の表記に変わっていた。


 「クエストのシステム自体は変わりませんが、当然ながら受ける事の出来る依頼の量が多くなっています。選ぶときはあまり無理をせずに、身の丈にあったものを選ぶようにしてくださいね」

  

 もちろんそのつもりである。

 あくまで冒険者は副業なので、本業に支障の出るような事は極力避けてく。


 「また、昇格した事で伝信機能の料金に割引が適用されます」


 伝信(メール)料金は階級が上がるたびに割引額が増えていく。

 余所の冒険者よりも比較的利用頻度の多いヤマトにとっては、とてもありがたい。

 タケル相手のメール料金はタケル持ちだが、ナデシコ相手は全額ヤマト持ち、フィル相手は送った側持ちとなっており、相応の金額が発生している。

 なので割引は大歓迎である。


 「そして最後に、登録時の案内にも記載しました通り、中級以上の冒険者には稀に〔強制依頼〕がギルドから発せられる事があります。正当な理由なく拒否した場合はペナルティもありますのでご注意ください」


 先程の昇格保留の一番の理由がこの〔強制依頼〕だ。

 主に上級以上に稀に発せられる指名依頼であるが、極稀に中級にまで降りてくることがある。

 下級の内容や報酬で満足しているものや、あくまでも副業冒険者の者にはコレを嫌い昇格しない者も多いらしい。

 ヤマトはいざとなったら内容次第では罰金や資格停止も辞さないつもりだが、当然来ないに越したことはない。


 「ひとまずのご説明は以上になります。詳細はこちらの紙に、分からない事があればいつでもお答えできますのでこちらへお越しください。――そうでした、こちらもお持ちください。記念品になります」


 そういって紙と共に渡されたのは一本のナイフだった。

 革のナイフケースと持ち手部分にギルドの紋章が刻印されている。

 軽く眺めてみるが…質はまぁ悪くはないみたいだ。

 ただヤマトが持つナイフのほうが幾分か上物のようなので、本当に記念品としてしまっておくことになるだろう。

 もしくは予備だろうか。

 

 「ありがとうございます」


 ヤマトは〔魔法袋〕に記念のナイフをしまう。

 記念品のただのナイフ。

 《鑑定眼》でも特に珍しい要素は見えなかったため、特に気にすることは無かった。


 ……この時のヤマトも女神様も、自分たちの〔眼〕を過信していた。



 

 「――ヤマトさん、昇格おめでとうございます」


 ギルドを出ようとしたヤマトに話しかけてきたのは、助けた冒険者パーティーの三人目。

 コハク、ヒスイと共に出会った少女…魔法使いの【タリサ (人族/下級冒険者)】だった。


 「ありがとう。今日は二人は?」

 「これから合流します。――そうだ!実はこれからパーティーでクエストを受けようと思ってるんですけど、良ければヤマトさんも一緒にどうですか?」


 どうやら臨時パーティーのお誘いのようだ。

 

 「……何を受けるの?」

 「予定では〔ゴブリン〕や〔ウルフ〕辺りでって話をしてたんですが……中級のヤマトさんが一緒に来てくれるなら〔ゴレム〕に挑戦してみるのも良いかなと思って」


 〔ゴレム〕。

 人の扱うゴーレムの発想の大元となった魔物。

 属性により素材は違うが、〔ロックゴレム〕なら土や砂や岩、〔フレイムゴレム〕なら火、〔ウォータゴレム〕なら水と言った具合に、構成要素の変わる魔物だ。

 そしてこのゴレムは、ある状況(・・・・)から発生するため、その目撃情報があるのであれば使い魔案件が発生している可能性が高い。


 『……出来てますね。まだ出来立ての微かな乱れで初期警報も鳴らない程に小さなものですが、数値上は〔魔力溜まり〕の初期の反応が確認できます』


 女神様が言うのであれば確定だろう。

 〔魔力溜まり〕は文字通り、龍脈や地脈と言った世界の血管を血液のように流れる魔力が、何らかの要因で詰まったり溢れたりすることで発生する、魔力濃度が異常に高い場所を指す言葉だ。

 魔力溜まりは濃くなればなるほど、周辺に影響を与える。

 そう言った溢れて溜まった魔力が魔石として結晶化し、同じく魔力を帯び続けた周辺の土や岩なのが反応し、魔石を核としたゴレムが生まれる。

 ある種、魔力溜まりの目印とも言える。

 そしてこの現象の改善のお手伝いも、ヤマトの使い魔としての役目の一つだ。

 

 「とりあえず依頼内容を見てから考えても良い?」

 「勿論です。こっちの紙ですよ」


 結論から言えば、ヤマトはこのゴレム討伐のクエストを受けることになる。

 使い魔として初めての〔通常〕任務。

 中級昇格後の初のクエスト。

 初めてのパーティー戦。


 初めての多いお仕事となる。

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