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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
王都混乱/魔女と聖女
217/276

210 予想された襲撃とお土産




 「――よっと…これで全員縛れたかな?」

 「うん、問題なーし」

 

 縄で縛られる人間の体。

 意識を無くして地に倒れたそれらの人々をしっかりがっしりと物理的に拘束していく。

 そして縛られた人間を更に大枠で一塊に括っていく。


 「こうしてあーして…そして吊るすように…完了!」


 そう宣言したピピによって、出来上がった人の塊。

 襲撃者十名(・・・・・)の拘束。

 ピピが武装解除と見聞をし終えた彼らを順番にヤマトは縛り上げ、再びピピの手で締めとなった。


 ――王都を出て、龍界に向けて出発した王女一行。

 その馬車は王都と次の町とのちゅうど中間程の位置で、集団からの襲撃を受けた。

 予想された突然の襲撃(・・・・・・・・・・)

 とは言え仮にも王女の護衛を任される一団が適当な寄せ集め戦力に、しかも十人ぽっちに負けるわけもなく、完勝し全員を生きたまま拘束した。


 「これアレ(・・)と同じ一件かしら?」

 「同じかは分からないけど、まぁ似たようなものだろうね」


 襲撃のタイミングと馬車の一行の目的を鑑みれば王城での襲撃と似たような案件なのは簡単に推測できる。 

 勿論可能性としては無関係の盗賊ということもあるのだが、それらの判断に関しては上任せ。


 「で…これ本当に全員持って帰るの?ピピ一人で?」


 そしてこの捕縛した一団を、持って帰るのが同行したピピの役目の一つ。

 何事も無ければただちょっと見送りの延長だけして帰ったピピは、予想通りの襲撃により重いお土産を持ち帰り王都に戻ることになる。

 だが…普通に考えて人一人で、十人の成人男性を抱えるのは難しい話。


 「一人じゃないよー」

 「あら?ゴーレムでも持って来た?」

 「もっと頼れる子。すぅー…レードー!!!降りてきてー!!!」

 「グエェ!!!」


 するとその〔運び役〕を呼び出すピピ。

 声の向く先は見上げた空。

 だんだんと姿が大きくなる、降下してくるその舞い降りる存在はグリフォンの【レド】。

 "賢者の使い魔"とも呼べる希少存在が、気配感知の届かない高さの上空から一行を見守ってくれていたようだ。


 「それじゃあ早速…よいしょっと。これ持って」

 「グエ」


 そうして舞い降りたレドにロープを渡すピピ。

 爪足でしっかりと掴んだそのロープの先は、一塊に纏められた襲撃者達。


 「…レドって、このために待ってたの?」

 「うんそー」

 

 勿論緊急時には戦う役目も帯びていただろうが、基本は空の旅で見守りつつ、こういう時には荷物運び。 

 それとピピのお迎えも。


 「というか…レドだとしても、こんな十人も持って帰れるの?」

 「大丈夫。ちゃんと乗るのは数人だけだけど、乗り心地を考えなければこのぐらいは大丈夫なぐらいとっても力持ち!」

 「乗り心地を考えなければ…かぁ…ご愁傷様」


 この後の襲撃者達の雑な(・・)空の旅に気付いてうわ…っとなるヤマト。

 つまるところこの襲撃者達は、吊るされた(・・・・・)状態でロープを命綱に大空の旅を堪能する羽目になるようだ。

 ロープが緩んだり、レドが足を離したりすれば即座に紐無しバンジー。


 「じゃあ私もレドに乗って帰る。よっと」


 そしてお持ち帰りの準備が終わると、レドにまたがり乗っかるピピ。

 見送りの延長はここまで。 

 お土産を手に王都へと空の旅で戻る。


 「みんな気を付けていって来てねー!」

 「グエ!」


 こうして空へと羽ばたき昇っていくグリフォンのレドと共に、ピピは一行から離れていく。

 同時にレドに持ち上げられる襲撃者達の塊。 


 「…え…ぎゃー!?なんだここ!?たけえぇええ!!?」


 なおその上昇途中に、一塊にされた状態の襲撃者の一人が目を覚まし…離れていく地面を見下ろしながらに恐怖を感じて叫び出し始めていたのだが…その声も直ぐに遠くに消え去った。

 出来れば危ないので暴れず大人しくしていて欲しいところだが、あの様子だと難しそうだ。


 「…まぁ起きて直ぐあの高さは怖いわね」

 「だね…」


 そんな襲撃者の叫びにちょっとだけ共感はしつつ、しかし基本は自業自得なので同情皆無で事故だけないように祈って見送ったヤマト達。


 「ピピは行ったか。とりあえず一番馬車の方は問題なしだ」


 そしてそんな仲間を見送り空を見上げつつ、馬車の点検から戻ったブルガー。

 

 「馬の方も落ち着いたらしいから、一番馬車はいつでも行ける」


 今回の襲撃での負傷者はゼロ。

 だが流れ矢が知らぬところで馬車を壊していないとも限らないし、何よりアレが囮で、戦闘の隙に不審物を取り付けられる可能性もあった。

 なので全馬車一斉点検、同時に戦闘に興奮した馬の宥めの時間でもあった今の時。

 

 「一番は問題ありませんか?」

 「あぁ、全く問題なしだ」

 「それは良かった。二番と三番も問題なしなので、すぐに出発としましょう」

 「ああ」


 そこへやって来た近衛騎士により二番と三番の馬車も問題ないと告げられ、これで再び走り出すことが出来る一行。

 今一度周囲を見渡して、順番に馬車に乗り込んでいく。


 「皆様お疲れ様です。拭くものと、あとはお飲み物もご用意しております」

 「お、ありがとう」

 「ありがとうございます」

 

 こうしてヤマトらは再び馬車に乗ると待っていた従者ライラの労うのおもてなし。

 

 「アリア様もいかがですか?」

 「そうね、貰うわ」

 「ではどうぞ」


 ライラは非戦闘員であり、襲撃の際も馬車に隠れ潜んだ。

 だがそれは役割の違いゆえ。

 今この場での彼女のお役目はこうして、戦った者たちを労う事。


 「それでは、出発します」

 「はい、お願いします」


 そして再び馬の手綱を握る御者は、馬を走らせ馬車を動かし出した。

 運ぶ者、守る者、支える者。

 それぞれに役目を持ち果たしながら、馬車は進み目的地である龍界まで王女を運んでいく。






 「――それを取りに、龍界に行けばいいのか?」

 「えぇ、お願いします」

 「まぁ良い腕試しになるか。そのまま死ぬかもしれないが」

 「その時は丁重に弔いますよ」


 そしてその目的地である龍界には、彼らとはまた別の何者かが、違う目的を持って迫りつつあった。 


 

 

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