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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
王都混乱/魔女と聖女
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197 英雄たちの行く末と、王都の不穏


 「――魔王討伐。もうちょっと段階踏むかと思ったけど、メンバー揃ってすぐになの?」


 語り部に、率直な疑問を尋ねる精霊アリア。

 それに対してロンダートは、自身の知る事実を答える。


 「そうですね。物語、歴史として伝えられているのは、この段階で勇者パーティーは、当初の計画を繰り上げて魔王討伐に本格的に動き出したようですね」


 幹部を複数討伐し、揃った勇者パーティーの面々。

 すると当時の賢者が提案したのは、予定を前倒しでの魔王討伐の本格始動。

 元々そのための戦力集めでもあったのは確かだが、もう少しパーティーとして成熟してからのつもりだった。


 「連合戦力の消耗度合い、幹部…そしてその頂点に居る魔王の危険性を加味して、あまり時間を掛けてはいられないと考えたと記されてたと思います」

 

 そして勇者パーティーは、人類連合は本格的に魔王討伐の為に大規模に動き出す。

 王都の守りを任せていた第一騎士団の前線動員も含め、各地から決戦の為の戦力もかき集める。

 その筆頭は、幹部討伐の功績も重ねた勇者パーティー。

 すると…そこへ《神託》が舞い降りる。


 「その決意をした勇者パーティーのもとへ…正確には巫女様のもとに、女神様からの《神託》が舞い降りました」


 神様からのお告げ。

 それに伴い、勇者パーティーの面々が向かったのはとある〔聖域〕。


 「その場にて勇者達は、神様に〔武具〕を授かりました」


 元々は邪神の、神々の不始末から始まった混沌。 

 その最後の悪あがきが生み出した魔王と言う存在。

 本来神々は地上の争いには介入できない訳なのだが、事の根幹が邪神であり、その後始末を現地生命に押し付ける形になった現状。

 そこに神様は何とか介入条件を整え、実現したのが特別な〔武具の譲渡〕。

 神様直々に生み出した〔七つの宝具〕の降臨。

 

 (今の神域宝具か…)


 ヤマト達にはおなじみとなりつつある宝具。

 その生まれ、始まりの時がここ。

 魔王討伐に向けて勇者パーティーが手にした授かりもの。


 魔法が不得手な槍使いには、シンプルに欠点を補う〔魔法の石(爆石)〕を。

 剣を失った勇者には、魔王に特効とも言える力を発揮する〔魔王殺しの為の剣(聖剣)〕を。

 超一流の弓使いにはそれに見合った〔最高の弓(覇弓)〕を。

 決して倒れぬ盾の騎士には、その信念を貫き続けるための〔砕けぬ盾(絶盾)〕を。

 姿を隠し戦う冒険者には、隠したままその才を発揮するための〔全霊の鎧(醒鎧)〕を。

 戦う力を持たぬ癒してたる巫女には、その護衛であり時には武力としても扱える〔意志なき人形達(護隷群)〕を。

 数多の魔法を行使する賢者には、全ての魔法に適した〔最適の杖(神杖)〕を。


 それぞれに合わせて、少しばかり当人の意見も取り入れた最終調整もされた、人の身の技術ではまだほど遠いそれらの宝具がこの時に地上に舞い降りた。


 「その宝具を手にした勇者パーティーは、いよいよ魔王討伐の旅路に赴くのですが…」

 「うんまぁ、お気づきでしょうけど、もうゴールです」


 勇者の物語の朗読会に向き合っていた一行にに、話を聞きながらもひたすら自転車をこぎ続けていたヤマトがその事実を知らせる。

 進行方向に見えて来た王都の外壁。

 移動時間がまもなく終わり、一行は王都に帰還する。


 「ここまでですね。この先も語りだすと長いですし、区切りとしてはまぁまぁちょうど良いでしょう」

 「ここからが本番だったのだけれどね。まぁ残りは気が向いた時に自分で読んでみるわ。お疲れ様。ありがとうね」

 「いえどういたしまして」


 こうして物語の朗読会は、最終章手前で終了となる。

 とは言え結末だけは誰もが知る。

 この先、勇者パーティーは見事に当時の魔王を破り、世界に平和が訪れる。

 だが…その偉業には、決して少なくない犠牲が前提にあり、そして何より勇者パーティーの面々も無傷とは行かず還らぬ者が現れたのだった。


 (そして神域宝具も、戦後のドタバタで半数が、女神様視点でも行方不明にか。元より一度授けたものを回収するつもりはなかったみたいだけど)


 そして神域宝具のその後の行方。

 魔王を仕留めた〔聖剣〕は代々王城にてしっかりと管理され継がれてきた。

 〔覇弓〕は使い手の帰郷後、エルフの里の秘宝としてまつられた。

 〔護隷群〕はどういう経緯があったのか教会に渡り代々の教皇が継いで来た。


 だが他四つは何処へやら。

 長く消息不明の品々。

 しかし…それらは現代になって再び姿を現した。

 〔爆石〕は何故か異世界人である迷い人と共にこの世界へ帰還。

 〔醒鎧〕は一時話題になった義賊のコスチュームとして人知れず人の目に。

 〔神杖〕はとある事件の中心人物が所持していたところを女神の使い魔が回収。


 いまだ行方不明なのは〔絶盾〕のみとなり、しかも判明している六つは現在、全て王都に集結している。

 

 (ほんと、何もないならそれでいいんだけど、もうとっくに色々起きてるからなぁ…)


 不穏の予兆とも見れそうなその事実だが、とっくに不穏なことばかり起きていて感じる今更感。

 後はせめてこれらの宝具が、悪い事に使われないように祈るところ。

 そんなことを密かに祈っていると…目の前の喧騒が視界に入り出す。



 「…あれは?」

 「凄い行列ね」


 一行は適度なところで馬車を降り、自転車を仕舞ってそのまま徒歩で王都の門へと近づいていく。

 すると…近づくほどハッキリと見えるその喧騒。

 門の前に出来た長蛇の列。


 「警戒体制。何かあったかなー?」


 長蛇の列の原因は検問の厳重さ。 

 一人一人しっかりと検査をする為に、普段より捌く速度が落ち、流れの停滞を生んでいる。

 何か問題でもあったのだろうか。

 

 「とりあえず…入場自体を拒んでる訳じゃないみたいだけど」


 とは言えそれはあくまでも検問の強化止まり。

 王都への立ち入りを禁止している訳ではない様子。


 「まぁ、とりあえず並びましょうか」

 「そうですね」


 一行ははあくまでも冒険者パーティー。

 勇者や賢者と共に居る時のような顔パスや優先は利用できず、普通に一般の列に並ぶ。

 一応勇者パーティーのピピも居るが、今はあくまでも冒険者ゆえ本人は特権を使用する気はないし、わざわざ使わせる気もない。


 「――次の者!」

 「こんにちは。何かあったんですか?随分厳重ですけど」


 そして待ちに待ってやって来た順番。

 その際についでにお話も聞いてみる。


 「あぁ。ちょっと騒ぎがあってな。大事にはなってないが念のために警戒をな。最近は何かと王都も不安が多いし、教会の方でも聖女様の就任や教皇様の交代など色々と話題にも欠かさないからな」


 起きた騒ぎ自体はすぐに鎮静化したようだが、そこから何かが誘爆する可能性も考慮して念の為の対応を始めているだけという。

 若干神経質になってると言えばそうかもしれないが、それだけの騒動がここ最近に幾度も起きている以上は仕方ない。


 

 「――特に問題もなく通過できましたね」

 「まぁ何もないですし俺らは」

 「いえ、僕の場合はいつもドキドキしながら…アレがあるので」

 「あぁ…」


 義賊として、若干後ろ暗い事があるロンダートはその手の検査を受ける度に内心静かにドキドキするようだ。

 何にせよ無事王都へと戻って来た一同。

 まず向かうは冒険者ギルド。

 クエストの報告と、報酬の分配が済まされる。


 「さて…では僕はここで。一通り片付いたようなので、明日には王都を出ようかと思います」


 そしていよいよロンダートは、王都を離れて闘技場の町へと戻る。


 「もしバルトルに寄る事があったらまたその時にでも。では失礼します」

 「おつかれー」


 臨時パーティーは解体され、ロンダートは一足先に去って行った。

 残った一同はそのまま、王城への帰路に就いた。

 だがその手前で…



 「――もしかして、騒ぎってここであったのか?」

 「みたいー?」


 王城の手前。

 正確には城門の前に見つけたその痕跡。

 棒だ紙だの散らかり具合を、兵士が片づけるその様。


 「…微かにだけど、血の匂い?誰か怪我した?」


 更に別の痕跡を見つけたピピ。

 とは言えそれらも既に終結済み。


 「とりあえず…戻ってから確認しよう」


   

 

 


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