表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
使い魔人生/始まりと出会い
2/268

1 使い魔人生の始まり



 そしてそれから五十日後。


 「――ここが異世界か。まさか自分がこんな事になるとは思いもしなかったなぁ」


 とある森の中。

 一人の男が、建物もない場所から突然現れた。


 「周囲に人は……いないか。人目を気にしてちゃんと配慮してくれたのかな?スタートが森の中なのは若干難易度高い気もするけど。とにかくまずは確認っと」


 【ヤマト (人族/女神の使い魔)】


 ヤマトの視界にのみ映る情報。

 女神様から渡された《鑑定眼》と言う《魔眼》の特殊能力によって表示された、俺自身に関する情報だ。 

 表示項目は聞かされていた通りシンプルな物だった。

 この世界にはレベルやステータスと言ったゲーム的なシステムは存在しないという話をこの眼で確認した。

 現実なのだからそんなものは存在しないのが当たり前なのだが、この異世界には〔魔法〕が存在するため、前世の常識からはかなりズレている。

 前世の知識に引きずられ過ぎないようにしていきたい。


 「さて、次は……おぉマジだ」


 どこからともなく手鏡を取り出し、自身の容姿を確認する。

 そこには前世と変わらぬヤマトの……いや、前世の死に際よりも幾分か若いヤマトの姿が映し出されていた。

 

 「確かに俺の十六歳頃の見た目だな……やっぱちょっと違和感はあるなぁ。まぁ容姿そのものは自分で見るものでも無いからその内に慣れるか?身体能力は……とりあえず準備通りだな」


 黒髪の日本人らしい平凡な容姿。

 使い魔としてすぐに行動できるように、ゼロからの誕生ではなく、それなりに成長した状態の肉体が女神様によって用意された。

 前世のヤマトは二十歳だったため、体感として四歳程若返った気分だ。

 そしてさらに、肉体改造まで行われている。

 もはや肉体性能的には別人な気もするが、使い魔としての仕事だけでなく荒事・魔物などの危険と隣り合わせなこの世界で生きていくためには前世の感覚で普通の身体能力では、正直話にならないだろう。


 「この首輪は……まぁ人には見えないし気にしないで行こう。――早速遭遇……〔ゴブリン〕か。まぁ森の中で人目を避けたとはいえ、生息域真っただ中なんだから〔魔物〕に遭遇するのは仕方ないか。数は四体でやる気満々敵意もアリ。……いつかは通る橋だ。訓練の成果を確認させてもらおうかな」


 ヤマトは指揮棒のように細く短い()をゴブリンたちに向けて掲げ振るい、四体の魔物にそれぞれ別々の〔魔法〕を放った。


 「……良し。《火弾》《水弾》《風弾》《土弾》全部ヒット。ひとまず魔法も問題なさそうだな」


 ゴブリン四体は全て一撃で倒されていた。 

 この世界には魔法が存在するため、使い魔であるヤマトにもそれらの適性を与えられた。

 属性としては〔聖属性〕を除くほぼ全属性。

 〔勇者〕のように突き抜けた能力ではなく、満遍なく扱える万能型のイメージだ。

 修行としては短い期間だったとはいえ、女神様に適性などの下地は貰っている上での直々の指導ともなれば才能の差はあれど成長自体しないわけがない。

 少なくとも今の年齢の割りには相当に良い腕前にはなっていると思う。

 ただし魔力量は除く。


 (何で魔力量だけは勇者の倍ぐらいあるんだろうか…?そりゃ結果的に魔法使いスタイルを希望したのは俺だけど…あって損があるわけではないけど……本当に損はないよな?)


 人前で魔力を測定する機会があったら騒動が起きそうな気がした。

 出来るだけその手の機会は避けていこう。


 (まだ心配は残るけど……一応〔切り札〕は用意できたわけだし、何かあっても対応は出来るとは思う。あとは臨機応変に対応できるかどうかってところかな。せっかくの異世界新人生なんだからお仕事をこなしつつ人生そのものも楽しみたい。前世のような途中退場は避けたい)


 そう新たな人生に決意をあらわにしていたところに、自然のお客がやってきた。


 「あ、ちょっとまったストップ!まだ魔石取ってないから待って!」


 それは〔スライム〕だった。

 この世界のスライムは、魔物の死骸もエサにしている。

 こうして他の生物が倒した死骸にも群がってくる。


 「放置しても死骸が残らないから衛生面ではありがたい存在だな。増えすぎると困るから間引きはされてるみたいだけど、まぁ今はほっといてもいいな」


 ヤマトは魔石を回収すると、そのまま歩みだす。

 魔石は低品質の物であろうと換金できるので余裕があれば回収しておきたい部位だ。 

 ヤマトはゴブリンからの収穫を〔魔法袋〕に仕舞う。

 そして汚れた手は《浄化》で清め、《次元収納》から取り出した地図を見ながら歩き出す。


 《次元収納》はいわば〔四次元ポケット〕。

 空間魔法の一種で、魔法で生み出された異空間に道具を事実上はほぼ無限に収納できる。

 大きさや開け口など、色々と条件もあるので万能とは言い難い。それでもアイテム版の次元収納であり高価だが売り物として普通に出回っている〔魔法袋〕よりは制限が少なく応用が効くのでかなり便利だ。

 

 その分、習得の難しい希少魔法らしいので面倒事を引き寄せない為にも腰に下げている〔魔法袋〕をメインに使っていくのが良いだろうと女神様にアドバイスされた。

 わざわざそのために女神様に用意して貰ったのだから、今のうちに収納の中の良く使いそうなアイテムは袋に移しておこう。

 ちなみにこれらのアイテムや、今ヤマトが着ている装備類も女神様が用意してくれた。

 初心者サポートは万全だが、女神様の手伝いとなるとこれでも足らないんじゃないかと考えてしまう。

 特に不安になるのは〔神域宝具〕関連の仕事だ。


 (行方不明の伝説の武具の捜索…特別ボーナスが出るらしいが、その分面倒が多そうなのがもう名前からしてなぁ)


 などと色々と考えている内に、森の切れ目が見えてきた。


 「意外と早く出れたな」


 森を出る前に念のため自身の身なりを再確認する。

 顔は前世のまま日本人だが、装備はローブを始め典型的な魔法使い装備で整えている。

 見た目で場から浮きすぎるという事はないだろう。

 ちなみに腰の短剣はほぼ飾りだ。

 最低限は剣の扱い方も学んではいるが、女神様直々に『センスが無い』と言われてしまったので本当に最低限だけ学んだだけである。


 「おぉ、あれが異世界の町……ん?」


 そして森を出ると、少し先にではあるが四方を丈夫な壁に囲まれた町が見えた。

 見えたのだが……


 「なんか燃えてる?」


 目的の町からは、遠くからも見えるほどの煙が上がっていた。

 


 

初日投稿二話目


11/06

文章を一部修正。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ