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183 巫女の妹分




 「――お姉様(・・・)!あちらは何の彫刻なのですか?」

 「あれ?あれは確か――」


 教会での出来事の翌日。

 守護聖女への秘宝の譲渡、その見届けの後に賢者シフルと共に守護聖女の手当てを行ったヤマト。

 結果無事に守護聖女の苦痛の原因は解消され、無事に秘宝は彼女の胸の中で安定した。


 そして今日…件の少女、守護聖女【サラ】の姿は王城の中にあった。


 「…やはり教会と王城ではこれだけ違うものなのですね、お姉様」

 「あの…サラ?そのお姉様って言うのはやめて貰えませんか?何かちょっと恥ずかしいので…」


 教会の守護聖女となったサラだが、今その身は王城の中。

 巫女であるフィルの腕にがっしりと抱き着きつつ、フィルを『お姉様』と呼びながら王城内を散策している。

 そんな彼女にフィルは、呼び方をどうにか出来ないかと打診する。


 「お姉様はお姉様ですよ?今の私は守護聖女、お姉様は聖女様の資格を持つお方なのですし。これはもう姉妹と言っても過言ではありません!!」

 「えっと…」


 サラの言い分を纏めると、フィルは未だ巫女の役目にあり続けているが、いつでも聖女に成れる資格を持つ人物。

 それはつまり聖女と同義もしくは大差のない人物であり、守護聖女という不在の聖女の代役の地位に立つことになったサラからすれば姉妹関係(・・・・)も同然。

 なので彼女からフィルは、姉のような存在だと…だからこそのお姉様呼びであると言う事らしい。


 「そもそもお姉様はもう少し、ご自分の功績を誇ってもよろしいのではないでしょうか?神様をその身に受け止めて今も巫女としてあり続けるその事の大事さを、私達教会の人々の憧れの的であるご自身は、もっと堂々と胸を張って……あ、いえ、もっと堂々としたお姿で、お姉様と呼ばれることもドンと構えて受け止めればよろしいのです。それだけの功績をお持ちなのですから、人からの尊敬はしっかりと――」

 「うん、何かちょっと引っ掛かる部分あったんだけど、『堂々と胸を張って』?の部分がなんで途中で切られたのか、ちょっとお姉様に詳しく説明して貰えない?」

 「あー、いえそれはちょっと……」


 お姉様呼びに困惑しつつも、何だか仲良さげに見える二人。

 本物の姉妹?のようにかは、一人っ子だったヤマト視点ではイマイチ判別できないが、しかし険悪さには程遠いのは確か。

 

 ――そもそも何故、教会の重要人物となった彼女が王城に居るかと言えば、その本筋は昨日のトラブルの経過観察。

 秘宝の取り込みに際して起きた不調和。

 その調律は成功し、今日のサラは健康体そのもの。

 とは言えまだ念の為に様子を見ておきたいと、教会側のお願いで、彼女の身柄を王城側で、勇者パーティーの賢者の庇護下に預かることになった。

 フィルはそのお相手、歳が近く巫女と守護聖女という役割的な近さゆえのお相手役として、今この時を過ごしている。


 「………」

 「………」


 そしてそんな巫女と守護聖女の背後を並んで歩く二人の男女。

 流石に教会の重要人物を一人だけで来させるわけもなく、守護聖女のお世話役として彼女の後ろを歩く一人の女性神官。 

 更にその隣には…賢者シフルから指示を出され、フィル側の付き添いとして後ろに付くヤマト。

 二人の保護者はお役目姉妹の背後で無言に淡々と、二人の姿を見守り続けている。


 (…何か緊張感あるなぁ)


 目の前の仲良さげな二人とは違い、お隣から漂う真面目で真剣なプレッシャーが、お隣を歩くヤマトに少なからず緊張感を与えていた。

 

 「……んん!?」


 そんな付き人さんの横を何も知らずにすれ違うお城の人々が、その瞬間に何かを感じ取り驚き駆け足で去って行くのも幾度か。

 お仕事なので仕方ないと思うが、とりあえずその圧を垂れ流すのはやめて欲しいところである。




 



 「――というわけで、なんだかんだ仲良さそうでした。そして付き人さんは怖かったです」

 「仲が良いのは良い事ね、若干フィルが振り回されている感じはするけど。あと…付き人の方にはもうちょっと自然体で居てほしかったわね。初めての役目と初めての場所なのもあって気を張っていたのだろうけど」


 そしてその夜。

 フィルのお部屋にお泊りすることになったサラ達と別れて、ヤマトはシフルに付き添いの報告をする。


 「あの人、素人って訳ではなかったですよね?」

 「そうね。でも…経験が浅い子ではあると思うわ。守護聖女の側付きの選別の際に、余計な思想や派閥関係などの影響を最小限にした人材、言うなれば政治的に無垢な子を配したって聞いてるから。流石に最低限の実力や能力はあるでしょうけど、堂に行った振る舞いはまだ難しいのでしょう。王城に来るのも初めてでしょうし」


 結果、守護聖女ほどではないせよ大抜擢となった付き人さん。

 あの全く隠さない圧は、仕事に対する緊張もあったのかもしれない。


 「ちなみに…あの子ってお泊りしちゃっていいんですか?教会の秘宝を持ち出したままですけど…」

 「うんまぁ、向こうの掃除(・・)が終わるまではウチで預かる話だから。今日はお泊りして、多分明日の昼までには掃除も終わってるでしょう。それまでフィルは大変かもだけど」


 守護聖女の役目である秘宝…神域宝具。

 教会から持ち出されたような状態のこのお泊りを教会側が安易に許可する訳もなく、そこにはちゃんと理由が存在する。


 勿論そこには彼女の体調観察の意図も当然あるが、それならば逆にシフルなりフィルを教会に招いても良い話。

 賢者や巫女相手でも事が守護聖女、秘宝案件なら協力は取り付けられる。

 ましてや実際の治療・調整を施した当事者なのだからなおの事。

 しかしわざわざ秘宝を外へ、王城側へと預けるのは守護聖女を教会内に残したくない理由。


 「今頃教会内は面倒な人達の排除に大忙し。まぁある意味で望んでた尻尾(・・)でもあるでしょうけど」


 守護聖女の外泊の理由。

 それは体調観察も要因だが、本命は守護聖女の居ぬ間の大掃除。

 

 「あれって、結局人為的なものだったんですか?守護聖女の不調って」

 「ええそうよ。あの治療の際に、同調を阻害する手が仕込まれてたのも確認してるし確実に誰かの思惑の上の事件。取り込みを失敗させる魂胆だったのでしょうね」


 直接治療にあたった賢者シフルの発見したモノ。

 それがズレを生み守護聖女を苦しめた。

 ヤマト達が理解出来ぬまま手足となり手伝ったあの治療は、その仕込みの排除と再度の調整を行っていたようだ。

 

 「個人的な思想か、派閥争いの一環かは外の私には分からないけど、彼女が守護聖女として秘宝を受け継ぐのが不都合だと思う誰かが居たんでしょ。今はその馬鹿の排除に頑張ってる最中だと思うわ」

 「ちなみにその思惑成功して、秘宝の引き継ぎ失敗してたらどうなってました?」

 「守護聖女に失格の烙印押して…まぁ後は自分たちに都合の良い代役を推すか、守護聖女自体を廃止にしてやっぱりフィルを担ぎ上げようとするか…あとどんな手があるかしらね?」

 「何にせよめんどくさいですね」

 「そうねぇ…時にはその面倒が必要な時もあるから否定はしきれなんだけど。でも今は純粋に面倒ね」


 とっとと教会の力を整え直したい時に邪魔が入るのは面倒でしかない。

 今はいつどこで魔王勢力の横やりや侵攻が来るかも分からない。

 その中でわざわざ身内の争いで隙を作るのは悪手にも等しい。


 「まぁでもこの掃除が終われば、新たな教皇と新しい守護聖女のもとで、教会の新体制も動き出す。要職が若返った分だけ体力はあるし、経験不足はその分お年寄りが補佐に回れば良い。これでようやくやれること(・・・・・)も増える」

 「やれることですか?」

 「ええ。まぁそこはおいおいね?」


 何か考えている様子の賢者シフル。

 それには教会の力が強いに越した事はない様子で、内側の邪魔者の排除を喜んでいる。

 

 





 「――おはようフィル…寝不足?」

 「ずっとお話してたので…私は大体聞くだけでしたけど…ふはぁあ」


 そして翌朝。

 朝の支度を終えたフィルと合流するヤマト。

 するといつもは人前では見せない欠伸を見せたフィル。 

 サラとのお泊り、それに伴う女子トークが睡眠時間を削って寝不足気味のようだ。


 「おはよう二人とも。早速だけどついさっき、教会側から守護聖女の帰還命令が出てサラちゃんをお返しする事になったから、私達で届けに行くわよ」

 「あ、は…ふはぁ……すいません///」

 「フィルは残って二度寝した方がいいんじゃないのか?」


 こうして守護聖女の王城お泊りも終え、フィルの賑やかな妹分は自らの役割の場に戻って行った。

 

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