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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
使い魔人生/始まりと出会い
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18 目覚めたヤマトは……完全体?


 「知らないて――」

 「ここは湖畔です。天井なんてありませんよ?」


 ちび女神様に先読みされてしまった。

 目覚めたヤマトの視線の先は星空。

 湖畔の砂の上に寝転んでいた。

 そこにヤマトの顔を覗き込むように、夜空を見上げるヤマトの視界に現れるちび女神様。

 その顔は眠る前と変わらず笑顔で、疲れのような表情は無かった。


 「夜……てっきり朝方まで時間が掛かるものだと思ってました」


 詳しい作業内容は分からないがそこそこ時間が掛かりそうな印象があったので、数時間程度で終わった事に若干拍子抜けだった。


 「あ、やっぱり勘違いしますよね。ヤマト君の今の認識に、およそプラス一日したのが現時刻です」

 「――周回遅れ?」


 ヤマトが眠ってから三十時間近く経過していた。

 そこまで大変な作業だったのだろうか…。


 「作業自体は、時間は掛かりましたが半日程で完了しています。残りの時間は純粋にヤマト君が起きなかっただけです」


 どうやら大体がヤマトの寝坊のせいのようだ。

 そこまで寝不足ではなかったと思うのだが。


 「あ、ヤマト君が寝坊助さんだったという訳ではないと思います。結構深く、そして細部まで調整しましたので、範囲が広かった分で再起動に時間が掛かったという感じでしょうか?ちなみに自認出来る異常はありませんか?」


 上半身を起こし、そのままゆっくりと立ち上がるヤマト。

 その動作も、軽いストレッチにおいても、特に違和感や不快になるような部分は無かった。

 むしろ少し体が軽い印象だ。


 「アクエリアの助力のおかげで徹底的に最適化出来ましたから、肉体と魂のバランスは勿論の事、魔力精製量・魔力効率を始めとしたその他身体能力を含めて全ての能力が多少なりとも向上しているはずです」


 軽く走り、素人シャドーボクシングを披露する。

 その後依代となっているセイブンの代わりに初期杖を持ち、軽く魔法も使ってみる。

 ――確かに説明通りに良くなっているようだ。

 特に魔力・魔法に関しては元々魔力制御の精度も相まって、それこそ一切の無駄もなくイメージ通りに魔法を行使出来そうだ。

 

 「今のヤマト君はさしずめ〔完全体ヤマト君〕と言ったところでしょうか?」

 (前々から思ってたが、女神様のネーミングセンスってよく分からない部分で直球だよな)


 宝具七番でセイブン。

 宝具一番の爆破魔法具でイーバン。

 もう少し捻ってもいいのではないだろうか?  

 わざわざ指摘はしないが。


 「……ところで女神様、何やら体が透けてきてませんか?」


 服が透けるという嬉しハプニングなどではなく、純粋にちび女神様自身が身に着けてるものも含めて段々と透けて、薄くなってきていた。


 「まぁそろそろ現界も限界ですから……あ、待ってください!今のは決して狙ったわけでは――」

 「あーはい。大丈夫ですから落ち着いてください。慌てて動く程に消える速度が若干速くなってる気がするので、話をするならじっとしててください」


 不意に出た親父ギャグ擬きよりもそちらのほうが気になった。

 ちなみに顔を真っ赤にしている女神様は何やら微笑ましかった。


 「ということは精霊女王様の姿が見えないのもそういう理由ですか?」

 「彼女なら疲れて寝ました」


 精霊女王も眠るの……いや、眠っても不思議はないのか。

 生き物である以上は睡眠が必要と言われれば当然と言えば当然だ。

 精霊でもそれは例外ではないと。

  

 「それでは私も帰りますね。と言っても肉体が無くなるだけで、そのまますぐに会話は可能なんですけど」


 現界を解除して、またいつもの脳内通話に戻るだけだ。

 むしろ今のように面と向かって会話をしているほうが特例なのだ。


 「お疲れさまでした。それと、わざわざありがとうございました」

 「使い魔の体調管理も雇い主の義務ですからねー。それではまた後で」


 そしてちび女神様の姿は消えた。

 依代となっていたセイブンの杖が湖岸に転がる。

 ヤマトはその杖を拾い上げた。


 『はい、ただいまです!』

 「お帰りなさい」


 その間僅か数秒。

 ちび女神様が消え、いつもの女神様に戻った。

 

 『分体とはいえ数百年ぶりの肉体でしたが…楽しい反面、やはり少し窮屈な感じはありましたね』

 

 女神様的には、肉体はとても重い鎧を重ね着するようなものらしい。

 鎧の重ね着は現実には厳しいだろうが、何となくイメージは分からなくはない。

 確かにそれだとかなり窮屈だろう。

 そこを『少し』と言うあたりには、やはり規格の違いを感じるが。


 「――それで、後は俺はどうすればいいんですか?聞いた分のここでの用事は全て終わりましたよね?」

 『そうですね。現時点での精霊界での用事は全て済みましたね。ですからアクエリアが目覚め、挨拶が終わりましたら人界に帰りましょう』


 つまりは精霊女王が目覚めるまでは待機と言う事だろうか。

 普通に朝目覚めるとして、まだ数時間先……さて何をしようか。

 ヤマトは寝すぎたくらいなので、眠気は一切ない。

 

 「……目覚めるまでここで魔法の確認や練習とかしてたら迷惑ですかね?」

 『《結界》を張って、その内側でなら問題ないと思いますよ?』


 大丈夫そうなので良かった。

 ヤマトは少し湖から離れ、周囲に迷惑の掛からなそうな場所で《結界》を展開した。

 一応音で起こさないように、防音性能は強めにした。


 『向上した身体性能や魔法の確認をするのでしたら、私が教えますのでそれと一緒に《精霊魔法》の練習もしてしまいましょうか』


 ヤマトが今回得た《精霊王の加護》

 この加護により《精霊魔法》が使えるようになった。

 しかし当然ながら一度も使用したことのない魔法だ。

 確かに出来るうちに《精霊魔法》の練習もしておいた方が良いだろう。


 「そうですね。それではよろしくお願いします」

 『はい、任せてください!』


 眠れぬヤマトの魔法訓練は、少し寝坊した精霊女王が目覚めるまで続いた。


 

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