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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
王都混乱/魔女と聖女
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181 王都教会の地下儀式場



 「――あの三人、まだ何処か悪いんですか?」


 その日のヤマトは所用でお出かけ。

 王城を出る道のりで、見かけたのは例の冒険者三人。

 〔そよ風団〕の一行。

 ロドムダーナでの一件以降、城で保護され治療と後遺症の経過観察を受けているコハク、ヒスイ、タリサ。

 

 「いえ?あの三人はもう万全。傷もなく後遺症もなくリハビリも終わって、先の一件の事情聴取も終えてるからいつでも城を出れる立場よ」


 そんな三人の今の現状に置いて、問題のあるところは何もないと言う賢者シフル。

 

 「じゃあ…城に残してて大丈夫なんですか?現状居候じみてる自分が言うのもなんですけど、お城っていつまでも居座れる場所じゃないと思うんですけど…」

 「そうね。普通は用が済んだらお帰りをってなるわね。お城の方であの三人を引き留める理由はもうないから。でも…実は私が手を回して、彼女らの退城を遅らせてる(・・・・・)のよ」


 冒険者とは言え平民で一般人の三人に、王城側には最早用はない。

 ただ…それでもまだ城の残り続けているのは、賢者シフルの手回しのようだ。


 「言った通り、元々の件であの三人を城に留めおく理由はもうないんだけど、私が指示して『もう少し経過を見てみたい』って三人をここに残してるの。それで名目上は例の傀儡操作の経過観察の延長って事にしてる訳だけど――」

 「メルトさんの為ですか?」

 「その通り。今のメルトは私達よりもあの三人と一緒の方が良さそうな感じだったから適当に理由付けて少し引き留めてるの」


 城に帰還したメルトは、必要な時はともかくとしてそれ以外での勇者一行との接触を避けている節がある。

 そんな彼女の逃げ道(・・・)、もとい気を休める為の居場所として、知り合いであったそよ風団を留めているようだ。


 「とは言えそれもそう長くは続けられない。ヤマトみたいに〔賢者()のお客さん〕扱いは出来ないから、遠くないうちに城を離れることになる。そして…その辺りがメルトの決断時(・・・)になるわね」


 そよ風団は遠くない内に城を出る。

 療養中の名目のメルトは遠くない内に判断を迫られる。

 この先に待つ分岐点。





 「――遅れました」

 「ううん、まだ時間前よ、フィル」


 そんな会話も区切りの良い所で、最後の一人であるフィルも合流した。

 シフル、フィル、ヤマトが揃った一行は、そのまま徒歩で王城を後にする。


 「…アリアさんは来ていないんですか?」

 「精霊の存在はちょっと都合が悪いって話だったから。今頃はラウルさんと殴り合ってるんじゃない?」

 「意味は理解しますけど言い方アレですよね」


 ラウル王子との模擬戦の殴り合い。

 拳を振るい合った精霊アリアは、そこにちょっと思う所があったのか今日もラウルと拳を交えている。

 今回の用事には元々精霊は連れて行けないというシフルの指示もあったのでちょうど良い話ではあったのだが。


 「…とまぁ、言ってるうちに着いたわよ、教会(・・)

 

 そうして会話をしながら歩くこと十数分。

 同じ王都内に存在する目的地である〔教会本部〕へと辿り着いた。

 王女リトラーシャは王族である事や召喚状の存在、警備の都合などで馬車での行き来をした教会への道行きだか、距離的に徒歩で十分な場所である。


 「――お待ちしておりました、巫女様、賢者様」


 すると教会の入り口で待っていた案内役(・・・)

 フィルとシフルは知られた顔、そして今回の必要枠なので神官さんにも喜んで迎えられる。


 「ちなみにそちらの男性は?」

 「私の助手よ」

 「さようでございますか。ではこちらへ」


 ここは教会で、女神崇拝者の組織。

 そこで『女神の使い魔です』と宣言する訳にもいかないので、賢者の助手という体で同行するヤマト。

 実際ここのところは使い魔としては待機状態が続き、鑑定眼の時のように賢者シフルから振られるお仕事をこなすことも多かったので賢者の助手や小間使いのような認識もあながち間違いでもない。


 (……女神様の像、似てるような似てないような)


 こうして初めて立ち入った王都教会。

 今までなるべく避けていたその場の内側。

 割とイメージ通りの聖堂の内装、そして奥にはそびえ立つ礼拝用の女神像。

 その姿は当然女神様に似せているのだろうが…実物の姿を知るヤマトとしては、似ているようで似てないようで似てる気がする何とも言い難い姿の像であった。


 「ヤマト!こっちよ」

 「あ、はい」


 そちらに一瞬目を奪われたヤマトだが、とはいえ一行の目的はそこではない。

 真っ直ぐ像へと向かっていく礼拝の信者とは別の道へ、教会の実務的な領域へと向かう。

 ただ、目的地はまだ下(・・・)

 案内のままに階段を下り、地下の領域に足を踏み入れる。


 (なんというか…こういうのって大体地下だなぁ。いやまぁ守護の話や、龍脈の都合もあるんだろうけど)


 エルフの里の〔世界樹〕や〔聖域〕も地下空間。

 振り返ってみれば王城の結界装置の空間も、知ってみれば地下にあった。

 大事な場所は大概地下空間。

 諸々の利便性や都合もあるのだろうが、正直ヤマトとしてはあまり気が乗らない歩み。


 (王城地下も、里の地下も、あんまりいい思い出がないんだよなぁ)


 ヤマトとしてはそのどちらにもいい思い出が無いどころか戦いの面倒な記憶しかなかった。

 なので少々緊張しつつ、今日は何も起こらぬようにと祈りながら降りた先の道を歩んでいく。


 「……こちらになります」


 そうして辿り着いた大扉。

 案内役が開いて、三人を中へと促す。


 (ここで継承の儀が…)


 そこは教会内の儀式場の一つ。

 中でも特に重要事項に使われる場所。

 そして今日ここで行われるのは継承の儀式(・・・・・)

 

 『女神様の使い魔なら、教会の神域宝具を生で見ておいて損にはならないでしょ?』


 賢者シフルの誘い文句。

 これからここで行われるのは現教皇から"守護聖女"への〔秘宝(神域宝具)〕の譲渡継承式である。

 

 

 

 

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