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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
王都混乱/魔女と聖女
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177 様子見の魔女案件



 一足先に城へと戻って来たアデモス。

 教会側の気付かぬまま、賢者シフルの身の内で事の流れを見ていた彼女。


 アデモスが語った魔女審問の流れはおおよそシフルの示していた予定通り。

 まず初めに根本、王女リトラーシャが本当に魔女資質を持つのかの確認。

 王城にある魔法具と同じものを所有する教会。

 その道具で資質の存在がハッキリした。


 そしてその後は教会内の派閥の争い。

 魔女の処遇に対して、少数派である『もしもが起こる前に処刑』という過激意見と、多数派である『監視を付けて様子見』を主張する派閥同士の問答。

 これが単純な多数決であれば、数の差は歴然で様子見が確定。

 だがその少数派には古参の、要するに教会内で相応の権力を持つ者の指示も混じっているだけに簡単には割り切れない。

 少なからず話し合ったという事実は必要で、多数派も言葉を交えざるえず。

 結果やたらと時間が掛かり、しかしやはり最後は多数派の意見が尊重され、魔女への処遇は想定通りに監視付きの…いわゆる保護観察。

 教会側の人間が一人、王女の傍に付き添うことになった。 


 「――と言う訳で、むしろ勇者が余計な事をすると彼女の立場が悪くなるから大人しくしてなさいって伝言付きね、勇者様?既に手遅れかもだけど?」

 「…大人しくします」

 

 教会の監視役は、当然先の王女帰還に合わせて同行していた。

 勇者タケルはそんな監視役の前で一悶着を起こしたのだ。

 捉え方によっては教会側のリトラーシャに対する印象を悪くしかねない失態であり、更に縮こまるタケルである。

 

 「タケル様、反省は必要ですが、あまり落ち込み過ぎる必要はないかと。幸いにして監視役殿は比較的温厚な方でしたので、今回の一件にも心情的な理解を示してくださいました。ゆえに今回の事で悪い影響が及ぶことはないかと。ただまぁ注意は促されましたが」

 「はい、ほんと大人しくします…」


 監視役との面識を持ったレインハルトの言葉は若干タケルを安堵させつつ、それはそれとしてやらかしを再確認させられ小さいままなタケルであった。


 「……まぁと言う訳で!王女様に関しては監視役付きだけど平穏無事にお帰りなさいしたわ。だからひとまず安心しなさいってお話!」


 こちらは想定通りの結末。

 とは言え、彼女が魔女である以上は今後もその不安は付き纏う。

 ここで終わりでなくまだまだ先はある。

 だがそれでも、難所の一つを越えたのだからひとまずは落ち着ける。

 しかし…今度は魔女案件とは別の問題も現れた。


 「それで、フィルの方は?」

 「巫女ちゃんの方は話の頭だけしか居なかったから詳細までは分からないわ。だけど巫女ちゃんの聖女就任に、たぶん魔女の一件以上に熱が入っているのは確かね」


 断ったはずの巫女フィルの聖女就任の再打診。

 教会に残った賢者シフルと巫女フィルは、そちらのお話を今も続けている。

 だが王女の帰還に伴って戻って来たアデモスにはその本題は届いていない。

 分かるのは今の言葉通り、王女の魔女問題よりも、聖女のお話を大事としている様子の教会の反応。


 「教会に、慌てて聖女を迎えなきゃならない理由があるって話かな?」

 「なのでしょうね。教会内部で何か起きてるのか、もしくはこれから何か起きるのか、何を思っての打診かはご主人様が戻ってことないと分からないだろうけど」

 

 結局巫女と聖女の話は、この場の面子と情報では答えが出ない。

 当事者たちの帰還待ち。

 詳しい話はそれからでないと進まない。


 「……と、そろそろ時間切れね」


 そうして一通りを話し終えたアデモスの姿がぶれる。

 手紙に添えた髪を媒介にした裏技の効果が切れ始めたようで、二人に結ばれた契約が彼女をシフルのもとへと引き戻し始める。


 「じゃ、またあとで~――」


 その言葉を残して、アデモスの姿は完全に消え去った。

 残された一同も解散し、それぞれの場に戻っていく。

 用事の無いヤマトと、反省中のタケルだけを残して。


 (……あれ?タケルのお守り役にされてる?)


 気付けば相方のはずのアリアも姿が無く、本当にタケルと二人きりにされたヤマト。

 つまり落ち込みモードで正直めんどくさい(・・・・・・)タケルを、ヤマトが構わなければならない状況。 


 (……まぁ放っておこう)


 部屋は出ないが、特段何か慰めをする気もないヤマトは、談話室内の本を適当に読みながらただ待つだけにすることにしたのだった。

 






 ――そしてその日の夜。

 再び談話室。


 「全く…我らが勇者様は、本当に何をやってるのかしらね?」

 「ほんとすいません…」


 王城へと戻って来た賢者シフル。

 彼女は予めアデモスから勇者のやらかしを聞かされていたので、再会早々にタケルにツッコミを入れた。

 

 「まぁ反省はしてるようだし、この話はこれ以上は掘り起こさないでいいでしょう。それよりも、今はフィルの事だし」

 「シフルさん、そのフィルはどこに?」 


 この事柄の中心人物である巫女のフィル。

 彼女もひとまず(・・・・)、シフルと共に城に戻ってきているのだが、この談話室にその姿は無い。

 今この部屋の中に居るのは、賢者シルフとその内側で眠るアデモス、ヤマトとアリア、そしてタケルのみ。

 戻って来たはずのフィルはここにはいない。


 「あの子はお疲れなのよ。先に戻ってお休み。まったく…まだ万全じゃないのにこき使わせちゃって申し訳ないわ…」


 フィルは先の《神降ろし》の反動がまだ完全には癒えていない。

 何か特段の支障があるわけではなく、有事にはちゃんと戦闘にも参加は可能だが、もう少し無理はさせたくないのが周囲の認識。

 なのにこの一件で疲れさせているのをシフルは申し訳なく感じているようだ。


 「まぁ、そんな訳なんで、当人無しで話をするわ」

 「えっと、他の人も無しで?」

 「そっちはおいおいね。ちょっと教会側の事情もあるから」


 つまりは勇者パーティーだからと、安易に語れる内容ではない話。


 「早速話に入るけど…教会側が聖女就任を急かすのは、教皇様の寿命(・・)が近い事が発端になってるのよ」

 「教皇様…寿命…」


 "教皇"は、教会に置ける最高権力者。

 そして…教会保有の〔神域宝具〕の、実質的な所有者(マスター)でもある。

 

 「色々端折ってまず相手の目的を言っちゃうと…教会側は秘宝(神域宝具)の権限を"聖女"に継がせようとしてるのよ」

 

 

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