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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
聖域騒乱/世界樹に眠るモノ
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155 新たな王



 「……なるほど、私が留守の間に大きな変化もあったようですね。こちらは」

 「マーモンか。これはまた久々に見る顔だな。いっそもう帰らぬものだと思っていた」


 〔魔王城:玉座の間〕

 王の為の椅子に座る男は、マーモンと呼ぶその存在の帰還を歓迎した。

 玉座の男はかつて魔王の協力者として城で暮らしていた男。

 【暗躍する者】が今は王に代わって玉座に腰かけ、本来の主であった魔王はその横に…腹心(・・)としての立ち振る舞いを見せる。

 その眼には光りなく、感情の無い姿。

 対称となる逆側には、男が元々抱えていた黒髪の女性(戦力)

 二人の人形(・・)が玉座の新たな主の脇を固める。

 【マーモン】と呼ばれた商人(・・)が長く留守にする合間に、この魔王城内の勢力図は完全に書き換わってしまったようだ。

 ――とは言え、マーモンにとっては正直どちらでもよい(・・・・・・・)お話だった。


 「改めてご挨拶を――我が名はマーモン。前魔王様より七罪が五(・・・・)にして"強欲"を授かりし…ただのしがない商人にございます」

 「ただの商人と名乗ったところで大した笑い話にもならんな、人間たちにとっても……して、早速だがお前はどうする(・・・・)?」

 「我が忠誠は貴方様に」

 「よかろう。俺の力となる限りは、これからも好きに遊ぶ(・・)と良い」

 「ありがとうございます。ちなみにですが、貴方様の事はどのようにお呼びすればよろしいでしょうか?」

 「ん?あぁ…呼び名か。ひとまず俺は魔王を名乗るつもりはない。そうだな…適当に【破王】とでも呼んでおけ」

 「刻みました、破王様」


 魔王を押しのけ配下にし、魔王城ごと手に入れた新たな王。

 魔王軍の頂点となった暗躍する者は、自らを【破王】と名乗る事にした。


 「にしても、魔王は人徳がないな。幹部にまでこうも簡単に鞍替えされるとは…あの好いた女(色欲)にも逃げられたようだしな」

 「おや彼女が。それはそれはお可哀想な魔王様で…必要とあれば連れ戻しましょうか?」

 「要らん。あれが魔女(・・)ならばまだしも、所詮は個人的な色恋沙汰、しかも片道のとなれば大した価値もない。ただでさえ奴は七罪最弱、戦力としても代わりは効かせられる範疇だ。アレを追うのは労力が見合わんから放っておけ。まぁお前が個人の趣味で追うならば止めるつもりもないがな」

 「そうですか。では何かの拍子に見つけたならばちょっかいを掛ける程度に留めましょう。ちなみにですが、もう一つ質問をよろしいですか?」

 「言ってみろ」

 「破王様となられる前と比べ、少し口調が変わられましたか?」


 マーモンの問いに、破王は小さな笑い声を発する。

 そしてその問いに答えた。


 「くくく…そうだな。この城をモノにする際に少しばかり別の物が混ざった(・・・・・・・・)ゆえの変化だ。似合わぬか?」

 「似合う似合わないと問われると、些か微妙なところですね」

 「いずれは元に戻るやもしれんが、まぁそれまでは笑いごととしておけ――して、そろそれそやつ(・・・)を紹介しては貰えないか?」


 ここで破王の興味が、マーモンの後ろで控える男に移った。

 その男はマーモンの横に並び跪く。


 「破王様、この者はエルフ族の剣士シラハでございます」

 「エルフか。何故ここへ?」

 「彼の者には適合者(・・・)としての可能性ありと感じました」

 「なるほど、相変わらずに熱心なようだな……あぁそうだ。お前には一つ、その辺りの事で礼を言わねばならなかった」


 そこで何かを思い出したようで、シラハの話題は一度逸れる。

 

 「お前が魔王に送って来た二体の作りモノ(キメラ)の話だ。魔王がこんなで、結局は俺のものになったがな」

 「完成体の《キメラ》でございますね。お気に召されましたでしょうか?」

 「残念ながら一体は壊れた(・・・)。しかしもう一体の方は、まだ少し調整が必要だろうが、ひとまず無事に適合(・・)発現(・・)した。あれは当たり(・・・)だ」


 とある研究所で作られた《合成生物(キメラ)》たち。

 多くの検体の中で四体のみが研究所を出る事が叶った。

 だがその内の失敗作は、エルフの里で最期を迎えた。

 そして完成体の三体の内、一体は勇者に倒された。

 残るはどこぞへ出荷されていた二体のみ。

 その二体ともが、最終的にはこの魔王城へと運ばれていた。

 

 「候補者が見つからぬのなら自ら作ればいい――貴様の目論見は当たり、苦労も無駄にならずに済んだようだな。おかげで"七大罪"の空席(・・)、その一つが埋まりそうだ。色欲のような中途半端なものではなく、きちんとした代物でな」 

 「それはとても良き報せです。正に苦労の甲斐もありました。ちなみに…この者はどうでしょうか?」


 再びシラハに視線が映る。

 商人としてエルフの里に滞在していたマーモン。

 そこで見つけた七罪の適合候補者(シラハ)

 彼はシラハを、最終的には同格の仲間(七大罪)として迎えられる可能性を感じ、エルフの里から連れ出したのだった。


 「……確かに素質はあるだろうが、こればかりは実際にやってみなければ分からない。後程試すとしよう」

 「畏まりました。それで……実はもう一つ大事なご報告があります」

 「ほう、なんだ?」

 「以前に魔王から命じられていた探し物(・・・)。――〔盾〕を見つけてお持ちしたのですが、破王様はこちらをどういたしますか?」



 

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