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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
使い魔人生/始まりと出会い
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15 精霊と契約者



 「(さて宿も確保したし……それじゃあ行きますか)」


 王都の宿〔輝き亭〕でのチェックインを終え、部屋を確保したヤマトはすぐに宿を出る。

 王都に来た一番の理由はもちろんナデシコの件だが、せっかくなので王都でも出来る使い魔のお仕事をこなす事になった。

 ただ今回はお仕事というよりも顔合わせ、使い魔就任のご挨拶と言ったものだ。

 本来はスタドの町から相手のもとへ訪ねる予定だったのだが、この王都にも相手のもとへと繋がる伝手があるらしいので、これからその伝手とやらに会いに行く。

 ヤマトは女神様の道案内で、ある店を目指す。


 『良かった。変わらず残ってますね』

 「(〔薬屋スピル〕……薬屋って書いてますけど、本当にここに〔精霊〕が居るんですか?)」

 『ちゃんと居ますよ。その看板の店名の下に模様のようなものが見えませんか?』


 ヤマトは女神様の指摘する部分を見てみると、何やら印のようなものが見えた。

 それに微かではあるが、印からはハッキリとは判別することのできない、不思議な感覚が感じられた。


 『それは精霊の加護を持つか眷属か契約者か…つまりは精霊の関係者にしか見えず感じ取れない印なのです。まぁ私の使い魔のヤマト君は見えますがそれは例外なので。――人里に出てきた精霊たちに対して〔この店の人間は精霊の関係者です。精霊の皆さんは困ったことがあったら頼ってね〕という証です。無関係の方には例え《看破》などの心眼系や感知系の魔法を使える者であっても見ることも感じることも出来ない印です。精霊にしか記すことは出来ず、記した者に何かあれば消えるものでもありますので、この印があるのなら間違いなく精霊は居ます』


 精霊の印。

 精霊にしか記せない印。

 それなら確かにこの店には、精霊もしくは精霊の関係者がいるのだろう。

 ヤマトはその店に足を踏み入れた。


 「いらっしゃいませ。何をお求めですか?」

 「えーっと、店主の方は居ますか?道案内をお願いしたいのですが」

 「私が店主ですが……」

 

 店主の男性が、品定めするかのような視線でヤマトを見る。

 店の中には回復薬(ポーション)を始めとした、様々な薬が並んでいた。

 個別の調合も受け付けているようなので、いわば薬局だ。

 

 ―――その人は大丈夫だよ。通してあげて。


 声がする。

 実際に音として聞こえているのではなく、感じ取っているというのが正しいのだろうか?

 ヤマトは声ではない声を感じ取った。


 「……こちらへどうぞ」

 「お邪魔します」


 店の展示スペースを越え、奥の部屋へと案内された。


 「どうぞお座りください」


 店主に促されるままにソファに座る。

 それを確認した店主は、ヤマトを部屋に残して出て行ってしまった。

 つまりはこの部屋、そしてヤマトの正面には誰もいないはずなのだが……ヤマトは向かいのソファに存在する見えない何かをハッキリと感じていた。


 「…あの、もういらっしゃるのでしょうか?」


 ――ああ、ごめん!見えるようにするからちょっと待ってて!


 ヤマトの正面の空間が歪む。

 そしてそこには、子供の姿が現れた。


 「――これで見えるよね?」

 「はい見えてます。初めまして、私はヤマトと申します」

 「僕は〔水の精霊〕のウーラ!多分視えてただろうけど、さっきの人間は僕の契約者で薬師兼術師のサイ。よろしくね!」


 【ウーラ(水の精霊/契約精霊:サイ)】

 【サイ(人族/精霊術師:ウーラ)】


 青い肌・青い瞳・青い髪の男の子と、四十後半に見える銀髪の男性。

 ヤマトは無事に、目的の案内人と出会う事が出来たようだ。


 「それで〔女神の眷属〕は何しにここにきたの?」


 ヤマトが何者なのかは言わずとも大筋理解しているようだ。

 目的を問われたので答える。


 「はい。私は女神様に『精霊の女王に会いに行け』と指示されました。その案内をお願いしたいのです。人である私は当然ながら〔精霊界〕に渡る術は持ち合わせていません。ですので精霊の方に〔精霊界〕への道案内をお願いし――」

 「うんいいよ」


 ヤマトは気を引き締めた上でのお願いだったのだが、目の前の水の精霊ウーラは、正に即答で了承してくれた。

 拍子抜けである。


 「元々女王様からは〔近々女神様の眷属が貴方達の誰かのもとを訪れます。その時は私のもとに案内してください〕って指示が来てたからね。一応偽物の可能性も考えてみてはいたけど、その感じ(・・)は本物みたいだし、案内してあげるよ。ただ、少し準備をするから紅茶でも飲んで待っててよ。サイ!しばらくよろしく!」


 そう言うと精霊ウーラは、ヤマトの目の前から消えてしまった。

 それとほぼ同時に、店主のサイさんが部屋に入ってくる。

 

 「こちらをどうぞ」

 「あ、ありがとうございます。頂きます」


 サイさんは紅茶とクッキーを持ってきてくれた。

 案内の準備が整うまでの間、束の間のティータイムとなった。


 (あ、頼みごとをするんだからお土産の一つでも持ってくるべきだったかな?)


   


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