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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
聖域騒乱/世界樹に眠るモノ
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153 世界の有様



 それぞれの世界の状況を大枠で把握できる〔色付きのクリスタル〕。

 クリスタルの染まる色は、そのままその世界に起きている問題の重要度を示すものとなる。

 青色は、問題無く世界が回っている証。

 黄色は、何かしらの問題が起きている証。

 赤色は、その問題が緊急的な事態である事を示す証。

 そして黒色は……世界そのものが既に失われた(・・・・)証であった。


 「世界が……それに、他も――」


 真っ黒なクリスタルを含む、目の前に並ぶ九つのクリスタル(世界)

 色による状況把握がその基準通りならば、殆どの世界で問題が起きている事になる。

 

 九つの内に〔滅びを現す黒色〕を示す世界が二つ(・・)

 これには今回のだけでなく、以前に滅びた世界も含まれる。

 そして〔緊急を示す赤色〕が三つ(・・)、〔問題発生を示す黄色〕が三つ(・・)

 一番望むべく〔無事な青色〕の世界は、九つの内のたったの一つだけである。


 「私が傷つき眠っていた間は、この第四世界も赤く染まっていました」


 女神の復活により状況がちょっとマシになったヤマト達の(第四)世界。

 それでもまだ赤色から黄色に緩和されただけで、平常時の青色にはまだ遠い。


 「それって、他の赤色の世界でも、神様が危険になるような…そんな問題が起きてるって事ですか?」

 「全く同じかは分かりませんが、度合いで言えばそれ程のものになるのでしょうね。これぞれが閉じている為に詳細が把握できないのが難点ですね」

 「これは……よくある事なんですか?」

 「いいえ全然。黄色まではよくある事と言っても良いですが、赤色は…それも複数同時にとなると正真正銘の異常事態。しかも黒は…寝ている間に世界が一つ消えてしまったです。現状は大惨事と言う言葉も生ぬるい事態です」


 病み上がりである事を差し引いたとしても、女神様の顔に現れる疲れや悲しみや焦りの相はこの事態を鑑みれば仕方のない表情だろう。

 ただ…実際の問題はそれだけに留まらない。


 「……あの、この音は?」


 ヤマトの耳に届く、耳鳴りのような高い音。

 その音源は…どうやらすぐ側の〔世界神樹〕にあるようだ。


 「この世界神樹は連なる世界の、この世界群の大黒柱(・・・)としての役割も持っているのですが、その支えるべき世界群が世界の消失などにより大きくバランスを崩している(・・・・・・・・・・)為に、世界神樹自体にも負荷が掛かっているのです。いまの音もその弊害ですね」


 個々の世界に留まらず、この世界神樹にまで影響が出ているのはやはり問題なのだろう。

 連なる世界全てを支える世界神樹。

 世界群の問題がこの世界神樹に影響を与えるように、逆に世界神樹の問題が世界群に影響を及ぼす事もある。 

 今の崩れたバランスを放置し続けるのは、両方に取っても、この世界群全体に悪影響になる。

 

 「そこで…私は少し世界神樹の中で眠ろうと思います」

 「眠る、ですか?この問題の対処の為にですか?」

 「そうです。崩れたバランスは直ぐにでも調整・修正しなければなりませんから」


 女神様が行おうとしている事は、その崩れたバランスの調整と弊害の修正。

 このまま放置し続けるとより多くの問題を引き起こしかねない現状を改善する為に、自ら世界神樹と一体化(・・・)して対応にあたる。

 『眠る』と表現したのは、感情や人格をオフにして(・・・・・)そこに割り当てられている処理能力の分も、全力で対処へあてさせる為のもの。

 感情や人格も自身の機能の一部としてオンオフが可能らしい神様のその感覚は、人間であるカイセには想像しづらい事だろう。


 「……ちなみにそれは、余所の神様には任せられない事なのでしょうか?」

 「残念ながら、現状そもそもが全ての神と音信不通の状態なのです。それぞれの世界の色の問題に対処しているのか、はたまた別の何かがあるのか…いずれにせよ今すぐに動けるのが私だけなのです」


 連絡の取れない他世界の神髪。

 頼れる相手がいない以上、目の前の問題に動けるのはこの場に居る女神様しかいない。

 病み上がりであろうと一切関係ない。

 ここで動かねば、放置される状況は悪くなる一方になる。

 

 「……分かりました。俺はその間にやる事はありますか?」

 「基本的にはご自由に。あの里に留まるのも、王都に戻るのも、それ以外の場所に向かうのもひとまずは自由にしていて構いません。ただ、こちらからの連絡があるまでは〔魔王領域〕にだけは絶対に行かないでください。連絡が取れなくなる可能性がありますから。後は…しいて言えば以前のような〔魔力溜まり〕などの問題を見かけた時には、以前のように対処して貰えると助かります。私不在でもそれを行える権限は与えますので」


 ならば一度王都へと戻るべきだろうか?

 ヤマト個人の認識としては、当面の女神の不在の間に問題がゼロで済むような気がしない。

 これから起こるかも知れない問題に対処しやすい場所取りをするなら、恐らくは王都へ帰還する勇者パーティー出張組や冒険者組に準じてヤマトも王都へ向かうのが良い気がする。

 それに王都であれば、大量消費したポーションの調達も可能だ。 

 加えて黒騎士ゴーレムの製作に結構な散財もしているので、冒険者クエストなどで少しお金を稼いでおきたいのもある。


 「ちなみに、その不在の期間ってどのくらいになりますか?」

 「今後の状況次第ではあるので何とも言えないところはありますが……まぁ順当に行けば現世の時間で一月以内には済むと思います。その間も完全な音信不通では無く、最低限のモニタリングはしてますのでご安心を。何かあればこちらから声を掛けます。……さてヤマト君、これを飲みこんでください」

 「えっと、これは?」


 女神様は一つの玉をヤマトの前に差し出した。 

 ビーダマのような小さな球体だ。


 「まぁお薬みたいなものです。例の《毒》に対する耐性強化の他に、さっき言った単独執行の権限など、必要なものを纏めて練り込んだ丸薬です」

 「……苦い」

 「それも含めてお薬みたいなものです」


 丸薬を飲んだヤマト。

 その苦みに少し顔をしかめるも、きちんと飲んで取り込んだ。

 これで必要な処置の他、女神様を蝕んだ《毒》に対する守りも厚くなるようだ。


 「さて、これで準備は整いましたかね。私もそろそろ眠りましょう」

 「なら俺は向こうに戻ります」

 「はい、一段落したらまた会いましょう。フィルやナデシコさんにもお礼を伝えておいてください」

 「はい。二人が目覚めたら(・・・・・・・・)、儀式の結果についても含めて伝えおきます」


 その別れ間際のヤマトの言葉に、女神ユースティリアは違和感を覚えた。

 違和感の答えを得る為に、ヤマトにその疑問の答えを確認する。


 「目覚めたら…ですか?疲労が…いえもしかして、二人に何かあったのですか?」

 「え?いえだって、眠ったまま聖域から出て来たので……」

 「眠ったまま?――ちょっと失礼」

 

 ヤマトには見えない何かを操作する素振りを見せる女神様。

 徐々に女神の血相が変わっていく。


 「緊急処理、ショートカット、安全保護。これは――」


 そしてその事実に女神様は気が付いた。


 「……聖域が、停止してる?」



 

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