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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
聖域騒乱/世界樹に眠るモノ
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152 世界神樹



 「――ここは」


 聖域の扉に再び触れたヤマト。

 すると視界が一転し、気が付けば別の空間に存在して居た。

 順当に考えればここが聖域の中と言うことになるのだろうが、ヤマトはこの空間に別の覚えがあった。


 「神様の領域?」


 そこは初めて女神ユースティリアと対面した場所。

 つまりヤマトの魂が使い魔としての鍛錬を行った、使い魔ヤマトの始まりの空間。

 現世ではない、神様達の世界の側。

 白昼夢のような邂逅に使われた精神空間のもとになった、本物の領域だ。


 「透けてるなぁ」


 その空間に立つヤマトの体は、半透明で向こう側が透けていた。

 肉体の壁を感じない、少し懐かしい感覚。

 恐らくここに在るのは魂だけで、肉体は現世に置き去りにして来たのだろう。


 「向こうはアリア達が居るから大丈夫かな。それより……」


 ヤマトには一つ気になる事がある。


 「聖域飛ばしてこっちに直接来ちゃったのか?」

 

 この領域に来るにしても、手順で言えば聖域を経由してこちらにやって来るのが、多分本来の正しい順路のはずだ。

 だが何故か今は聖域を経由せずに、直接こちらに来てしまっている。

 そもそも使い魔とは言え、ここは望んだ所で気軽に来れる場所では無い。

 手順以前にまずは神様の許可が必要になり……


 「……女神様?」


 辺りを見渡す。

 しかしそこに女神の姿はない。

 ここにはヤマト以外、誰の姿も存在しなかった。

 

 「まさか失敗した?いやでもフィルは」


 女神を救うための、〔四つの鍵〕を用いた儀式。

 その中で最もリスクの高い役割を担った"巫女"のフィル。

 《神降ろし》にてその身に神様を受け止める巫女は、もしも神様に何かが起きれば真っ先に悪い影響を受ける立ち位置だ。

 そのフィルが無事に帰って来た以上、少なくとも儀式そのものは成功したはずなのだ。

 しかし肝心の女神様がここには見当たらず、実際のところの確証が取れない。


 「折角こっちに居るんだし、安否確認だけでも……あれは」


 その時、唐突に見つけたのは一つの扉。

 先程までは存在しなかったはずのものが出現している。


 「呼ばれてる?……ならまぁ行こうか。女神様がこの先に居ますように願いつつ…さて」


 ヤマトは扉を開いた。

 そして向こう側の空間に足を踏み入れた。




 「――大きな樹だな」


 扉の向こうに踏み込んだヤマト。

 その目に映るのは、見た事が無いほどに巨大な大樹。

 

 「もしかして…これも世界樹なのか?」


 目の前の大樹から感じる力。

 それはエルフの里で感じた世界樹の力の波動に似ている。

 ただし目の前の大樹から感じるそれは、里の世界樹の何倍も強くて濃い(・・・・・)


 「――それ以上は近づかない方が良いですよ。人の魂では〔世界神樹〕の放つ神気(・・)は、あまり良いものではないでしょうから」


 聞き覚えのある声が聞こえ、ヤマトはその方向を振り返る。

 

 「女神様?」

 「この姿ではお久しぶりになりますかね。ヤマト君」


 そこに居たのは、ヤマトが探す【女神ユースティリア】その人であった。

 だがその雰囲気は…若干弱弱しく感じる。


 「あの、大丈夫なんですか?」

 「ええまぁ大丈夫かどうかと聞かれたらちゃんと大丈夫ですよ。病み上がり(・・・・・)なので些か弱っては居ますけど、ここの神気を浴び続けていればその内それも良くなりますから」

 「なるほど、療養の為にここに居るんですね。無事に成功したようで良かったです」

 「そうですね、療養()ここに居る理由の一つですし、儀式()ちゃんと成功しました」


 些か含みのある言い方。

 ヤマトの一抹の不安が過る。


 「何か…あったんですか」

 「はい。とても大きな出来事が私の眠る間に……これを見てください」


 ユースティリアは右手を軽く振ると、二人の目の前に〔九つのクリスタル〕が出現し浮遊する。

 それぞれに青色であったり黄色であったり赤色であったり真っ黒であったりするクリスタル。

 そこに一から九の数字が浮かび上がる。

 

 「これはそれぞれに今の世界の状況(・・・・・・・)を示しています。――ヤマト君には初めて伝えますが、数多ある世界は九つを一つの纏まり(・・・・・・・・・)として、一つの〔世界群〕として括られます。このクリスタルは私達が属する〔第五十一世界群〕に内包される九つの世界を簡易的に示しています」


 〔第五十一世界群〕。

 それがヤマト達の生きる世界の属する世界群の呼称。

 その中で女神ユースティリアは自らを〔第四世界〕を担当する神様だと言う。


 「私達の世界がこの〔第四世界〕。ナデシコさん達の故郷でもある日本が存在するのはこっちの〔第五世界〕。勇者召喚や情報交換など、世界同士で直接やりとりが出来るのは同一の世界群に属する世界同士のみなので、いわゆる異世界絡みのアレコレはこの九つの世界のいずれかとの関わりになります。ちなみに先の転移事件の被害者の行き先も、全てのこの世界群の中の世界です」


 ヤマトが転生したのは、黄色いクリスタルの〔第四世界〕。

 前世の日本を内包する、青色のクリスタルの〔第五世界〕。

 魂のやり取りや転生も、勇者召喚も、転移事件も、いずれの世界間移動も、全てのこの世界群の内側同士だからこそ成立する事象であると言う。


 「そしてこれが…〔第九世界〕。以前に黒い神域宝具についてお話した際に『滅びた世界の存在』についても少し触れました。覚えてますか?これがその世界です」


 ロドムダーナで遭遇した■■■という謎の存在。

 そして〔黒い神域宝具〕。

 宝具の正体をティアは『滅びた世界の神域宝具』だと断言した。

 その滅びた世界が、女神様の示すこの真っ黒な(・・・・)クリスタルの〔第九世界〕であるそうだ。


 「……今の世界の状況。質問なんですけど、もしかしてクリスタルの()がそれを現してるんですか?」

 「その通りです。あくまでこれは簡易的なものなので、それぞれに自治権と不干渉の権利を持つ個々の世界の細かい情勢についてまでは私も把握できていません。ですがこのクリスタルを見るだけで、それぞれの世界にどの程度の問題が発生しているかどうかの判別は出来ます」

 「それで第九世界…九番のクリスタルが既に滅びた世界で、だからこその黒色(・・)なら…この三番の黒いクリスタル(・・・・・・・)はもしかして」


 ヤマトはもう一つの黒いクリスタルを指して尋ねる。

 女神の答えは、悪い事にヤマトの想像通りの答えとなった。


 「お察しの通り、この黒が示すのは最悪の証。黒く染まったクリスタルは『第三世界が既に滅んだ(・・・)』と言う現実の報せに他ならないのです」 

 


 


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