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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
聖域騒乱/世界樹に眠るモノ
156/276

150 去りし後にも残る傷


 (――あぁそうか。またいつものパターンか)


 意識を取り戻したヤマト。

 先のエルフの里の地下空洞での戦い。

 些か強引な手ではあったが、敵から精霊のシロを取り戻したヤマトとアリア。

 その直後…ロンダート達の戦いの結末を目にした直後にヤマトは気を失った。

 そして気付けばいつものように、目覚めればベットの上であった。


 「お、起きたか?」


 そんなヤマトに声を掛けて来たのは隣のベットの男。

 ヤマトも知る相手であった。


 「……アイドムさんでしたよね?」


 隣のベットの主は、ロンダートと共に居た冒険者の一人のアイドムであった。


 「おう、冒険者のアイドムだ。そっちはヤマトで良かったか?」

 「はいそうです。それで…ここはびょう…治癒院ですか?」

 「そうだ。エルフの里の治癒院。ちなみにお前さんが運ばれてきたのは昨日。ギリギリ丸一日経ってないってぐらいの所か」


 ちょっと寝過ぎな程度の眠り。

 ただそれでもまだ少々気怠さは残り、魔力も万全とは言えなさそうだ。

 今回はそこまで大きな怪我は無かったはずだが、使い魔の体の回復力でも戻り切らない程に酷使していたと言う事だろう。


 「……アイドムさん、その怪我は?」

 「あぁ、こいつはちょっとあの炎(・・・)でな。あそこに居たならあの馬鹿みたいな炎も見てただろ?ちっと避け損ねちまった」


 右腕が包帯に巻かれたアイドム。

 話を聞くとどうやら、あの謎のハイエルフの放った《地獄炎(インフェルノ)》を掠らせてしまったようだ。

 受けた直後にすぐさま盾役のシトラスが文字通り盾となり割り込んだ事と、腕が魔力を纏っていた事、その上で迅速にピピの持っていた〔スピル印のポーション〕で応急処置をした事もあり大事には至らなかったようだが流石にすぐには動かせる訳も無く、拳が武器の拳闘士が腕を負傷したとあっては正直話にならず、その後に負傷したシトラスと共にピピに連れられ地上に帰還。

 その後すぐに地下へ戻ったピピと違い、二人はそのまま戦線離脱せざるえなかったそうだ。


 「そんな訳で、汚名返上と意気込んだ割にはシトラスと違って俺は結局大した役には立てなかったよ。本当に焼きが回ったもんだ」

 「そのシトラスさんは今は?負傷とはどのくらいの――」

 「あぁ、あいつの怪我はちょっとばかし…な。生きてはいるがちと難しいところだ」


 盾役のシトラス。

 パーティー内での盾を持つ者の役目は基本的に、誰よりも前で相手の攻撃を防ぐ、仲間を守るための盾となる事。

 その役目の通り、敵が放った獄炎に対しても仲間の盾となったシトラス。

 剣と魔法の世界。

 当然ながら盾持ちが防ぐものには、物理攻撃以外にも魔法攻撃も含まれる。

 盾持ちの冒険者として上級に至ったシトラスも当然、自慢の盾と培った経験・技術で上級魔法程度(・・)はしかと受け止める。

 ――だがあの獄炎は〔超級魔法〕。

 しかもまともに抑えるつもりもなくただ純粋に力任せに放たれた炎。 

 シトラスはその馬鹿げた炎を、ただ一人で受け止めた。

 そして守るべき仲間を守り切った。


 「結果としては俺とロンダートとピピ、守られた側はキッチリ守られた。だが……」


 守った当人は凌ぎきる最後の間際に盾を失い、消えかけほんの一瞬ではあったがその身は獄炎に晒された。

 アイドムの腕とは違い、シトラスの場合は全身がだ。

 こちらも〔スピル印のポーション〕で応急処置にはなったもののアイドムと違い一秒を争う危険な状態に陥ったシトラスを、ピピとアイドムは地上に連れ帰った。

 その後、エルフの治癒師の治療の甲斐もあり、未だ面会謝絶の状態ではあるが最悪だけは回避したようだ。

 正直、どう声を掛けていいか迷うヤマトに、アイドムから声をかける。


 「暗い顔をする必要はねぇさ。心配してくれるのは有り難いが、言った通り最悪は脱してる。冒険者である以上、依頼で死にかける事なんざ何時何処で起きてもおかしくない。今までにも危ない時はあったし、今回がそれだっただけで、それでもちゃんと生きて戻って来たんだから悲しむ事なんざ何もない。むしろ無事で良かったなって喜び笑う所だここは」

 「そうですか…そうですね。無事で良かったです」

 「……いやまぁただ、偉そうに言っといてなんだが、今回の依頼をちゃんと達成出来たのかってのはまた別の話になりそうだがな?途中で戦線離脱しちまったし、まぁあの巫女様なら無碍にはしないだろうが……」

 「そうだ!他の皆はどうしてますか?」

 「あぁ、その話もあったな。えっと確か……」


 その流れでアイドムから伝えられた、他の面々の動向現状。


 ロンダートはエルフの守備隊の手伝いで里の防衛警戒に当たっている。

 《聖域結界》が消えた事で、この里は今魔物の侵攻襲撃に対して最大の盾を失った状態にある。

 その為、新たな《簡易結界》が展開されるまでは守備隊総動員で魔物警戒にあたるべき状況らしいのだが……その守備隊にも問題が起きており、単純な話が戦力が足りていないのだと言う。

 ロンダートはその穴埋め、手伝いとして出向いているそうだ。


 ピピは今も地下に居る。

 眠るヤマトをここに運び地上へと戻ったロンダートと違い、合流したピピはアリアと共に地下に残った。

 そして今もアリアとピピは、聖域組を待って氷壁を守っているらしい。

 その聖域組は未だに帰らず。

 儀式は長くとも半日程度と聞いていた為、既に一日近くが経っている今は予定外の状況にある。


 「で、ロンダートと一緒だった雷様(・・)は、子供の精霊連れてどっか行っちまったな。里を出る訳では無かったらしいが」


 雷の上位精霊ルト。

 あの獄炎の直後に冒険者組に出会い、ロンダートの鎧の力を見抜いた為か地上に上がったピピら三人とは別行動で、ロンダートと即席コンビでヤマト達の前に現れた。

 そして対峙した敵にトドメを刺し、ロンダートと共にヤマトをこの場所に運んだ後はアリアから預かったシロと三体の子供精霊を抱えて何処かに向かったのだと言う。

 アリアが預けたのなら問題は無いだろうが、何処に行ったのかは少し気になるところだ。


 「(――ヤマト)」


 そんな話を聞いている最中、契約の繋がりを通してアリアからの声が届いた。


 「(起きてるのは把握してるけど、もう動ける?聖域の様子がおかしいの。動けるのならちょっとこっちに来てもらえない?)」




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