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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
聖域騒乱/世界樹に眠るモノ
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144 燃える世界樹


 

 「――《暴風》!!」

 

 人型スライムとは異なる明後日の方向に魔法を放つヤマト。

 ただしあくまでも攻撃としてではない。

 魔法の標的はゴーレム。

 敵の《青騎士》に組み込まれ、今は破損し動けない残骸と共にある精霊達を、残骸ごと吹き飛ばし湖に放り出し落とした。

 その後に、彼らの居た場所が()に飲まれた。


 「……あれは、獄炎(・・)か」


 ヤマトには見慣れた魔法の炎。

 突如出現した強大な獄炎が、湖の小島を、その中央にそびえる世界樹を、全て諸共に飲み込んだ。

 そして炎は広がりそのまま湖を越えこちらにも届くかとも警戒したが、炎は湖面にまでは進攻せずに陸地との境でピタリと広がらなくなったので、恐らくは水中に落とされた精霊達が炎に飲みこまれる事は無いはずだ。

 あの、嫌な感じの湖の水に精霊達を任せるのは不安が残るが、各部が破損しているとは言え厳重梱包されていた核の部分であれば、何があっても多少は大丈夫だとは思う。

 なるべく早く引き上げるに越したことはないだろうが。


 「メルトさんは!?」

 「……大丈夫、上がって来た」


 残骸と同じく、炎に飲み込まれた小島に居て敵の射撃支援を行っていたメルトは、迫った炎に素早く反応し、そのまま湖に飛び込んだ。

 そしてたった今、対岸であるこちら側の陸地に上がって来た。

 伏せたまま立ち上がらないメルトだが、動きが見える事からどうやら無事ではあったようだ。


 「全く…はしゃぎ過ぎだろ。まぁ俺自身(・・・)の事だから気持ちは痛いほど分かるんだが」


 今なお世界樹を焼き続ける獄炎に、ヤマト達とは別の言葉を人型スライムは漏らす。


 「……あれも貴方達のしわざ?」

 「達って言うか、まぁ俺だな。一番欲しかったものをようやく手に入れて、そしてガキみたいにはしゃいでる。確かにやり過ぎ感はあるが、念願叶った瞬間なんだ。ちょっとのおイタ(・・・)は大目に見てくれ」

 「何を言ってるん……でしょうね!!」

 「おっと危ない。まぁそっちにしたら溜まったもんじゃないのは理解してるさ。何せ弱った世界樹には、あの炎は文字通りのトドメだからな」


 人型スライムの言葉。

 一同の視線の先で燃え盛る炎は、今なお世界樹そのものを取り込み焼いてゆく。


 「直前にキッチリ弱らし(枯らし)ちまったからな。あれじゃもう駄目だろうさ」

 「……世界樹が死ぬ?」 

 「……そうね。あの樹はもう保たないわ」


 エルフの里の象徴の一つ。

 世界に二本しかない内の一本。

 揺らめく炎の中で、その樹が黒く、そして崩れて行くのが見える。


 「まぁ、それに関してはお前らにも朗報じゃないか?あの結界(・・)はお前らも邪魔だと思っていただろ?」


 その言葉でヤマトも気が付く。

 エルフの里を覆っていた《聖域結界》。

 そこからの妨害が完全に消え去っている事に。


 「里ごと聖域を守る結界。後付けだろうが、あの樹もその結界を支えるものとして重要な位置づけで組み込まれていた。補助やら強化やら……何にせよ、結界を維持する仕組みの一部が焼失したことで結界そのものが崩壊したという訳だ」

 「もしかして、結界を壊すために燃やしたのかしら?」

 「結界をどうにかしようとしてたのは確かだが、あんなふうに世界樹を燃やすつもりは無かったはずだ。管理装置にちょっかいを掛けるなり、言ってしまえばさっきの枯れた状態(・・・・・)でもやれる事は色々あった。だけどまぁ…あの炎は少々遊びは過ぎてる気がするけど、結果として手間が省けて良かったと言うところだな」


 予定外だが結果オーライ。

 そう言って世界樹が燃えるのを許容する人型スライム。

 エルフ達には大事な世界樹の存在も、こいつらにとってはその程度のものなのだろう。

 

 「さてと……俺の役目もここまでだ」

 「役目…あれがアンタの目的だったの?」

 「アレと言うより、あの炎の中心にあるものが目的だったんだよ。おかげさまで無事に生まれた(・・・・)。これで俺も用済みだ」


 その時、人型スライムの頭部がどろりと、少しずつ少しずつ輪郭が溶け始めた。


 「元々、お前らの相手をするのに必要以上に割り当て分を消費してたからな。もう少し遅ければこの体の崩壊が先だったな」

 「お前は……一体何だったんだ?」

 「ただの失敗作の欠片だ。過保護にアレコレ仕込まれた本体と違って、節約しても一日も維持できない、必要に応じて分裂して生み出されるただの使い捨ての消耗品。まぁ普段よりも込められた力は多かったが結局は有限だ。使い捨ては、それはそれで使い勝手の良い道具だったけどな。……まぁそんな訳で、俺の事なんか気にするより、ようやく生まれた理想の俺(あいつ)を気にした方がいいと思うぞ?本当に理想通りに仕上がったなら、アレは相当厄介な存在になるはずだからな、お前らにとって」


 そう自信満々に、そして誇らしげに笑顔で語る人型スライム。

 その間も体の崩壊は止まらない。


 「ちなみに……まぁ一つ朗報だ。あの女(・・・)はここで解放されるぞ。既に限界みたいだけどな」


 人型スライムが示したのは、先程と同じ体勢で留まっているメルト。

 操られたメルトが解放されると宣言した。


 「解放、本当に?」

 「持ち運びの楽な道具と違って、人間を連れ回すのは手間が掛かる。俺同様に、元々現地で使い捨てが基本だからな」

 「……そもそも、彼女を操っていたのはお前なのか?それとも別の……」

 「俺は指示出しの権限があるだけで、あの女(人形)は全部〔主〕のものだ」

 「主……それは――」

 「主はただの商人(・・)だよ。それ以上は自分で調べろ。――最近は色々ちょっかいを掛けてたみたいだからな。存外情報は簡単に集まるんじゃないか?それが核心を突くかは知らんが」


 ぺらぺらと色々語るスライムだが、その肝心な部分は伏せた。

 逆に言えば語った部分はどれも大事には至らない、知られても困らない些事と言う事なのかもしれない。

 ――ただの商人。

 人型スライムの主と言うだけで、もはやただの(・・・)は過小評価な気もする。


 「さて…それじゃあ俺はここらで退場だ。新しい俺(・・・・)によろしく言っておいてくれ」


 そんな最後の言葉を残して人型スライムは消え去った。

 ドロドロになった粘液も蒸発し、正に跡形もなかった。


 「……一段落って言っていいのかしらね、これは?」

 「まぁアイツが目的を達成したなら、こっちはバッチリ敗北での締め方ではあるけど、一応この場は一段落着いたんだろうさ。まぁ休む暇はなさそうだけど」

 「そうね。あの炎も気になるけど……まずは彼女たちの保護を――」


 邪魔だった人型スライムは消えた。

 これでようやくメルトや精霊の保護を行えると思った矢先。

 二人の視線の先、地に膝を付いたままのメルトのすぐ側に、一人の女性(・・・・・)が立ってるのを確認出来た。

 そしてその女性の手には、メルトが握っていたはずの〔弓の神域宝具〕が握られていた。

 すると女性は弓を構え、その先をこちらへと――


 「アリア!すぐに守りを――」


 咄嗟の判断で守りの魔法を展開するヤマトとアリア。

 その直後、弓矢は放たれた。

 そしてその矢は二人の展開した二重の防御を全て貫き、そのまま矢は二人の背後の、聖域へと続く道を塞ぐ氷塊へと着弾したのであった。


 

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