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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
聖域騒乱/世界樹に眠るモノ
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135 案内人との再会



 「――よう、案内人(・・・)。てっきり最後まで出て来ないもんだと思ってたんだがな」

 「こっちもそのつもりだったんですがね……アンタらがもう少しゆっくりしててくれればその必要も無かったんだ。雑魚が相手とはいえ倒すの早過ぎなんだよお前ら」


 ヤマト達が《青騎士》と遭遇していたその頃、冒険者組の四人の前には〔エルフの案内人〕として振る舞っていた男が現れた。

 先の借り(・・・・)、不意打ちとは言え一撃でのされて仕事を果たせなかったアイドムは、盾役のシトラスよりも前に出て因縁の男と言葉を交わす。


 「はぁ……分かっちゃいたけど、この程度の獣と死体程度じゃほんのちょっとの時間稼ぎにしかならないか。まぁなっただけマシと考えるべきなのか?」

 「俺らの案内してた時のビシっとした感じが無いな。それがお前の素なのか?」

 「あんなん四六時中やってたら疲れるだろ。ああいうのは必要に応じて仕方なくだよ」

 「そうかい。だが…いいのか?こんなにあっさり姿を現して。得意の不意打ち(・・・・)も仕掛けずによ?」


 メルトとシロが攫われたあの時。

 アイドムとシトラスは目の前の男に見事に不意打ちを食らい行動不能に陥った。

 二人にとっては自分達の衰えと不甲斐なさを実感させる苦い記憶。

 ゆえに二度目はないとこの場でも警戒し続けていた。


 「あんなの最初で最後の一度切りの手に決まってるだろ。ばっちり警戒されてる今の状況で二度目の、しかも完全装備の相手に決められる訳がない。それが決まるような雑魚が相手ならそもそも一度目で仕損じる事も無かった。アレはあの場のあの時限りのモノ……むしろ何で生きてんだ?と文句を言いたいくらいなんだけど、こっちとしては」


 男の不意打ちの一撃、それは確かに狙い通り(・・・・)に決められていたなら、アイドムとシトラスの命は既に失われていた事であろう。

 だが実戦は理想通りには行かない。

 アイドムとシトラスは重傷こそ負ったものの、本当にギリギリのところで致命傷を回避する事が出来た。

 長年の染み付いた反応動作ゆえの無意識行動であろうが、とは言えそれでも一撃で倒されてしまったのは事実。

 重傷の体は放って置けばそのまま死に近づく一方であった。

 だが、そんな二人を救ってくれたのはナデシコだった。 

 シロを庇う事すら許されぬままに即座に奪われたナデシコは、それゆえに無害な弱者として判断され、手を掛けられずに放置された。

 それがアイトムとシトラスを救う鍵となった。

 男がメルトとシロを攫い去った後、シロを奪われたナデシコは決して冷静だったと言えない状況だったが、それでも正しいと言える行動を取る事が出来た。

 重傷の二人に対して覚えたての《治癒魔法》を、持ちうる魔力の限界まで、それこそ魔力枯渇に陥るまで使用し続けた。

 魔法初級者の未熟な治癒魔法だったが、それでも持てる全力の魔法は最低限度の応急処置として働き、フィル達が駆けつけるまでの時間を稼ぐことが出来た。

 とは言え、それを敵に伝える理由も無い。


 「そんなの、お前さんが仕留めそこなっただけの話だろう?おかげさまでこの通りだ」

 「……そうみたいだ。巫女側を警戒して逃げ足重視にしたのは間違いだったか?その結果が今この状況なら、未来(いま)に面倒を押し付ける事になった。こんな失敗作(・・・)まで引っ張り出さなきゃならなくなった」


 男のその言葉、次の瞬間には失敗作と呼ばれた集団が男の前に現れ並ぶ。

 それは六体の《灰色の騎士ゴーレム》。

 

 「なんだ、今度は一人じゃないのか?」

 「アンタら四人に俺一人とか無謀過ぎるだろ。流石に最低限、数の優位ぐらいはないと話にもならないだろ」

 「数なぁ……数を揃えただけって割には、結構面倒な予感がするんだが?」


 居並ぶ六体のゴーレムは、少なくとも先程までの有象無象の非にはならないだろう。

 聞いていた白騎士とやらとも異なる佇まい。

 当然警戒は消えない。

 

 「まぁな。そこはそれなりにな。とは言え使えるもんも限られてたからお蔵入り(・・・・)になってた〔白騎士の強化版(・・・)〕なんてものを引っ張り出してくるしかなかったんだよ」


 エルフの里の防衛戦力として量産されていた《白騎士ゴーレム》。

 目の前の六機の《灰騎士ゴーレム》は、男曰くその強化型にあたると言う事だ。


 「強化版ねぇ……そんなのがあるなら、その白騎士とやらみたいに量産すれば良かったんじゃないか?」

 「お蔵入りっていっただろ?こんな失敗作(・・・)を量産出来る訳ねぇだろ。この場に引っ張って来れたのだって〔壊しても問題ない〕ものだからなんだし」


 自らの戦力である《灰騎士》を失敗作とハッキリと断言する男。

 ペラペラと情報を語るのも、どうなろうと構わない情報であるゆえなのだろう。

 使い道の無い機体と情報が、せめての時間稼ぎにでもなるなら儲けものと言えなくもない。

 とにかくあの六体は、今この場には使い捨て前提で持ち出して来たようだ。


 「失敗作ねぇ……そんじゃま、その実力の程を確かめさせて貰おうか!」


 アイドムのその言葉が合図となり、両者の戦いは唐突に始まる。

 今だ正体不明の男に六体の《灰騎士》。

 対するは四人の上級冒険者+精霊。

 彼らは攫われた仲間の反応のあった世界樹の下に辿り着くため、目の前の邪魔者を叩き潰さなければならなかった。


 「……ところでよ、お前の名前って何なんだ?」

 「始まってから聞く事か?まぁ【ニック】とでも名乗っておくよ」

 「そうか、じゃあな(・・・・)ニック」

 「え――」


 開戦直後。

 アイドムのその言葉の次の瞬間。

 六体のゴーレムなどお構いなしに全て無視して掻い潜り、ニックの目の前に突然現れた鎧の男の放った斬撃。

 たったその一撃で、男の体は一刀両断されたのであった。



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