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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
使い魔人生/始まりと出会い
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11 撫子の行く先


 「――あ、えっと、今って何時ですか!?なんだか結構な時間寝てしまっていたような気がするんですけど」

 

 テントの中から慌てる声が聞こえる。

 ヤマトは時計を取り出し、現在時刻を確認する。


 「えーっと。日本時間で言う所の午前十時くらいだね。睡眠時間的には十三時間ってくらいかな?」


 この世界にも時間や時計の概念はある。

 表記やカウント方法は若干違っているが、概ね地球と同じような時間間隔だ。


 「そんなにですか!?すいません、ゆっくりしちゃって。すぐに着替えます!」

 「ゆっくりでいいよー。あとお腹空いてたらそっちに置いてある袋の中のパンとか食べちゃっていいから。ちなみに俺はすでに朝食は終えてるから」


 そんなこんなで少し慌ただしいお目覚めとなった。



 「……あの、おはようございます。それと御馳走様でした」

 

 着替えと朝食を終えた撫子がテントから出てきた。

 ちなみに服装は制服だ。

 一応は一度《浄化》しているので汚れなどは問題ないと思う。


 「あ、早速で悪いんだけど、これを飲みこんでくれる?」

 

 ヤマトが撫子に手渡したのは、飴玉のような小さな粒だ。


 「――はい。分かりました」


 言われるままに飲みこむ撫子。

 もうちょっと安全のためには疑って欲しかったところではあったが。


 「〔俺は使い魔のヤマトです〕――俺は今なんと言ったでしょうか?」

 「え?ただ自己紹介をしただけでは……」


 どうやら問題はないようだ。


 「今飲んでもらった粒は女神様が用意してくれたもので、この世界の言語を理解できるようにするためのもので、俺は今はこの世界の言語で自己紹介も会話もしているんだけど、きちんと通じたなら問題ないかな」

 「そうだったんですね。全然気付きませんでした」


 とりあえず最低条件は問題なくなったようだ。 

 ならば本題に入ろう。


 「それで、蓮田さんのこれからについて決まったことを話したいんだけど、いいかな?」

 「――はい。お願いします」


 夜の間にヤマトと女神様、そしてタケル(・・・)との話し合いで決まった撫子の処遇を伝える。


 「まず前提として、今すぐ地球に帰る事は出来ない。女神様曰く帰すだけなら方法はあるらしいけど、身の危険がとても大きいらしい。だから安全に帰る方法が確立するまで何処で暮らすかって話になるんだけど……ひとまず大丈夫?」

 「……大丈夫です。お願いします」


 多分、帰れない可能性も考えてはいたのだろう。

 実際はいつかは帰れるだろうが、いつになるか分からない。

 ハッキリと無理と言われるよりも、考え方によっては負担が大きいかもしれない。

 だが本題はこれからなので、そのまま話を続ける。


 「それで結論から言うと…この世界の勇者であるタケルを頼って、この国の王城に保護して貰う事になった」


 冒険証(カード)伝信機能(メール)を使って相談したところ、タケルの方から提案された。

 あとは勇者と女神様が手筈を整えたため、正直ヤマトはただの連絡係と化していた。


 「お城ですか…?勇者って日本の方ですよね」

 「そうだね。女神様に選ばれてこの世界に召喚された勇者。日本の事も知ってるし俺の事も知ってて、蓮田さんの事も伝えてある。あとこの国の王様にも〔神託〕って形で女神様が事情は伝えて、許可を取ってあるらしい。今回の騒動は言いふらせる事ではないけど、とりあえず国のトップの王様と最大戦力の勇者が事情をしててて、その上で保護を約束してくれているから相応の生活環境は保証して貰えると思う。守りという意味でも強固な場所だし……えっと、勝手に決めちゃったんだけど、何か希望とかあったりした?」

 「――いえ、もっと大変な環境を考えていたので、予想外過ぎてビックリしました」


 国の重要機関たる王城で保護して貰えるという話は確かにビックリするだろう。

 というよりも、ヤマト自身が最初にタケルに提案された時はビックリした。

 支援を求めたのはヤマト達の方なのだが、予想以上の返答だった。

 勇者で貴族で対魔王最大戦力の持つ権限が半端なかった。


 「――ちなみに、ヤマトさんはこれからどうするんですか?」

 「あ、俺も王都には行くよ。お城には入らないけど。ひとまず一緒に王都まで行って、何かあった時の為に数日程は王都の宿で控えてる。何も問題ないようなら後はお城に任せて俺は使い魔の普通の仕事に戻る」

 「そうなんですか、それなら……分かりました。色々とご配慮いただきありがとうございます。よろしくお願いします」


 本人の気持ちも確認せずに勝手に進めた話であったが、ひとまず了承して貰えたようだ。

 

 「それでこれから、勇者一行が滞在してるバルトルの町…ここから一番近い町に行って合流する事になるんだけど、準備って出来てる?」

 「あ、はい。荷物は全部頂いた魔法袋にしまってあります。移動するならすぐにできます」


 撫子にはヤマトの持つ予備の魔法袋を渡した。

 ヤマトが現在使用しているものよりは確実に劣るものではあるが、あるに越したことはない。


 「それじゃあ早速移動を……あ」


 ここでヤマトは一つ気付いた事があった。


 「(そういえば……ここからバルトルの町まで歩くの?スタドよりは近いけどそこそこ距離あったよね?制服のローファーで大丈夫かな?)」

 『そこはちゃんと二人乗り出来る物を準備してありますよ!サイドカータイプと人力車タイプのどっちがいいですか?』

 「(……自転車から離れて欲しかった。というか俺が漕いで引いていくのか、人力車は)」


 異世界らしい造形や雰囲気ってのは大事だと思う。

 

 

 

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