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異世界で女神様の使い魔になりました。   作者: 東 純司
精霊界騒動/精霊界の行く末
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99 使い魔対ネクロマンサー


 〔炎の上位精霊:ファイリア〕

 精霊王の選定の際に精霊界を離れて以来、人界を放浪し、音信不通となっていた精霊。

 そんな存在が、今ヤマト達の目の前に現れる。

 ネクロマンサーとなったネスに従う〔敵〕として。


 「……《死霊奴隷(ネクロマンス)》って文字通り死霊・死体がなるものだよな?」

 「そうね。だけど……あの子は生きてる(・・・・)わね」


 ヤマトの《鑑定眼》で見えたファイリアの情報。

 そして精霊であるアリアの認識。

 それが示すのは、ファイリアがまだ〔生きている精霊〕であると言う事だ。


 「死体と同じ〔ネクロマンス状態〕の表記。ザコトロの〔暴走状態〕と同じ状態異常的な表記だとしたなら、何かしらで解く事は出来ないんだろうか?」

 「分からないわね。前例が無い事だし」


 あの虚ろな瞳はどう見ても正常な精神状態には見えない。

 まだ生きている事も考えると、ネスに自由を奪われた状態である可能性が高い。

 出来うるならば解放するのが良いのだろうが、当然その方法など分からない。

 

 「とりあえず、何をするにしてもまずはあの子を大人しくさせないと。あの子の力は精霊界(ここ)で振るうには悪すぎる」

 「火の精霊……燃やされるのは場所的に問題ー」


 広場の周りは草木生い茂る森。

 当然〔炎〕とは相性が悪い。


 「――!!」


 声に出来ないファイリアの声。

 そして高まる熱と、燃え盛る纏いし炎。

 どうやらやる気充分なようだ。


 「アリア!」


 アリアが全力で駆け出す。

 ヤマトは咄嗟の援護で手前の狂化ネクロマンスの動きを妨害し、構わず真っ直ぐ進むアリアに手出しをさせない。

 そしてアリアは水の拳でファイリアに殴りかかる。


 「ファイリア!!」

 「――」

 

 《炎の盾》がアリアの拳を遮る。

 放つ拳は盾に阻まれ届かない。

 だがそれでもアリアはその拳を止めない。

 

 「……引き離してるのか」


 主戦場から離れてい行く二人。

 一対一で語り合う(・・・・)つもりのようだ。

 それならば残る二人は、それぞれやれる事を行おう。


 「――先輩。目の前の死体は任せて良いですか?」

 「りょーかい!気を付けて」


 それだけで理解するピピ。

 流石に戦い慣れているとでも言うべきか。

 この場はピピに任せて、そしてヤマトも駆け出した。


 「邪魔はさせないー」


 《多影》により現れたピピの分身達が余所へと手出しできない様に狂化ネクロマンス達を包囲していく。

 そして九体全ての相手を、ピピ一人に任された。


 「狂化なだけあってパワーは馬鹿みたい。だけど野生的になって精練さが無い。さっきまでよりむしろ戦いやすい。この程度なら私だけで充分!」


 役割分担。

 アリアがファイリアの相手を。

 ピピが死体の相手を。

 そして――


 「ふむ、まぁ上位精霊(アクエリアの分体)を引き剥がせたのならファイリアも出した意味はあったか。だが死体共を狂化させたのは失敗だったな。こう易々と通してしまっては意味がない」

 「……その割には焦る様子もなさそうだけどな」

 「その必要がないからだ。面倒な細工(・・・・・)も役目を終えた今、私もやっと全力を出せる」


 細工と言うのは、精霊界を傷つけ、〔迷いの森〕を消失させた先程の何かの事だろう。

 〔迷いの森〕の惑いが消え、今のネスは目指せば真っ直ぐ目的地へと向かえる状況にある。

 先程までの防御優先の立ち回りは、その為の時間稼ぎだったのだろう。


 「《三連/風弾》」

 「おっと、せっかちだな。ここは種明かし(・・・・)が必要な時ではないのか?私がどうやって惑いを払ったのか気にならないのか?」

 「《風斬乱舞(カマイタチ)》――時間与えたらロクな事にならないのは理解したからな。それにアテ(・・)は付いてる」


 話ながらも攻撃の手は止めないヤマト。

 次も何をされるか分からない以上、話にただ付き合うつもりは無い。

 

 「ふむ、もう少し問答が入ると思ったのだが……まぁ良い。小細工が要らないのはこちらとしても手間が省ける。正々堂々(・・・・)と真っ向から潰させて貰う」


 そしてこちらでも、一対一の戦いが本格的に始まった。

 

 「《六連/水槍》」

 「《闇の盾》」

 「《雷斬》」

 「おっと……随分と属性が多彩だな。流石は分体とはいえ、精霊女王の認めた契約者だ」

 「《水壁》」

 「全属性……いや〔聖〕は流石に無いな。それと周りが森なのを警戒して、〔火〕は極力控えているか。そんなのを気にしている余裕はあるのか?」

 「どうだろうな」

 

 今はもう問答に付きあうつもりは無い。

 今ヤマトがすべきは、目の前の敵を倒す事だ。


 「《短距離転移(ショートジャンプ)》」

 

 賢者シフルの指導で完全に形になった《短距離転移(ショートジャンプ)》。

 瞬時にネスの背後に回る。

 そして握った《氷の剣》を振るう。

 

 「この程度の不意打ちが効くとでも?」


 《氷の剣》はネスの《盾》に阻まれる。

 そしてカウンターとして、ヤマトは腹部を《闇の剣》で貫かれる。

 防いだ様子などはない。


 「……チッ!」


 ネスは自身が貫いたものが偽物(・・)である事に気づき、舌打ちを打つ。

 それは《幻影》の掛けられた人型等身大人形(ゴーレム)であった。


 「――《暴氷槍の雨ブリザートランスレイン》」


 本物ヤマトは二度目の《短距離転移(ショートジャンプ)》でネスの頭上を取った。

 そしてヤマトは真下に向けて魔法を撃ち下ろす。


 「くッ!この威力と数は――」


 今のヤマトは一体分に注力すれば、《人形創造(ゴーレムクリエイト)》を一瞬で完了させることが出来る。

 《短距離転移(ショートジャンプ)》で背後に回り、ヤマトの姿に偽装した人間サイズのゴーレムをけしかける。

 そして自身は二度目の《短距離転移(ショートジャンプ)》。

 短時間での連続転移は負担も大きいが、バルトルで散々に魔法負荷を掛け続けたヤマトの体は、負担は負担として受け止めつつも、この程度の負担で鈍るほどヤワでは無くなっている。

 この流れを瞬時に行い、ネスの意識が人形に向いている間に自身は上から大技の準備。

 そして氷槍はネスの体を捉え、明確なダメージを与えた。


 「《闇の――」「《風走》」


 ヤマトは足に纏った風で空を二歩駆け(・・・・・・)、強引に落下軌道を変える。

 ネスの魔法が先程までの落下軌道を貫いて行く。

 

 「なら着地を――」

 「《短刀射出ブレイド・ショット》」


 着地の瞬間、いわゆる着地狩りを狙うネスに対して、ヤマトは即座に放つ事の出来る《短刀射出ブレイド・ショット》でけん制する。

 《短刀射出ブレイド・ショット》の利点は、魔力的には最初の《刀身強化》と発射時の《瞬間加速》にだけ構えばいいので、魔力消費の少なさは勿論、別の魔法(・・・・)を行使しながらでも扱う事が出来る点だ。

 魔法戦闘の基本として、〔主力魔法〕同士の並行行使は出来ないが、〔主力魔法〕と〔補助魔法〕の並行は可能。

 《攻撃魔法》と《攻撃魔法》を同時には使えないが、《強化》を掛けながら《攻撃魔法》は使える。

 基本的には物理剣であり、補助魔法だけで放てる《短刀射出ブレイド・ショット》はそう言った面で有用であった。


 「《集束・獄氷弾(コキュートス)》」


 そしてネスの頭上に生まれたのは巨大な氷塊。

 それを単体攻撃用に凝縮したもの。

 とはいえやはりそれなりの大きさにはなる。

 これは獄炎弾の氷版。

 その威力は当然獄炎弾にも劣らない。


 「おおおおおおおおおおお」


 叫びと共にネスの姿は、その氷塊の下へと消えて行った。 

 


6/22 18:16


誤字を修正しました

「素性」→「頭上」。


ちなみに見逃してる可能性もあるので、誤字報告は常に歓迎してます。

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