チーム結成物語
結局二号機が倒れた原因は操縦者の技術不足という事で解決となり、その後タンカーに付いていたクレーンで引っ張り、整備部送りとなった。
フレームギアを格納させるタンカーは、けん引式となんており、大型トレーラーによって運搬が可能となっている。ただ、フレームギアを乗せたタンカーを運ぶには専用のトレーラーを使うほうが、トレーラー自体の燃費も車体の消耗も激しくなく済むので、フレームギア安全運用委員会からは専用トレーラーでの運用を推奨している。
「いやぁ~凄かったねぇ転校生君、ほんとに操縦上手いんだね」
「まぁそれなりに乗っとるからな……やのうてなんであんなことしたんや、俺てっきり頭おかしなってしもうたんか思たで」
「転校生特有の嘘自慢かと思ってね」
「嘘付いてどないすんねん……」
講習所で出会った飯垣が加わり、帰り道、三人は他愛もない雑談をしながら歩いていた。
外はすっかりと暗くなり始めており、夕焼け空と夜空の間くらいになっている。
「そ、そういえば何で金鉄君はあの倒れたギアのこと気にしてたの?」
「どうも動きに違和感がある思うてな、倒れた際原因知りたかったから近づいてみたんやけど……」
「怒鳴り散らされて帰ってきてたわね」
倒れた二号気の回収が終わり、待機させていた一号機と三号機にそれぞれタンカーへ戻る指示が出た。
その際、剛は直ぐ様タンカーに繋がれていた二号機へと駆け寄り原因を探ろうとしたのだが、何故か高学年に行く手を邪魔され、挙げ句怒鳴られてしまったのだ。
「一年ごときが勝手に近づくんじゃねぇ! 試験資格剥奪させるぞぉ! だってさ、遠くにいた私たちにも聞こえるくらい大声出しちゃってさ、どうしたんだろうね」
「な、なにかこう、かか隠し事? とかあるんじゃないかなぁ……なんて」
「あんだけ顔真っ赤にさせて必死やったらそう見えるわな、俺かて何かあるんちゃうか思うとる」
飯垣の予想は当たっているのだった、本来教習用のフレームギアには、専用に作られた姿勢制御プログラム等が組み込まれているのだが、今回剛達が操縦していた三台すべてのフレームギアには、教習用プログラムがインストールされておらず、代わりに別のプログラムが組み込まれていたのだった。
その結果、二号機に組み込んだプログラムにバグが発生し、本来正常に動くはずの姿勢制御システムがうまく稼働せず、転倒してしまったのだ。
夕日が照らす一室、その部屋に蛍光灯の明かりが混ざり、壁に掛けられた白虎が縫い描かれた白い旗がうっすらと橙に染まる部屋で、白髪の男が一人、手に持つ資料を長し読みながら机越しに目の前に立つ女生徒の話す内容を聞いている。
「……ということでして、二号機に使用したプログラムはうまく動かなかったようで、転倒いたしました。一番出来が良いと思っていたのですが、肝心な同期部分に問題があったようです」
「そうか……まぁそれでも開発を進めさせろ、これは完成すれば校内一番の自動修正プログラムになるはずだ。代わりに三号機に積んでいたものを開発を止めさせる、あれは思っていたよりも性能が低い…………そういえば転倒したときに騒いでいた学生というのはその後どうなった?」
「はい、彼は二年で、調べたところ私たちのチームであり、どうやらこの計画を知っていたようで、執拗に近づこうとした一年を引き留めるためにあのような行為をしたようで」
「逆に目立ってしまうと気付かなかったのか……二年になって一月も経たないとやはり一年と変わらんな。で、そいつをどうした」
「脱退、無期限立ち入り禁止処分とし、その後反省の色を見せるようであれば新入として一からの入隊扱いとします」
「まぁ、そういった奴ほど反省はしないだろうな」
男は夕焼けの染まるだだっ広い校舎内を眺めながらそう呟いた。
「おはようさん、今日もええ天気で」
「大雨なんですけど」
翌日、大粒の雨が降る中投稿してゆく生徒たちは、今日も学校で勉学に励むのである。
剛と三木も朝のホームルーム前に登校し、自分の席に荷物をまとめている、まだホームルームまでかなり時間があるので、三木はそのままクラスの女子たちのところへと向かい、剛はフレームギア参考書を開きまだ理解しきれていない部分を勉強している。
多脚の脚部に関する資料を掲載しているページを眉を顰めつつ読んでいると、後ろから誰かに軽く背中をたたかれる。
「やぁ、金鉄君」
「おん? あぁ、葛飾やっけか」
葛飾鈩、身長が180cmもあるやせ型体質の男だ。
よく見れば目の下にクマがあるが、本人はいたって元気なんだそうで。
「そう、葛飾で合ってる。でさ、金鉄君、学園内でグランプリの学園代表チーム決定戦をするって話って聞いた?」
「グランプリ? なんやそら、なんのこっちゃい」
「バトルフレームって競技あるだろ? フレームギアに乗って戦うあれ、あれの大規模なグランプリが数年後にあるらしくてさ、学園内でもそれに向けて新しいチームがどんどん出来ていってるんだよ」
バトルフレーム、大会規定の条件に合った1~3機のフレームギアに乗り込み戦闘し合う競技、相手のせん滅か隊長機の行動不能判定で勝敗が決まる、フレームギア普及とともに広がった新しいスポーツである。
この学園内にも既にチームは存在し、過去何度も大会には出場をしているが、それとは別に新しいチーム、言わゆる新勢力が誕生しつつある。
元々数年に一つか二つ位の割合で結成されていたチームだが、今年は既に3チームも結成されており、まだ増える見込みだ。
その要因の一つにあるのが、数年後に行われる予定のフレームギアグランプリの日本杯と、それに向けて事前に行われる代表決定戦だ。
大会自体は過去何度も各企業が企画して開催される事はあったが、規模は大きいとは言えなかった。
しかし、普及に伴い人気が出てきた事により、それぞれ大会を開いていた企業や、フレームギアの製造、販売をする業者たちが集まり、大きな大会が行われることとなった。
また大きな大会であるため予選の参加チームの数が多く、大会運営からは、海外で大きな成績を上げている日本の大手チームや、この学園のようにフレームギアに特化した学校からは特別枠として用意された席が設けられており、その席を目指すための学園代表予選が行われる。
「でさ、古参チームである5チームが新しく出来た色んなチームから有能な人材を引き抜いて行ってるって噂なんだよ、てか実際引き抜きかけられて奴から聞いた話なんだけどな?」
「へぇ、グランプリなぁ……おもろそうやな」
「それでな、白虎隊から来ないかって言われたらしくてさ、そいつ本気で迷ってるんだってよ。もちろんチームには内緒で……って、聞いてる?」
「俺もチーム、造るか……!」
「え、チームを造る? それ本気?」
「フレームギアのおっきなグランプリやろ? こんなおもろそうなことそうそう無いで! 大会は見に行くこたぁあったが参加なんてしたこと無かったからなぁ、いやぁええこと聞いた! 感謝するで葛飾ぁ、俺、グランプリ出るわ、そんで優勝しちゃるわ! だっはっはっはっはっはっ!」
葛飾の呆れと驚きが混じったような顔を見ながら両肩を掴みながら大きく揺らし、これまた大きな声でチーム結成を宣言する剛だった。
チームを結成するにあたり、剛の中では最初に仲間にするべく声をかける相手はもう決まっている。到底人数は足りないわけだが、とりあえずその二人は誘ってチームに入れておくべきであると考えているのだ。
そんなこと考えながら葛飾の肩を振り続けているとHRを知らせるチャイムが鳴り、剛の宣言と共に騒然としていた教室が静かになった。
葛飾はHRと一時限目途中まで話の内容が頭に入らなかった。
午前の授業が終わり昼休み、剛はいつものように自分の席で弁当を食おうと思っていたところ、隣の三木から声を掛けられる。
「ちょっと転校生、お昼一緒に食堂で食べましょ? 朝のあれについて色々聞きたいんだけど」
「ん? おお、ええで。その朝のことについて言う事あるさかいな」
食堂はお昼始まったばかりとあって生徒たちでごった返している。
剛は弁当持参なので先に席に座り場所取り、しばらく待っているとトレーにカツ丼を乗せて三木がやって来た。
「場所取りどうも、で、早速だけど朝言ってたチームを作るっていうやつ、あれ本気なの?」
「冗談言うてどないすんねん」
「仮にチームを作るとして、誰を誘う訳よ」
その質問をする三木の顔はいささか不機嫌そうに見えた。
「誰でもええやろ……てかなんで怒っとんねん」
「何にも怒ってませーん、不機嫌でもありませーん」
「不機嫌とは言うとらんやんか、てかやっぱり怒っとるんやないか」
呆れ口調で言うと三木は隠すことなく不機嫌な面でコッチを睨んでくる。
「良いから質問に答えて、一体誰を誘うつもりなの」
「お前や」
租借しながら箸で三木を指しそう答えると、さっきまでの目を吊り上げたような不機嫌面から驚いたような顔をして固まった。
数秒しても固まっているので、声掛けをしながら目の前で手を振るが反応しない。仕方が無いので放置しておかずを食おうとした瞬間。
「なぁんだもう誘ってくれるならくれるって言ってよぉっ!」
「あ゛ぁ゛っ!!」
勢いよく肩をたたかれ、その勢いでおかずを落としてしまった。しかも剛の大好きな卵焼きが地面に落ちてしまったのである。
「何さらしてくれとんじゃ赤毛ぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「いやぁ、女だから誘われないとか思って心配しちゃったぁ! いやぁよかったよかったぁ!」
「良くねぇぇぇ!!」
こうして無事チームに一人、仲間が加わったのであった。
結成っつってもまだ二人なんやで
スタックが無いのでまた次回はいつになるやら……なるべく早くしますさかい、許してな!!
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