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免許講習物語

自動車免許の先生て怖いイメージしかないんです。こわかったんです。

 剛と三木は現在、学園のフレームギア開発研究棟の、放課後に行われているドライバー講習教室に参加していた。

 学園限定のギアドライバー免許取得には、定期的に行われる試験に合格しなくてはいけなく、また一度不合格になると2ヶ月の試験を受けさせてもらえなくなる。

 講習で教える教師の中には、もちろん現役の教習の先生もいれば、将来的に教習員になろうとがんばる三年生もいる。


 二人は現在、二足歩行型フレームギアの講習を受けている。

 教卓の前では教習員候補生の三年生が、二足歩行機の説明と注意点を、要点を踏まえながら教えている。


「なんや、初歩の初歩やないか……まぁ復習と考えればエエもんか」

「え、もうこんな所勉強してんの?」

「何言うとんねん、この教科書なら中一の頃から持っとるし中身ほとんど覚えとるがな」

「へぇー、今日授業を居眠りしてた人とは思えないわ」

「一日程度で俺の事がわかると思わんといてな」


 疑いの目を向けながらこちらを見る三木に、剛は勝ち誇った用な顔を向けた。

 五十分程度の筆記講習を終えた二人は大勢の一年生と同じように講習室から退室すると、定期開催の実技教習が行われている第三フィールドに向かう。

 人用出入り口の横に実技講習会場と書かれた看板が掛けられており、周りにはまた沢山の生徒たちがいた。よく見るとさっき筆記講習受けていた人もちらほらといる。


 中では三台の二足歩行型のフレームギアがぎこちなく移動やタンカーへの格納を行っていた。

 ここで使われているギアは、型落ちしている旧式の物を使用している。二足歩行型教習専用機として造られた初代のギア、機体名『ファウスト』である。第一歩をここから始めようという意味でつけられたとかなんとか。


「ほぉーこれだけ広かったらもっと入りそうやなぁ」

「ここは確か普段は開発機のテスト起動や能力測定なんかで使われる……って言ってた気がする」

「なるほどな、にしても……ヘッタクソやなぁあの機体の操縦者よぉ」

「当たり前でしょ、私たちまだ乗ったことすらないのよ? それをそう易々と乗りこなせるもんかっ」

「いやでもあれ初めてにしてもまごつきすぎやろうて」


 そう言って剛は肩に大きく2と書かれた機体を指差す、確かにあの機体だけ、他のと比べて動きが非常に悪い。


「初めてなんだから、あれくらいなんじゃないの?」

「うーん、引っ掛かんなぁ……」

「ていうかそんなに下手下手っていうならさぁ、あんたはどうなのよ転校生君、あの機体完璧に乗りこなせるわけ?」

「完璧いうわけやないけど、人が歩く程度には操縦できるはずやで?」


 そう答えると三木は、突如剛の手を引っ張りタンカーのところまで連れて行った。

 「おいなにすんねん! おい! 待たんかいな!」と止めようと呼びかけるがガン無視、それよりも周りにいた人たちがコッチを一斉に向き出した。

 タンカーの近くまで来ると三木は近くにいた男性に声をかけた、その男の右腕には『教習員』と書かれたバンドがしてある。


「先輩方ー! どうもすみませんちょぉっといいですか?」

「ん、何だ? 今ここはギアが動いてて危ないから関係ない人は下がって下がって」

「いやこの人がどうしてもギアに乗りたいって効かないんですよぉ」

「オイ誰がそんなこと言うた」

「でぇ、しかもここにいる誰よりも上手に動かせるって聞かないんですよぉ、なので少しで良いので乗せてあげて欲しいんですよ」

「聞かんかいコラ」

「い、いや、でも順番は決まってるし、次の予約の子ももう来てるし……」


 そう言って近くにいた背の低い男子を指差した。

 二人は指の先を追うように見ると、そこには剛と朝出会った少年がぽかんと突っ立っていた。


「あ、朝の道案内やないか」

「あ、あど、どうも」


 軽く会釈をする少年。すると三木はすぐにその少年のところに突っ走って行き、両肩をつかむ。


「君、名前は!?」

「え、い、飯垣、飯垣純也(いいがきじゅんや)です……」

「飯垣君! 君とあの転校生君との仲に免じてさ、ちょっと順番変わってくんないかなぁ!?」

「おいアホ毛、そりゃアカンやろ、順番守ってここまできとるんやから、そない無茶なこと言っちゃぁいかんわ」


 ぐぬぬぬ……と俯き身を震わせたかと思いきや、いきなりしゃがみ込み、両肩を掴んでいた手は即座に飯垣の両手へと滑り落ち、その両手を包むように胸の前で掴む。


「……お願い、今回だけでいいから……ね?」

「えっ、いや、あ、あの、その、えっと、わ、分かりました、分かりましたから手を放してくださいっ!」


 三木が上目遣いでウソ泣きまでしてか弱き乙女を演じ、目の前で奇麗な女の子に上目遣いで泣きながらお願いなど身長の事も性格的なこともあり全くなかった飯垣にとって耐性がなく、赤面し即堕ちてしまった。

 あまりの恥ずかしさにお願いを勢いで受け入れ、あまりの恥ずかしさにその場から逃げ出したくなる。


「やったー! ありがとうね飯垣君!」

「先輩さん、女ってのぁどこも恐ろしいんやねぇ」

「あぁ……そうだな」


 そんな様子を後ろで見ている剛と先輩教習員の男子学生だった。





 二号機が転びそうになりながらも歩いている中、剛の番――本来ならば飯垣の番――がやって来た。タンカーの側面に付いた簡易のエレベーターで胸部の乗り込み口がある高さまで上り、背面を開けて中に入り込む。

 この『ファウスト』は形がおおよそ人に似ており、農業機の様なずんぐりむっくりした体系ではない。スリム体系であり、それなりに大きい。

 中に入り込んだ剛は無線機の付いたヘルメットをかぶっており、座席のシートベルトを付けた後、各モジュールの簡易点検をした後、エンジンを起動させ前方にある日本の操縦レバーを手に持った。


「うん……彼乗りなれてるね、何で本来乗れない奴が乗りなれた動きしてるのかはあえてここでは言及しないけど、確かにうまく乗りこなせるってのは嘘じゃなさそうだね」

「オーやっぱすごいんだあの転校生君」


 三木たちは、タンカーのそばに置かれている室内を見るモニターの前におり、先ほどから中に入った剛の様子をモニター越しに見ていた。


『先輩方、指示お願いしますわ』

「お、よし、じゃぁそのままタンカーから降りて、前にひかれてる線が見えるだろ、そこまで進んでくれ」

『了解』


 突如無線機から流れてきた剛の声に、少し驚きながらも無線機越しに指示を出していく。

 と同時にタンカーに収まっていた機体がゆっくりと動き出し、右足を先に前に出し地面を踏む。そのまま流れる様に左足も出し、ゆっくりと線の前まで歩いた。

 初心者のゆっくり歩く、ゆっくり動くという動作は、剛のように滑らかにはいかない、関節の一つ一つを順番に動かしては止めて、また動かしては止めてを繰り返すような動きをする。

 初代の教習用機はムーブアシスト機能は備わっておらず、機体の動きはまんまドライバーの操縦技術の技量を語るものである。


 剛はその後出された指示に従い屈伸や物を持ち上げ運搬、倒れた状態からの復帰など基本動作を淡々とこなしていった。

 周りは動きの差に愕然としながら剛の乗るフレームギアを見上げていた。


「ホントに凄いじゃないか彼、この調子だとこのまま試験に行っても、技能じゃまず落ちないかもね」

「ちぇーなんかずるいなぁ」

「そ、それだけ彼が努力してるんだよ、き、きっと」

「ずるい、か、確かにね、一年生でこんな動きするのを見せられたら、僕もちょっといじけちゃうな」


 剛はそんな会話をされてるとも知らず、機体を動かしていたが、やはりさっきから横でぎくしゃく動いている二号機が気になってしまう。

 すると、突如よろよろと歩いていた二号機が姿勢を崩し背後に向けて倒れてしまった。地面から衝撃がギアの操縦席まで伝わり、辺りは悲鳴や驚く声がし、二号機担当の教習員達は急いで中にいる学生の救助へと向かった。


「剛君、ゆっくりしゃがんでエンジンを切って待機してて、良いって言うまでエンジン掛けないでね」

『了解や』

「そういう訳だから、ちょっと行ってくる、絶対近づいちゃだめだからね」


 剛や三木たちそれぞれに伝えると、走って倒れたフレームギアの元へと向かっていった。


「大丈夫なのかなぁ、中の人」

「し、し、死ぬことは無いと思うけども、う、打ち身は、してそう、ですね」


 二人はそう言いながら土煙が舞う方向を見ていた。

 剛は言われた通りにエンジンを停止させ、背面のハッチを開け事故をしたギアをまじまじと見ていた。


「うーん、やっぱなんか変やなぁ……」

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