07
キリカさんとエメリアさんとの、話し合いが終わってみると太陽は真上。つまりお昼だ。村長の家から出ながら、ふと思う。
「お昼ご飯は、二人共どうします?」
「そーだなー、近くに旨い飯屋はあるか?」
「ありますよ。ルゥおばさんの食堂。この村では、ジャガイモがよく採れるので、ジャガイモ料理が絶品です」
「ジャガイモか、いいな。そこ行くか」
ルゥおばさんの食堂はここから、三分。キリカさんがジャガイモについて、なんか語り始めたので耳を傾けていたらすぐ着いた。ちなみに、好きなジャガイモ料理はジャガイモオムレツだそうです。それ卵料理でしょ。
「いらっしゃい、ああロンの坊やか」
「こんにちはっ、ルゥおばさん」
「人攫いに捕まったんだって。もう大丈夫なのかい」
「はい、すぐ助けてもらえましたから。この二人に」
僕の後ろにいた二人を紹介しようとした瞬間。
グゥ。
誰かのお腹から音が鳴った。するとエメリアさんの顔が目に見えて赤くなっていく。
「エメリア、お前は良いとこの御嬢さんなんだから、少しは慎みをもて」
「あ、あなたに言われたくないわキリカっ。戦うことしか頭にない、筋肉お化けっ」
「なんとでも言え。料理すらまともにできない24の女が」
「自分が17で少し若いからって調子に乗らないでよねっ。というか料理ができないのは、あなたも同じでしょっ」
何やら言い争いが始まった。大きな声で騒いでるので、他のお客さんがこちらを見ている。
「はいはい、あんたら店の中で騒ぐのはやめてくれ。喧嘩なら外に出な」
ルゥおばさんが言うと、二人は渋々言い争いをやめ、テーブル席に着いた。キリカさんとエメリアさんが向かい合って着席したので、僕はキリカさんの隣に座った。
「何よっ、あなたも若い方が良いってわけっ」
エメリアさんが、大きな声で問い詰めてくる。濡れ衣だ。日に当たらない方を選んだだけなのに。
「若い方が良いのは当然だろう。枯れていく花より、これから咲く花の方が良いに決まっている」
そう言って、僕の肩を抱き寄せるキリカさん。あの……肩にその、当たってるんですけど。
「ギググググググググ」
すごい音を出している。どこからあんな、恐ろしい音が出るのか。医者として少し気になる。
「そっそれより早く頼みましょ。お腹すきましたしね」
「まったくだ。ヒステリーになんぞ付き合っていられん」
「誰がヒステリーよ……私肉じゃが定食」
僕とエメリアさんが肉じゃが定食。キリカさんは、ジャガジャガ定食。なんだそれ、初めて見たぞ。