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死にかけの英雄とお医者様な僕  作者: ギンギン
6/18

05

 通常、呪いによる刻印は親指と同程度の大きさだ。呪いが強ければ刻印は大きくなるが、それでも拳大ぐらいだ。背中を埋め尽くす刻印なんて伝説レベルの呪いだ。


「これは……」

「驚いたか? 中々に無様だろう」


 長い金髪を揺らしながら彼女は話す。


「戦争中、魔物にかけられた呪いでな。最初はもっと小さかったんだが、日が経つごとにここまでのサイズになった」

「大きくなる?」


 刻印のサイズは、普通のものなら変化しない。それが変化するのであれば、意味があるはず。


「恐らくですけど、この刻印は背中から胸の方に広がってくると思います」

「ほう、なぜそう思う」

「父さんから、話だけは聞いたことがあります」

「お前の父親は、医者の試験のことは教えないのに、こんな稀な刻印は教えるのか」

「はは……」


 苦笑いが思わずででくる。


「そして心臓の当たりまで達したとき……そのぉ」

「はっきり言っていいぞ。死ぬと」


 なんでこの人、こんなに堂々としていられるんだろうか。強い人なのだろうか。それとももう諦めているのか。


「こんな所で、僕に診察されるんじゃなくて、王都にでも行って、ちゃんと治療を受けたほうがいいと思いますよ。王宮にいるような治癒魔法師であれば、解呪できるのでは?」

「嫌、駄目だった」

「え」

「国中の治癒魔法師に診てもらったが、誰一人、解呪できなかったよ」


 国中って……この人何者?見た感じまだ若そうだけど。


「それでロン医師、あなたにこの呪いが、解呪できますか?」

 

 エメリアさん期待を込めた目で僕を見る。けれどその期待には、応えられない。


「はっきりいいます。僕では解呪できません」

「……そうか。」

「僕にできるのは、呪いの進行を鈍らせタイムリミットを伸ばすことぐらいです」


 その言葉を発した瞬間、数メートルはあった、キリカさんとの距離がほぼゼロになり、数センチ前にキリカさんの顔が現れた。ってゆうかこの人、上半身裸ァ。


「ほ、本当か。どれぐらい延ばせる。一か月か、二か月か、三か月か」


 キリカさんは、僕の肩を掴みながら、ぐわんぐわんと回す。全部見えてるし、なんかいい匂いする。


「お、落着きなさいキリカ。冷静になるのよ」


 エメリアさん自分は、平然だとアピールしてるけど、そっちドアだから。誰もいないから。


「あのよく刻印を見せて下さい」

「ああ、いくらでも見てくれズボンも脱いだ方がいいか?」


 なんでだよ。まともに見れなくなるから履いていてくれ。

 二人が、やっと落ち着きだしたので診察に入ろう。

 キリカさんの背中を、むにむにと触りながら観察する。


「この刻印最初はどこにありました?」

「右の肩甲骨のあたりだ」

「肩甲骨……大きさは?」

「拳サイズだ」

「ふむ、いつ呪いを受けました?」

「今から、三百三十二日前だ」

「やけに正確ですね」

「ああ一生忘れんよ」


 まぁそうか、あんな呪いを受けた日を忘れることなんて、できないか。


「大方わかりました。このまま何もせずに過ごせば、キリカさんの余命は一か月といった所です」

「ああ、それは王宮の治癒魔法師から聞いた」

「そうですか。それで僕が治療した場合ですけど、四か月程に延ばせます」





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