04
「魔物に負わされた傷でもってどういう意味ですか」
小さな部屋の中僕は、彼女の返答を待つ。エメリアさんは、ふぅと一息つくと続けてしゃべり出す。
「魔物を相手に受けた傷のことを魔傷と呼びます。この魔傷は、自然治癒もしくは、治癒魔法でのみ治療できます。」
薬とかは効果がないのか。……待てよだったら治癒魔法が使えない医者には治せないじゃないか。
「この魔傷を治療できることが、治癒魔法の特色です。他の魔法ではできません。その為、国を挙げて治癒魔法師の育成が行われています」
なんと。治癒魔法は、中々優秀なものだったんだなぁ。けれどおかしい。
「エメリアさん、魔物との戦争はもう終わったんだから、そんなに治癒魔法師がいるんですか?」
僕のその言葉を聞いた途端、彼女の顔は苦いものへと変わった。少し焦っているようにも見える。
「えぇっとそれは、その、あの、なんというか……」
見事にテンパっている。僕はなにか痛いところを突いてしまったのだろうか。慌てているエメリアさんを見ていたら、その隣から笑い声が聞こえてきた。キリカさんだ。
「エメリア、お前何こんな子供に慌てているんだよ」
「うっうるさいですよキリカ」
「それより本題に入れよ。治癒魔法の講義をしに来たわけじゃないだろう」
本題? ああこの人達は、父さんに用があったんだっけ。
「そ、そうですね。時間ももったいないことですし」
そう言いながら彼女は、姿勢を正し、僕と向き合う。
「ロン君、いえロン医師あなたには、ここにいるキリカ・クロースにかけられた呪いを解呪していただきたいのです」
「呪い、ですか……」
「はい、それも魔物にかけられたものです。」
呪いの解呪。治癒魔法で行えることの一つだ。それは父さんから聞いたことがある。傷の治癒に比べれば、難易度は低い。
「構いませんが。呪いということはどこかに刻印がありますよね?」
刻印というのは、呪われた人間にできる呪いの証。見た目は、刺青のようなものだ。
「ああ、背中にある。」
そういうとキリカさんは、おもむろに上着を脱ぎだした。ドキドキ。
「ちょっとキリカっこんな人の目がある所で、脱がないでよっ」
「別に構わんだろう。見てもおもしろくない体だ」
「そーいうことじゃないのよ。あーもう、すいませんロン医師以外は、出て行ってもらっていいですか」
「嫌だ。ここはわしの家だ。断固として出て行かんからな」
村長が駄々こねている。ボケてんのか、ボケてないのかよくわからん。
結局、村長はみんなに連れて行かれ部屋の中には、僕、キリカさん、エメリアさんの三人だけになった。
キリカさんは、気にせず脱ぎ続けるが、僕は、恥ずかしくなって顔を背ける。
布の擦れる音が、心臓を高鳴らせる。僕は今どんな顔をしているのだろうか。
「脱いだからこっちを向け。刻印を見てくれ」
キリカさんがそう言うので、真っ赤な顔をになっているであろう顔で振り向く。
それを見た瞬間をの心臓は、跳ね上がった。女性の裸を見たからでない。
背中を覆い尽くさんとする巨大な刻印を見たからだった。