03
僕が医者だとわかると二人は狭い室内の中、ゆっくりと近づいてきた。あいさつをせねば。
「ええっと……改めて助けてくれてありがとうございました。ロン・シルバ、13歳です。職業は医者です」
「13歳……本当にその若さで医師をしているの?」
「はい、父にある程度のことは教わっていますし、小さいときから助手として、仕事を手伝っていました」
二人は僕の説明を聞いても半信半疑のようだ。僕ぐらいの医者は珍しいのだろうか。
「エメリアこんなに若く医者になれるもんなのか?」
「無理よ。医師を名乗るには王国が行っている試験に合格しなければならない。それを受けられるのは15歳を過ぎてからでないと」
えっそうなの?
「じゃあこいつは、医者を名乗る不届きものってことか?」
「一概にそうとは言えないのよ。医師はどこへ行っても人手不足でね。王都から離れた田舎の村じゃ医師がいないことだって珍しくない。そういった村では治療が得意な人間が医師を名乗るのは、よくあることよ。王国もそのくらいで、いちいち目くじら立てないしね。まぁそれでも、こんなに若い子がなるのは大分レアケースだけど」
僕は、正式な医者じゃなかったのか。父さんはどうだったんだろう。昔は王都に住んでたって、言っていたけど試験に合格していたんだろうか。あんまりそういった話はしなかったなぁ。もっと聞いておけばよかったかな。
「ロン君、あなたに聞きたいことがあります」
真剣な顔つきでエメリアさんは言う。
「は、はい改まってなんでしょう」
「あなたのお父上のギルバート医師は、治癒魔法の使い手だったと聞きます。あなたもそうなのでは?」
何言ってるんだろう。医者なんだから、治癒魔法が使えて当たり前じゃないか。
「もちろん医者を名乗る以上使えますけど……」
むっまた二人の顔が曇った。
「ロンお前は勘違いしている。医者なら誰もが、治癒魔法を使えるわけではない」
「じゃ、じゃあどうやって治療するんですか?」
「薬を使ったり、包帯を巻いたりして治すんだ。お前もやるだろう」
「確かに使いますが、それは補助的なものですよ」
治癒魔法を使わず、包帯をぐるぐるするだけじゃ簡単に治らないんだけど。
「コホン、ロン君あなたは治癒魔法について何も知らないようなので、説明させてもらいます」
エメリアさんの講義が始まった。てゆーか村長も重役達も静かに聞いてるな。
「医者というのは大きく二つに分けられます。治癒魔法が使える者と、使えない者にです。割合としては使える者が全体の一割。相当貴重な人材です。あなたもその一人です」
ふむ十人に一人なら確かに珍しい。
「そして治癒魔法の利点は二つ。一つは薬などよりも早く完治すること。もう一つが魔物に負わされた傷でも治療できるこです」