02
僕は今、馬よりも速い速度でおんぶされながら移動している。金髪で強くて美人でいい香りのするキリカさんに。エメリアと呼ばれていた女の人も、平然とついてきている。なんだこの二人組。やっぱり都会の人ってすごい。
「なぁ、あとどれくらいで着く?」
ぼくを背負いながら息も切らさず聞いてくる。
「もうすぐ近くまで来てます。右に見えるスーンの大石を曲がれば、ほら見えました」
「あれか。……妙だな、夜中にも関わらず明かりが多い」
「ほんとですね。なにかあったんでしょうか」
僕とキリカさんの二人で不思議がっていたらエメリアさんが
「村の子供が攫われてるのに、まともに寝てるわけないでしょう」
そっか。
夜が明けて。村長や村の重役達が話し合いをすることになった。
「このたびは、ロンを助けていただき大変ありがとうございます、お二方」
「いや、気にしないでくれ。見過ごすこともできないからな。それより人を探しているんだが……」
「このような村では、まともなお礼もできませんが、ぜひゆっくりして行って下さい。」
「いや、だからっ」
「わしの孫、まだ独り者なんですがどちらか嫁に」
「話聞いてんのかじじい」
村長ボケ進んできたな。
「失礼ですよキリカ」
うぐっ。エメリアさんに怒られ、そんな声が聞こえてきそうな苦しい顔をしているキリカさん。エメリアさんの方が上の立場なんだろうか?
「村長さん、私たちはギルバートという医者を探しています。この村にいると伺ったんですが本当ですか」
「うむ、確かにギルバートならおります。誰か、あやつを呼んで来い」
「村長…………ギルの奴なら半年前に死んだじゃないですか」
「しっ死んだだと」
「本当……なんですか」
「ああそうだ。はやり病でな、長く闘病してたが逝っちまった」
キリカさんとエメリアさんは、茫然としている。よほど想定外だったのだろうか。
しかし死んだのは、半年も前なのに誰に聞いたんだか。
「エメリア、すぐにここを発とう。医者がいないのなら長居する理由もない」
「そうね……時間もないし早く行きましょう」
もう行くのか。残念。都会の話とか色々聞いてみたかったなぁー。しかしこんな田舎の医者に何の用なんだろうか。
「最後にもう一度聞かせて下さい。この村に医者はいないんですね」
「いや、医者ならいるぜ」
「はぁ? さっき死んだって言ってただろ」
「ギルバートは確かに死んだが、今はその息子が引き継いで医者を続けている」
「ぜっ是非その息子さんに会わせて下さい」
エメリアさんは、最後の希望に縋り付く。そんな声で頭を下げていた。
「会わせるっつうかもう会ってるだろ」
「えぇっとどういう意味ですか」
「あんた達が助けた子供がギルバートの息子でこの村の医者だよ」
そうです僕が医者なんです。