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 鼓舞させ、さらなる実力を引き出さんとしている。

 それでも、入屋と明石が顔を上げない。上げられないのだ。必死に喰らい付いても広がっていく点差が、自分を追い詰め、どんどん意識が深く沈んでいく。それは、伊月も経験している――しかし、彼らは違う。

(……独りじゃないんだ)

 伊月は周囲を見渡し、前を見た。過去が瞳に映る。独りで戦っている自分がそこにいる。孤独に自分を見失った背中を見て、伊月は謝った。助けてあげられなくてごめん、と。

 城山高校にポイントが入り、ボールが伊月のほうへと転がって来る。鼓膜を劈きそうなほどに重なる声援が伊月の周りだけ、徐々に収まっていく。周囲が声援を止めたせいではない。そう聞こえてしまう空間が、まるでここにだけ存在しているかのように、声が、音が、消えていく。

 転がってきたボールを二人の選手が拾いに来る。疲労困憊、今にも倒れてしまいそうな酷い顔を俯かせながら、入屋と明智がボールのほうへ、フェンスのほうへと近付いてくる。立ち止まり、二人が同時に拾い上げて顔を上げた瞬間、二人は伊月を見つけて動きを止めた。瞳の奥の炎が、今にも消えそうだった。

 伊月は、世界が止まったかのように思えた。

 二人の間の、自分の過去の後ろ姿が陽炎のように揺らいでいる。

 僅かな、奇跡の時間に、伊月は必至に考えた。

 あの時の自分は、どんな言葉をかけてもらいたかったのだろうか。

 あの時の自分は、どうしてほしかったのだろうか。

 それが、伊月は今ならわかるような気がした。

 ここにはかつての自分になかったものがある。同じ目標を持った仲間がいて、応援をしてくれる仲間がいて、隣にはライバルと言える存在がいる。独りではない。この場で彼らを応援する人たちも、一緒に戦っている。その中の伊月もまた、同じように戦っている。

 戦うことができる。

 同じ舞台に上がれなくとも。

 時が動き始めるその間際、伊月は二人に向けて、過去の自分に向けて、力強く言葉を送った。


「決めてこい」


 直後、声援が再び鼓膜を劈き始める。その中で、伊月は笑みを浮かべた。二人はきょとんとしていたが、徐々にその顔に生気が漲ってきた。鋭い眼光が蘇り、その奥で、雄叫びを上げるかのような炎が燃え盛った。

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