表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/18

2話

ここは市内の割烹店【正月亭】

元ユキオの祖父母の家、現ユキオの家から一番近いご飯処……といっても車で来る距離という時点でいかにここがユキオの家から離れており、ユキオの家がど田舎であるかわかるであろう。

カウンター席に机の席に御座。

周りにはそして木簡に書かれたメニューが壁につりさげられている雰囲気はいかにも【和】といった雰囲気を出している。

あのダンジョンを発見し、そのダンジョンの周囲を何とか整頓してから約1か月後

ユキオはこの店でとある男と待ち合わせをし、そして話し合っていた。



「……で、ちょうどいい販売先は見つかりましたか?

 もしくは何かいい伝手みたいなのは。」



そう、待ち合わせをした人は不動産屋の人。

名前は【スズキ】。

全国の鈴木さんには失礼なことだが、ユキオ個人としては見た目のできるオーラのわりに名前が平凡すぎると思ったのは内緒だ。

別に神鎖スレイプニル極星ルシファーって名前に改名しろとかは言わないが



「あ~、その件ですが。

 やっぱり、都市から電車がほとんど来ないこのあたりともなると、どんなにダンジョン開発に熱心な企業でも食いつかないみたいでして……

 ましてや最近では、人工的にダンジョンを生み出す方法やダンジョンを移転させるすべなんかも出てきてますからねぇ。

 天然の入りやすいダンジョンってだけで、あのダンジョンを買い取ってくれる世の中甘くないみたいですね」



内心、少しだけあのダンジョンが生えてしまった土地がの実は伝説級の超レアダンジョンで大企業に買われて一気に大金持ちになるなんて夢みたいな展開を期待していたのだが、世の中どうやらそんなに甘くはないようだ。

つまりこのままだと……



「……はああぁぁぁぁぁ、土地売るのにむしろこちらが出費するなんて嫌だなぁ……」


「おや?別に売らなくてもそれを有効活用すればよろしいのでは?

 家の敷地に温泉が湧いたら、温泉宿にする。

 金鉱脈が湧いたらそれを掘りに行く。

 そして、ダンジョンが湧いたら……どうです?簡単なことでしょう!」


「……あんたそれ、マジで言ってるのかよ」



思わずユキオの口調は崩れているが、スズキはむしろひょうひょうとしたままだ。

ユキオはとしては多少足は出ても、畑に生えたダンジョンを解体業者に依頼してダンジョンを閉鎖してもらい、そのまま売り払うつもりでいた。

なぜなら、このままだとダンジョン管理義務とやらで、あの畑と家を売り払わない限り、いつまでもここから引っ越すにも引っ越せない。

そしてこの辺だと仕事が見つからず、いくら祖父母が多少金銭を残してくれていてもこのままではいつか金が尽きる。

いくら祖父母がなくなったことで心の休憩期間が必要だったとはいえこれ以上無職期間を続けるのは流石に問題であろう。



「あのさぁ、スズキさん?畑にダンジョンが出来たからって

 いきなり素人が、特に自分みたいな特に特別な戦闘経験も山岳経験も豊富でない一般人がダンジョン探索者になるのは無茶じゃないか❔」


「何をおっしゃいますか!

 どんな探索者も初めは素人です!

 それにダンジョン探索者需要は現代でもかなり大きいものですから!」



そう、スズキはユキオにダンジョン探索者になることを進めていた。

ダンジョン探索者……それは現代にいまだ残る冒険とスリルあふれる職業。

おのれの肉体と経験、勇気に頼り未知の世界へと足を踏み入れ、そこで手に入れたもので生計を立てる。

それと同時に危険性も高く、重傷者もよく出るが……それでも人々はダンジョンに挑むのだ。

そこにロマンがある限り。



「……それ、ぶっちゃけ聞こえはいいけどあれ、まともな職じゃないよね。

 調べたところ、怪我も多いし事故死も珍しくないし、原因不明の職業病も多い。

 労災もほとんど効かないし、ローンも無理、収入だって不安定だし、ダンジョン自体突然消えることも頻繁。

 企業に雇われている探索者なら違うだろうけど、後ろ盾もノウハウも知らない素人がポンと初めて始められる職業じゃない気がするんだ。」



何この酷い職業とも言いたくなるダメラインナップ。

正直、これならコンビニのレジ打ちのほうが安定もするし安全も保障されてる。

迷宮病に掛かる可能性もないし、準備期間も準備費用も免許もいらない。

まあ、あくまでこれは個人が勝手にダンジョンに潜って生計を立てようとする場合だ。

企業勤めの探索者の場合、定期健診やら武器装備やらも企業持ちだし、複数のダンジョンを保有していることが常だから、万が一ダンジョンが1つ2つ謎の消失を遂げても問題ないのは確実だ。

しかも収入もかなりよく、危険手当こみこみの課長相当待遇とのことだ。

なんとうらやましい!



「うん!それほどきっちり調べるほど勉強熱心なユキさんならば、きっと探索者としても大成しますよ!

 大丈夫です!ダンジョン探索者はなる前に【ダンジョン探索免許】を取れば、その時の講習で1通りダンジョンのイロハを教えてくれますし。

 あ!なんなら私が持ってるダンジョン探索者についての本をお貸しましょうか?」



しかし男スズキ、それでもダンジョン探索者を進めてくる。

そして、ふとユキオが思ったことを口に出した。



「……そんなに探索者にこだわるなら、スズキさんが探索者になってうちの畑にあるダンジョンへと潜ればいいのでは?」


「っくぅ!!それができたらどんなによかったことか!!

 うう、私が【魔力アレルギー】持ちでさえなければと、どれだけおのれの体質を呪ったことか!!

 もしそうでなければ、今頃私はあの未知で浪漫な空間を思う存分歩き回り、様々な迷宮生物と戯れ殺し合い、かっこいい魔法を覚えてババっと……」



どうやら、藪蛇だったらしい。

スズキはどうやら相当悔しいようで、机の上でおのれの手掌に爪痕が残りそうなほど強く握りしめ、己がもしダンジョン探索者になったらという妄想をたくさんその口から垂れ流し始めた。



「やっぱり私が使うとしたら、剣一択でしょうね!

 銃は日本だと許可書が必要な割には迷宮魔力で威力が上がるわけでもないし、魔銃は弾代や誤射が怖い。

 槍は地味ですし、そもそも長物よりガツーンと接近して戦いたい!

 ああ、けど魔法も使いたいですねぇ!陰陽系で渋く決めるか、けどインド系の秘術は派手でいいし、歴史と伝統あるイギリスの魔女系列もいいですよねぇ~」



どうやらこの人、俗にいうダンジョンマニアというやつのようだ。

ダンジョン関連のことが大好きで、自分が探索者だったら渡日や妄想する類の、なのに体質的には不適合という。

……とりあえず分かったことは、今度からこの人相手にうかつに探索者になればという話を振るは禁句だということだ。

さて、ユキオがどうスズキのマシンガン妄想トークを止めるかと困っていると転機が来た。



「……とりあえず、ユキ君は【ダンジョン探索免許】を取るくらいならやってみてもいいんじゃない?」



そう言ってきたのは、ここの割烹店の店主のキクカさんであった。



「いや、そうはいってもこちらにも都合が……」


「そうはいっても今時間があるのは確かなんでしょう?

 確かにダンジョン探索講習とやらを受ける場所は遠いみたいだけど……

 それでもここの所、ずっと家にこもりっぱなしな状態よりは少し出かけたほうがいいとおばさんも思うわよ?

 あ、そのダンジョンとやらに問題があったら1か月くらいの間ならおばさんが見張ってあげるから!」


「あ~、いや、そうはいっても……」


「というか、おばさんとしてはユキ君にはちゃんとダンジョンに詳しくなってからでないと、どうするか決められないと思うのよ~

 ぼっと土地が売れるか売れないか、業者を呼ぶか呼ばないかよくわからないで待つよりはそういうところへ行って情報を集めて、それから詳しい話を詰めたほうがいいでしょう?」


「おぉ!まさしくその通り!

 いやぁ、女将さんは美人な上に清明であられる!」


「あら、褒めてもお茶とお通しぐらいしか出ないわよ?

 あ、ユキ君はジンジャーエルでよかったわね」



そういって、キクカがスズキにはお茶をユキオにはジンジャーエールの御代わりを出してくれた。

ユキオにとってキクカは少し恩を感じつつやりにくくも感じていた。

キクカはユキオが子供のころからこの割烹店を営んでおり、キクカには子供がおりユキオは引っ越すまでその子とは友達であった。

今はすっかり疎遠になってしまっいる上、キクカにその子が今どこにいるか聞いても「それはこっちが知りたいくらよ!」とぷりぷり起こりながら答えるのみであった。

簡単に言えば、幼いことお世話になった友達のお母さん的存在でありながらかなり親しいご近所さん、そんな関係がユキオとキクカの関係である。

なお、祖父母の葬式の時には今は亡き祖父母と父母と仲が良かったということでいろいろ手伝ってくれたためそういう意味でも頭が上がらなくもある。



「……まぁ、おばさんがそういうなら、受けるだけ受けてみるか。」



だからこそ、女将キクカにそういわれればなんとなく断りにくいと思ってしまうユキオであった。

キクカはユキオが葬式などで手伝ってくれた際、ユキオが何か礼をしようとしても受け取らず「なら、せめて頻繁にうちに来てお金を落していってね♪」というだけであった。

それ以降この店には頻繁に来るようにしても、来るたびに何かしらお得意様料金として値段を割り引かれてばかり、ぜんぜんお礼を返した気になれない。

だから、まぁちょっと面倒だけどその免許を取ることで借りが少しでも返せればとか思い受けることを決めたのであった。



「……ところで、ダンジョン探索免許とやらはやっぱりとるの難しいのか?

 今から勉強はじめたほうがいいの?

 空間魔導士資格とか合格率がすごく低いと聞いたことが……」


「え?いや、空間魔導士とかと違ってダンジョン探索免許は講習所いってすぐですよ?」


「え?」


「え?」









――――そして、2週間後!そこには講習所から【ダンジョン探索免許】とその他道具をもらって帰ってきた

ユキオの姿が!!




「いやいやいやいや、はやいはやいはやいよ!運転免許より早くて楽ってどういうことだよ!!

 ほんとにこれ国家免許かよ!

 講習もボーっと聞き流しても大丈夫でがばがばだし、この免許本当に大丈夫かよ!」


「いやぁ!これでようやくまともにダンジョン探索できますね!

 さっそく、ダンジョンに入る準備をしましょう!!

 とりあえず、ここにお勧めのダンジョン用防具メーカーと武器をマークしておきましたよ?

 あ!魔術は使えますか?もし、特にこだわりがなければ私がおすすめの魔術本を紹介しますが……」


「うるせぇ!

 なんでお前は俺がダンジョンに入ることを前提に話してるんだ!

 あくまで免許を持っただけだわい!!」


「えぇぇぇええ!!

 折角免許を持った上に体質がダンジョン適正アリと出たらこれはもう入らなきゃ損でしょう!!

 ほら!見てください、このミスノとかスポーツメーカーとしても有名ですしとってもおしゃれで普段着としても……」



やけにテンションの高いスズキとほんとにあっさりと免許が取れて焦り、そしてもはやため口で話すユキオ。



「ふぅ、ユキ君が無事ダンジョン探索免許を取ってくれてよかったわ~。

 そうすれば、いずれあそこのダンジョンを探索するだろうし、ここで働くことになれば若者がこの辺に残って……ごほん!

 とりあえず、祝い用に今日は特別にただで料理をおごってあげよ♪」



残念ながら、この場においてユキオの考えに同意してくれる味方が存在しなかったのが今回のユキオの敗因であろう。

そんな二人を見ながら、一人裏でほくそ笑む女将の姿がそこにはあった。

みなさん、この作品の主人公年齢設定変えたいんだけどどう思う?


なお、変えた場合まだ見ぬヒロインの残念度と年齢が下がります

是非感想にて教えてくださるとうれしいです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ