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11話


「まさかこの図書館に、地下があるとはなぁ」


「この図書館にはこの辺の地方一帯の本という本が集まってきますからね。

 ……一応、起源が大1次世界大戦期に作られた防空壕という意味では相当古くはありますが」



こつりこつりとユキオはエンナに連れられて図書館の階段を下りていく。

階段を下り切るとそこには無数の本棚に並べられた蔵書。

田舎の図書館にあるとは思えないほどの圧倒する本の数とその中に無数の魔導書もあった。

そうしてそれらの魔導書はどれもがピリピリといまだに強い魔力を発しているという事実になぜか言いようもないプレッシャーのようなものをユキオは感じた。



「……元気な魔導書ですね」


「環境がいいですから。

 あ、ごめんなさい冗談です。

 けど、こういう職業がらこうでも考えておかないとやっていられなくて……」


「あ、こっちも嫌味っぽいこと言ってすいません」



エンナはこのホラーな雰囲気な場所であることに、ユキオも自分の軽率な発言に謝る。

ユキオは謝りながらも、探索者の癖ゆえかつい周囲に魔力感覚をのばしてしまう。

もちろん、通常だとダンジョンでもないと魔力感覚を伸ばしたとしても周囲を探ることはできない。

しかし、なぜかここではダンジョンほどではないが少なくない距離を魔力感覚で伸ばすことができた。

その中でもとある古書の一つに自身の魔力感覚が触れる触れないかの瞬間、ユキオの魔力感覚がしびれるような感じがする。



「あ!だめです!

 あんまり魔力感覚をここで伸ばすのは、体によろしくありません。

 触るのも手袋とつけたほうがいい位です。

 出ないと大変なことになりますよ?」


「……大変なことって?」


「最悪発狂します。

 ……あ、探索者免許持ってるならどれも所持携帯することを許される程度の魔導書ですから、触れただけでアウトってことはないですが。

 やっぱり、こういうのは気持ち悪いですよね?」



う~ん、正直いろいろと問題しか感じない。

ユキオはこの一連の出来事に非常に頭の痛い思いをしていたが……



「いやいや、こう見えても自分もあなたもダンジョン探索者。

 こういう魔力での体の被害者とか考えてられない職業でしょう?

 だから、いちいちそういうのを気にしないでください。

 それに一緒にこれかダンジョンを潜る仲間、そういうしがらみは無しで行きましょう」


「……はい!ありがとうございます、ユキオさん!」



が、ユキオはここは一ミリも嫌がる素振りを見せずにエンナに向かってそんなことを言った。

ユキオとて、ここ最近のいろいろのおかげで魔力による弊害や少しくらい変わった女性はずいぶんと耐性がついたのだ。

別にエンナに対しての好感度アップとかそういう下心を持ったからこんな強がりを言ったわけではない。

ないったらないのだ。



「あ、せっかくならこういう場合にいい魔力耐性装備とか私知っているんですが。

 ユキオさんもどうですか?」


「ははは、では今度来た時にぜひ教えてください。

 それより、お互いに今は目的のことに集中しましょう」



そうして、ユキオはこの部屋のさらに奥にあるそれに目を向ける。

それは本棚のさらに奥にひっそりとたたずみ、周囲の魔導書よりさらに強い魔力を発している。

床には無数の幾何学的な模様が描かれ、周りには複数の物々しいダンジョンキーパーが設置されている。

空間が歪み、その奥に見えるはさらなる蔵書みえるそれ。


そう、この図書館の地下にあったのは【S県立図書館地下ダンジョン】への入口がそこにはあった。






あれから数時間後。

ユキオは図書館ダンジョンをエンナとともに進んでいた。

このダンジョンはユキオの家に裏にはにあるものとは違い、なんと俗にいう屋内型や石造り迷宮といわれるダンジョンの亜種らしく、ダンジョンの中の見た目はなんと図書館風。

特徴としては大理石でできた床と天上に、一面の本本本の壁が無数に張り巡らされているのが特徴であった。

しかし、一面に並んだ本と本棚は、その実態はどれも形だけの物らしい。

試しに一冊読んでみようとするも、どれもまるで本棚と一体化しているかのように手に取る事すらできない物ばかり。

無理やり引きはがして読もうとしても、ページをめくることができないのがほとんど。

偶然手に取れるものも中身は白紙でここが自分の知る図書館とは別物だということがよくわかった。



「……ん、この本棚の角に魔物が2体待ち伏せしている。

 どうする?流石にさっきから連戦続きだ。

 ここはいったん戦闘を避けるためにも迂回するか?」



そんな構築物な見た目のダンジョンではあるが当然魔物は出てくる。

無数の本棚のせいで視界は通らなず、奇襲を受けると左右にそびえたつ本棚がこちらの回避行動を妨害がする。

さらに、ユキオの獲物である槍であるためこのダンジョンではことさらに振り回しにくいのが問題であった



「いえ、行きましょう。

 流石にここを迂回するとかなり前の場所まで戻されてしまいます。

 ……前方に立つユキオさんにはまた負担をかけてしまいますが……」


「いや、こちらはそちらさえよければ構わない。

 それじゃぁ、行くぞ。

 エンナさんも無理しない程度で構えてくれ」



エンナの力強い返答にユキオも自身の腹を決め、己の魔力を静かに練り直す。

ユキオは自身の練り直した魔力を細長く放出し、まるで触手のように敵がいるであろう本棚の角先へとのばした。



「……ヒット!

 エンナ、来るぞ!!詠唱を始めてくれ!!」


「はい!!」



ユキオは自分の伸ばした魔力が敵魔物にぶつかったことを感知した瞬間素早く槍を構えた。

本棚の先に隠れていたはずのその魔物は血のように赤い手であった。

それに肉はなく、大きさも人のそれよりもはるかに大きい。

さらにそれは羽根も糸もついていないのに宙に浮かび、2つの骨でできた両手がユキオたちに向かって文字通り飛びかかってきた!



「……っち!!」



ユキオは舌打ちをしながら、その魔力を使って宙に浮かぶ正式名称≪イカイベニシュワンコツモドキ≫通称【紅死骨手】と呼ばれる魔物に向かって槍をふるう。

今までまともに生き物型以外の魔物と戦ったことないことはもちろんだが、なにより宙に浮かびながら襲いかかる魔物という敵をどうにかする術をまだユキオは確立していなかった。

それゆえユキオは自在に宙に舞う骨に向かったやや引き気味に、片方は魔力による拘束でもう片方は槍で叩き落そうとした。



「……っげ!!」



しかし、やはりなれない相手だったからだろう。

ユキオのやりはこの閉所空間では満足に震えないにもかかわらず、相手の魔物は移動が制限されない程度には小さいこともあったのだろう。

片方の手は無事にユキオの放った魔力の糸によりからめとることはできたが、もう片方はひょいとユキオの槍の一撃をかわしそのままユキオめがけて突っ込んできた。



「……が!!」



そうして、その【紅死骨手】の大きさは人のそれよりもやや強大だ。

その魔物はユキオの首を飛翔、そのままがっちりとその指を首に絡みつかせ……



「~~~~!!!!!」



ユキオの口から声にならないうめき声が上がる!

【紅死骨手】に触れられた皮膚にまるで酸を掛けられたような沁みる様な痛みが走り、ジュウジュウという嫌な肉が焼ける音が耳に聞こえる。

その苦痛から逃れようにも、相手の握力がユキオの呼吸と冷静な判断を妨げをその絞首攻撃から逃れるのを妨害する。

さらに、集中力が切れてきたからであろうか、ユキオが捕まえていたはずのもう一方の骨手もユキオの拘束魔法の魔力糸を溶かし、再びその身を宙に浮かせていた。

こちらから奇襲したにもかかわらず、このありさま、流石にユキオは死すら覚悟をしたが……。



「ありがとうございます、時間は十分稼げました!!

 いって、【地魔(ツトゥ)の歯】!!」



あくまでそれはユキオが一人でならの話であった。

エンナの杖から放たれたその魔力弾は、まるで獲物を狙う蜂のごとく宙に舞う【紅死骨手】に向かって追うようにぶつかっていった。

そうしてぶつかった瞬間、ガプリ。

エンナの魔法はまるで相手にかぶりついたかのようにその【紅死骨手】を削り倒した。



「はぁぁぁぁ!!」



その【地魔(ツトゥ)の歯】と呼ばれる魔弾はそれだけで止まらず、そのままユキオの首の方面まで飛来。

ユキオの首を絞めていた方の【紅死骨手】も自身のピンチに気が付いたのだろう。

急いでユキオへの拘束を解き逃げようとするも時すでに遅し。

あっという間にその魔法を宙を飛ぶ魔物に追いつき、ズパリともう片方の魔物も葬ったのであった。



「だ、大丈夫ですか!ユキオさん!!」


「っけっほ、けほ!

 あ、ああ、大丈夫大丈夫、このぐらいなら自分の回復魔法で……っくふ!!」


「ああ、む、無理してしゃべらないでください!!

 あ、私、回復はできませんが麻酔魔法なら使えますから!!」



そういうとエンナは優しく杖をユキオの首に近づけると、ポゥとその魔力を放出する。

すると先ほどまでの痛みが嘘のように引き、冷たくも気持ちいい感触が魔物につけられた傷の痛みをやわらげた。

これならユキオも痛みで気を紛らわされることなく集中して回復魔法を使えるであろう。



「え、えっとところで。

 その……痛みをやわらげてくれたのはうれしいんだが……

 いささか、近すぎるというか……」


「え、あっ!!

 きゃ、きゃぁ、す、すいません!!」



いえいえ、むしろごちそううさまです。

勿論そんなことは直接口に出さないがユキオとしては、むしろその暖かな感触と匂いにむしろお礼を言いたたかったのはここだけの話である。



「……み、見ましたか?」


「え?」


「い、いや、なんでもありません!

 そ、それよりもユキオさんはすごいですね!!

 特殊な魔導具なしでその槍捌き!それなのに同時に魔法を使えるだなんて、尊敬しちゃいます!!」


「いやいや、エンナさんほどじゃありませんよ。

 見たところ結構珍しい魔法みたいですけど……そんな強力な魔法を使えるだなんて。

 もしかして自分はいらないかな?な~んて……」


「そんなことありませんよ!

 ユキオさんのおかげでいつもよりもずっとずっと探索がサクサクいってます!

 その、だから、もし依頼が終わっても一緒に潜ってくれたら……い、いやなんでもありません!」



かーわーいーいー!!

その恥じらいと謙虚さと乙女あふれるエンナの対応がユキオの琴線に触れまった。

ユキオは今いろいろと感動していた。

かわいくスタイルもよく、どこぞの彼女とは違い、控えめながら力強くも頼れるダンジョン仲間。

どこぞのなまけギャンブル好きと違って、ダンジョン攻略に対して合う意見や方針。

さらに恰好も年齢考えろメカニック魔法少女スタイルではなく、全身をすっぽりと覆う地味ながらもローブに杖というオーソドックスな魔法使いスタイル。

ユキオは思う、この依頼以降も彼女と一緒にダンジョン潜れたらな~と。

腕も確かで性格も見た目もよし、今は図書館の事務員がメインだからと言ってるが、もし探索者を主職にしてくれるならうちのダンジョンを紹介するんだけどなぁ。

なんて雑念を持ちながらユキオは、その日はその図書館ダンジョンをエンナとともに攻略し続けたのであった。





……自分の後ろから注がれるギラギラとした視線と怪しげな薄ら笑いに気が付かないまま……







遅くなってすいません

いろいろ忙しい時期ですので許して!

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