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8話

――――ザクリ、ザクリ



「ん~、魔貝の反応なしっと。

 平和だね~」



トラがぽつりとつぶやき、ユキオは無言のまま歩を進める。

砂浜を歩く二人組の男女といえばロマンスが湧きそうに聞こえるかも知れない。

が、片方は槍持ち、もう片方は20代後半にしてSF魔法少女ファッションといった瞬間とたんに覚めてしまうのは仕方がない事であろう。

あの後、とりあえずユキオはトラを説教した後トラができる魔法や戦闘方法を改めてチェック、それで改めて探索を開始することにした。

まぁ、ダンジョン探索といっても基本ここでのダンジョン探索は入口への帰還のしやすさのこともあり海岸線をまっすぐに進むだけの作業なのだが。

今回の今のところの探索成果は貝殻6枚、一人当たり3枚というなかなかしょっぱさを誇っている。



「……これ、思ったより結構暇な作業だねぇ。

 というか、ここダンジョンの魔物遭遇率低めなんじゃない?」


「そうなのか?

 自分はここ以外は教習所のダンジョンしか潜ったことないからわからんけど」


「私もそこまで詳しいわけではないけど、都内のダンジョンに潜った時はもう少し出てくる頻度が高かった気がするなぁ。

 これ、何かしらの撒餌系アイテムの持ち込みを考えてみたらどう?」


「……トラ、お前あれのネットでのレビュー見て言ってるのか?あれ見てるとやばい事しか書いてないんだが。

 って、あ。磯だ。

 砂浜よりも敵が出てくる確率が高いから気を付けろよ」



そうしてユキオがまっすぐ歩いているとその先は今までの砂浜海岸とは違う、でこぼことした岩場が見えてきた。

ユキオはそれに意も介さず、岩場へと足をかけた。

しかしその岩場は相当隆起が激しく移動には不向きな場所であり、さらにはいくつかの海へとつながる穴もあいている。

もし仮にここで足を踏み外した場合、よくてとがった岩に体をぶつけて怪我を、悪ければ海の底へと真っ逆さまになってしまうであろう。



「……ちょっとここを迂回しない?

 こんなごつごつしたところだと戦いにくいと思うんだけど……」



なお、トラは当然そんな場所と通ることに難色を示した。

そりゃそうだ、今まで平坦な柔らかい砂場という歩行にも戦闘にも絶好の環境で移動していたのに、なぜわざわざ好き好んで足場の悪い場所岩場を通らなければならないのか。



「いや、けど砂浜よりも磯のほうにが魔物の出現率がいいんだ。

 しかも、いろいろと魔物の出現のしかたが分かりやすいしな。

 特に迷宮ガニやヤスデは地面が砂地だと、魔法を使って地中を移動して下から奇襲してくるから面倒なんだよ」


「えぇ~……というか、高速地中移動や擬態の魔法が使えるレベルの迷宮ガニってかなりやばい奴じゃないですか~。

 それに砂浜での戦闘なら絵になるけど、こんな岩場がダンジョン初戦闘なんて美しくな~い。

 後、ここまでこぼこしたところを歩くとなると、正直腰にきそうで怖くて……」


「びっくりするぐらい、しょうもない理由だな。

 それにまだまだ魔法少女スタイルがいけると思ってるくらいには若いんだろ、だから頑張れ少女(笑)」



ユキオは取り合ず、トラの意見を却下して磯の方へと進むことを決意する。

なお、磯での魔物出現率云々はあくまでここしばらくこのダンジョンへ潜っていたユキオの経験則ではあり、具体的なデータと取ったというわけではない。

が、それはおそらく正しいであろうことはユキオは確信していたし、その核心はほどなくして現実のものとなった。



「……ん。さっそく魔物が来るぞ、準備しろ」


「えっ?まだ私の高性能の魔物警報機がいまだに反応してな……

 あ、本当だ!てええぇぇぇ!はや、気付くの早くない?

 高性能警報機よりも反応がいいってどういうこと!」


「奇襲がくるってあらかじめわかってれば察知はたやすいってことだ。

 それにダンジョン講習で習っただろ、警報機はあくまで目安、最低限自力で魔物の気配を察知できるようにしなさいって。

 いいから本当に来るぞ!構えろ!!」


「いやいやいや!ユキ君、その理屈はおかしい!

 もしそれがみんなが誰でもできたら、今頃警報機は誰も使わな……

 って、うわ!しかも反応複数!これ、もしかしてピンチ!?」



トラがわたわたと目に映る複数の魔物の反応を驚いている間にも、ユキオはすでに槍を構えとある岩間の岸辺の一角に視点を定めていた。

その岩場に強めに波がぶつかり、潮の粒が宙に舞う。

その舞い上がる潮に紛れて1匹の迷宮ガニが海の中からポーンと飛び上がってきた!

そして、その時になってようやく鳴り始めたユキオの魔物警報機。

もし仮にユキオがこの魔物警報機に頼りきりで魔物感知をしていなかった場合、間違いなくこのカニの跳躍接近はユキオたちの不意をつけていたであろう。



「……が、わかってればどうということはない!」



しかし、それはあくまで仮の話だ。

ユキオ自身、初めの探索で奇襲を受けて以来この警報機がいろいろと遅いのは身をもって理解している。

それゆえすでにユキオはその蟹の跳躍に合わせて、魔力で強化された驚異の脚力で同じ高さまで跳ね上がっていた。

そして、宙に浮かぶカニの目の魔に合わせてちょうど飛び、その蟹の脳天めがけて槍をふるう。



「【勇猛(プロフェス)】!!」


――――!!!!



その魔力の奔流がのった一撃を脳天に受けたカニはそのままあえなく墜落。

そう、下の固い岩場へと思いっきり叩きつけられたのであった。

迷宮ガニの10キロを超えるその巨体が固い岩場にぶつかってもなおバウンドしていることからその衝撃は相当の物であろう。



「【手枷(シャックル)】!!」



そして、当然その隙を見逃すほどユキオも甘くはない。

ユキオは手首から白い魔力の鎖を岸へと伸ばすことで、飛び過ぎによる海中へのダイブを阻止。

さらに【勇猛(プロフェス)】による魔力の噴射と地面につながった魔力の枷【手枷(シャックル)】を思いっきり身体強化で手繰り寄せ、その勢いのまま先ほど一撃を加えた迷宮ガニのもとへ強襲。

止めと言わんばかりに弱点である脳天を貫き、結局ユキオは迷宮ガニから1発も攻撃を受けずにしとめるのに成功したのであった。

流石ここ1か月ほど迷宮ガニを日夜狩っていた男、なかなかに慣れた動きであった。



「お、お見事!ユキ君!!」


「アホ言ってないで、構えろ!!

 そっちにも一匹いってるぞ!!」


「ええええええ!!!!!!!」



1匹目を倒したのもつかの間、トラがユキオの言葉と魔導機構の視覚誘導に従い目線を動かすと、そこには猛スピードで岩場をかける2匹目の迷宮ガニの姿があった。

その速さ、ここが足場の悪い岩場であるはずなのにすいすいと流れるかのような滑らかな動きであった。

向こうが意図してか偶然かはしらないが、今回の迷宮ガニによるの強襲は、飛び上がって上から来る蟹とそのまま岩場を這い上がってこちらへ強襲してくる蟹の2方向同時奇襲作戦であったのだろう。

なお、その2本の矢のうちの1本はすでにユキオが仕留めて失敗に終わっているわけではあるが。



「落ち着いて……落ち着いて……!!」



しかしながら、それでも奇襲は奇襲。

トラは己に向かってつっこんで来る敵を視野に収めつつも何とか平静を保とうとする。

幸い一番近くに出現した敵はユキオがすぐに仕留めてくれたので、今こちらに来ている迷宮ガニはまだだいぶ距離がある、これなら詠唱を挟んでも十分間に合うはずだ。

そして、覚悟が決まったのかトラは己の魔力を高め、狙いを定める。



短縮詠唱(ショートスペル)!!

 電弧飛火!【破電火(ガルバニックファイア)】!!」



トラの指先から魔導機構の丁寧な魔力誘導により、その魔法がまっすぐに迷宮ガニへと飛んでゆく。

その魔力によってできた電気のように素早く火のように撃烈な一撃がその迷宮ガニへと襲い掛かった!



「よし!やったか!?」


「まだだ!油断するな!!」


「……え?    あ。」



しかし、その魔法の電炎は迷宮ガニをしとめるまでには至らなかった。

正確に言えば当たり所が悪かったのだろう、トラの放った魔法は迷宮ガニの鉄より固い爪の部分に当たってしまったのであった。

トラがそれに気が付いて追撃の魔法を唱えようとした時にはすでに迷宮ガニのほうが一手早かった。

トラの眼には迷宮ガニが飛び上がりその爪を己の首元めがけて振り上げている姿が映ったのであった。



(あ、これ、死んだわ)



つい先ほどやった自爆とは違う、明白な殺意による殺傷、迫りくる凶刃、走馬燈とともにスローに見える光景。

トラは次の瞬間自分の身に起こるであろう惨害に思わず目とつぶり……



――――ごちん☆


「いった!いった……いたぁぁぁぁぁぁ!!!」



まるで顔全体をフライパンでたたかれたかのような衝撃!

おもわず、その衝撃にしりもちをついてしまう。

恐る恐るトラは己の首を触れてその感触を確かめる、どうやらまだ自分の首は繋がってるようだ。

これはいったいどういうことだ?自分はあのカニの爪の攻撃を受けたのでは?もしや、痛みを感じる前にもう死に戻りをしたのか?それならばあの顔面への強い衝撃は何だったのか?

様々な考えがトラの脳裏に浮かんだが、目を開けるとその答えはすぐに出た。



「これは……ユキ君の魔法?」


「お~い!トラ、無事か!

 何か大怪我してないか!!」



そしてトラの目に映るのは、白い網とトリモチの間の形状の魔力にがんじがらめになっている迷宮ガニの姿があった。

どうやら、このユキオの拘束魔法のおかげで迷宮ガニはまともに爪をふるうことができず、自分の顔面(プリティフェイス)と正面衝突するだけで済んだようだ。



「……ん!ありがとうユキオ君!!

 そして、よくも迷宮ガニ!!!もう絶対に許さんぞ!!

 殻すら残さん!!」


「え、あ、ちょ、色々とま……」


上級詠唱(アッパースペル)!!

 大いなる炎の化身よ!汝の傲慢不遜たるその姿よ!!

 御身の前ではすべてが有象無象で灰燼と化す!【炎王踏武撃】!!」



その言葉とともに、トラの魔力を込めた足による一撃がユキオの魔法によって動けないカニの魔物に降りかかる。

その威力は壮絶の一言!

カニの甲殻をあっさりと吹き飛ばし、周りの岩場にクレーターを作った。



「よっしゃ~~~!!!

 みてみて!!やっつけたよ!!

 どう?なかなか私もやるもんでしょ!」


「……」



やけに上機嫌にトラはユキオに自分の戦果を誇る。

うん、確かにトラはユキオのサポートがあったとはいえ無事に迷宮ガニを撃退することに成功したであろうし、その魔法の威力はユキオの槍の一撃よりもすごいといえるであろう。

……ただし、威力を出し過ぎて迷宮ガニの体をすべて吹き飛ばしてしまってはどうやって稼ぎを出すというのであろうか?



「……うんうん。

 初めてにしては凄い凄い。

 それより顔面の治療してやるからこっちゃ来い」


「ん~~?

 なんか褒め方が雑じゃない?

 もってほめてくれても……って、ちょもう少し優しく!!あぶぶぶぶぶ!!

 じ、じぶんで、自分でできるから!!」



トラの顔にぞんざいにユキオは【迷宮専用治療軟膏】を塗りたくる。

まぁ、ユキオ自身もはじめっからうまく迷宮ガニをスタイリッシュに倒せたとは思ってないので、そういう意味では特に装備も壊さず迷宮ガニを倒しせたトラは初めてにしては優秀なのだろう。

そういう意味では敵をふっ飛ばしたとはいえ収入がギリギリこの治療代マイナス程度に収まっているというのは、初回の探索では装備を壊されて収支が大マイナスになった自分よりは成果としては素晴らしいのではないだろうか?



「ほれ、治療終わったぞ」


「あ、あ、あ~、これやばい、私はMじゃないのに!!

 けど、けど、何かに目覚めて……!!

 って、あ、あれ?……もうおしまい?」


「……」


「おほん!!

 そ、それよりもまだ私のデバイスだと魔物の反応があるけど、大丈夫なの?」


「え?本当か?

 自分の魔力感覚にも、警報機にも反応はないが?」



一瞬二人の間に何とも言えない空気が流れそうになったが、新たな魔力反応のおかげでそれはすぐに引き締まった。

ユキオとしては自身の魔力感覚にも警報機もうんともすんとも反応しないため、その報告は予想外であった。



「うん、ほんと。

 私の視覚サポートだと、あの岩からうっすらとではあるけど魔物の反応がある」


「ん~?確かにこの岩、うっすらとだが魔貝とも違う、魔物っぽい魔力は発しているなぁ。

 けど別に見たところ魔物が裏に隠れてるってわけではなさそうだが。

 もしかして、これは噂に聞く巨大魔貝?……あ、けどこれべつにダンジョンポシェットとは反応しないから違うか。

 持ち上げるにはなぜか重すぎるし……」


「……」


「トラ?」



ユキオがその怪しい魔力を発する岩に触れてみるも特に反応はなし、

そしてなぜか、無言になるトラ。

すると、トラはなぜか詠唱を開始して……。



「……てい!」


「ちょ!いきなり、魔法を放つな!

 もしこっちに当たったら……って、え!!」



トラが唐突にその岩に向けて魔法を放った瞬間、その岩がすごい勢いで逃げだしたのであった。

さらに言えば、その岩の下から足が生え目もだし、それがどうやら岩に擬態した魔物の一種であったようだ。



「ああああ!!!!あれ、【宝飾ヤドカリ】だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

 ユキ君!!絶対逃がさないで!!」


「お、お、お、お、お、おう!

 と、とりあえず、【手檻(ケイジオブハンド)】!!」



トラのやけに興奮した声に従いユキオが瞬発的に拘束魔法を放ち、それは確かに魔物にぶつかりはした。

しかし、それでもなお相手の魔物はその逃走を止めることなく、動きにくい足を無視して転がるかのように逃げ続けていた。



「……硬い!!こいつ、こっちが槍で攻撃してもまるで足止めにすらならねぇ!!」



さらにユキオがそのまま追いつき槍で攻撃するものの、この魔物には全くと言っていいほど効いていなかった。

ユキオの迷宮ガニの甲殻なら一撃で壊せてる威力の攻撃を食らっても、この魔物はまさに歯牙にもかけず逃げ続けていた。



「ユキ君だめ!!

 そいつには物理攻撃は効かないから……はぁぁぁぁ!!【炎獣王飛爪連脚】!!」



だが、その均衡が崩されたのはトラの一撃が当たるまでのことであった。

明らかに先の迷宮ガニを粉みじんにした魔法よりも威力ある、魔力のこもった飛び蹴りをトラはその魔物に食らわせた。

するとさすがにこの一撃は効いたのであろう。

魔物がぎぃぎぃという悲鳴を上げ、その岩に擬態した殻が破け、その中から、様々な色の鉱石宝石が飛び散ってきたのであった!



「おおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!これは!!」


「よっしゃ~~~!!あたりだぁぁぁぁぁぁ!!!

 もっと、もっと追撃をかけなきゃ!!」



思わず、トラが叫び、ユキオも感嘆の声を上げる。

そう、今回ユキオたちが見つけた魔物は【シホウウミイカイホンヤドカリ】通称【宝飾ヤドカリ】。

岩に擬態した巨大なヤドカリの魔物であり、魔物としては珍しく基本臆病で魔力反応も微弱、何よりも固く上に足が速い。

それでも探索者たちがこの魔物を狙う理由は、その銃弾すら通さない固い岩に擬態したヤドの下には、7色に輝く【アマナイト】と呼ばれるダンジョン宝石が隠れているからである。

なお、この魔物を発見するにはよほどの幸運と高い察知力又は恐ろしく高品質な魔物探知機が必要になるであろうこともここに記載しておく。



「やった!!色、3種類以上確認!!

 これはいい値段する!!……って、あ」


「あ」



そして、トラが一撃を加えられた達成感からか双方気が緩んだのか、そのまま【宝飾ヤドカリ】は逃走継続。

拘束魔法がトラに攻撃によって燃やし尽くされたこともあり、そのまま素早く岸先まで移動。

【宝飾ヤドカリ】はそのままダンジョン内の海の中へと飛び込み、その姿をくらませたのであった。



「ふむ……」



ユキオは考える。

恐らく、今回の魔物は自分一人だと見つからなかったであろうし、見つけてもこのように傷つけてその殻の一部を手に入れることはできなかったであろう。

いずれ二人の連携を強化すれば、いつの日かあの魔物に再戦する時には完全討伐することも目ではないかもしれない。



「……ん!トラ、今日はいろいろとありがとうな。

 恐らくさっきの魔法でだいぶ疲れただろうし、今日はこの辺までにするか!」



色々と打算が入った考えではあるがおそらくトラはこの先ダンジョン探索を続けても多分問題はないだろう。



「それで、ものは相談なんだがトラさえ悪くなければこれからも一緒にパーティを組まないか?」



だから、ユキオは自分の口からパーティの申請をトラにした。

キクカに勧められたからではなく、自分からお願いする。

これは一種の決意表明みたいなものであった。







「ごめん!ちょっと、今魔導機構の設定中だから、話は後にして!!」



が、然しトラ、残念ながらユキオの話を全く聞いちゃいなかった。



「え?」


「今から私、魔導機構を【潜水】モードにして、アイツを追いかけてくるから!!

 ユキ君はまたアイツがこっちに逃げた時に備えて、拘束魔法を準備をしておいて!!」


「ちょ!おま!!本気で言ってるのか!!

 ダンジョンの海は何があるかわかんないから本当に危険なんだぞ!

 それに、お前はもうさっきの魔法で魔力が尽きかけてるじゃねぇか!それなのにどうやって【潜水モード】の魔力を補うつもりだ!」


「そこは気合と根性で!

 今ここで逃がしたら次何時あの魔物に出会えるかわからないし!!

 あいつさえ倒せば、新しいパーツが買えるから!!!」



どう見ても欲に目がくらんでいます。

本当にありがとうございました。



「いやいやいや、冷静に考えろ。

 すでにあの魔物が海に潜ってからかなり時間がたったのに今からお前が潜って追いつけるわけが……」


「いけるいける!私ならいける!!

 おっしゃ!!覚悟完了!それじゃぁ、いってきま~~す!!」



そういって、トラは自らの頬をぱちんとたたき自分に活を入れたのか、ユキオの静止をも無視して颯爽とダンジョンの海の中へとダイブしたのであった。

流れる静寂、やけに強く感じる風。

ほどなくしてユキオの視界には、先ほどの決意もむなしく遠くの海の先でぷかりと背中を上にして浮かぶ夢破れたトラの姿があった。

そのまま土左衛門スタイルでセーフティによって静かにダンジョン外へと戻されていく姿にはどこか哀愁すら漂わせていた。



「……とりあえず、色々と節操とか常識ってやつを教え込まなきゃいけんなぁ」



これからのダンジョン探索は魔物の警戒戦闘だけでなく、あれの教育もしなければならないのか。

そんなことを考えるとユキオは色々と痛くなる胃と目頭を押さえながら、そうつぶやいたのであった。



掲示板ネタは次回


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