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異世界爆買い~成金チートで異世界最強や~1

 大臣が青い顔をしている。


「どうした大臣」

「どうしたじゃないですよ!異世界転生者の対策費が7000億Gから3兆Gに膨らんでいるですよ!」


 なんでも、薬品類の値段が四倍以上も高騰しているらしい。

 薬品は異世界転生者の研究には欠かせないものなので買わざるを得ない。

 大臣としても辛いところだろう。

「天候不順かな?」

「天候不順じゃないですよ!もっと人為的なものです」

 たしかに、天候不順という話は聞いていない。

 天候不順なら、今ごろは対策班を作り、慌ただしくしているはずだ。

 つまり、金銭チートが来たのでは?

 金銭チートの影響で経済を破綻させる訳にはいかない。

 魔界の平和の一端を担っているのが安定した経済。

 幸せに暮らしている人間はリスクを犯してクーデターを起こさない。

 お金をもて余した人間が良からぬことをする話は別として。

 激務で気力を奪う手法も別として。

 少なくとも今の魔界の平和は衣食住の充足で保たれている。

 不穏分子が経済の安定で抑えられているという話も耳にする。

 経済破綻即戦争が無いとは言い切れない。

 その戦争を経済の破綻した状況で戦えるはずがない。

 そうなれば詰みだ。

 人が地道に築き上げた経済循環を、なにも考えずにズタズタにする金銭チート。

 許せん!

「大臣、ポーションの流通状況の資料はあるか」

「もちろんです。魔王様、この流通状況の資料をよーくご覧ください」

 落ち着いて薬品の高騰した地域を調べる。

 まずは、一番流通しているポーションから。

「南の方からだな」

 樹海のあたりから値段が高騰しはじめている。

 つまり、前回と前々回の異世界転生者がいた方角だ。

 今回も似た位置に現れたということか。

 付近の魔界民の生活は混乱しているだろう。

 混乱を抑えるためある程度対策をしなければ。

「まずは、こっちで押さえてる薬品を開放しよう」

 冷害などでの急な薬品の高騰に備え、魔王城に薬品のストックがある。

 豊作の年に買いためたものだ。

 魔界の物価をある程度安定させることも魔王の仕事だ。

 しかし、薬品の解放は慎重におこなわなくてはいけない。

 金銭チートにまた買い占められては意味がないからだ。

 一時的な高騰対策として効果はあるだろうが。

「薬品の買い占めがあった店に流して」

 そこで、戻って来る可能性の低い、買い占めのあった町に流す。

「店頭に監視もおいてねー」

 戻って来た場合の対策も忘れずに行う。

 高騰は金銭チートと関係のない買い占めの可能性もある。

 手がかりに偽造された通貨が欲しい。

「店頭の現金を全て回収して。無理やり取り立てちゃダメだよ」

 チートで複製されるのはおそらく最も高額な通貨だ。

 魔界で言うと一万G金貨だ。

 効率を考えても、持ち運びの手間を考えても当然だ。

 むしろ、中途半端な金額のものを大量に使ってくれるなら、目立ってくれて助かる。


 薬品供給部隊を数十組編成する。

 5人一組、2人を運転手に、3人を監視として残す編成。

 買い占めがあった店に当たるまで魔界中を駆け回ってもらう。

 買い占めが無かったら次の町へ。

 買い占めがあったら、3人を店頭に監視に残す。

 2人は現金を回収し、即時帰還。

 その後商品を買い占めたものが現れたら、接触せずに尾行するように命じた。

 各部隊、地上用の輸送手段を使うが、近くまで大型飛行挺で一気に運ぶ。

 魔王城備え付けの滑走路で、今しがた飛行挺の準備が出来たので送り出す。

 魔王自ら黄色い服に身を包み、進行方向にビシッと指をさす。

「GO!」

 魔導式カタパルトに魔力を供給し、発進させる。

 魔導式カタパルトはバリアで弾いて発進させる方式。

 カタパルトオフィサーとして繊細な魔力コントロールが要求される。

 まあ嘘だが。

 カタパルトオフィサーの仕事は発進の合図のみ。

 カタパルト上の準備さえ整っていれば誰が魔力を供給しても問題ない。

 しかも今回の飛行挺は適当に放り出しても問題ない。

 デビルレイが自分で調整してくれる。

 この飛行挺はデビルレイに牽引させる旧型。

 旧型なのは魔王城にすぐ動かせる大型の輸送機がこれしかなかった。

 新型は墜落したり煙が出たり、基地の騒音問題などいろいろあるのだ。

 まったく、この魔王様に歯向かうとは愚かな民衆め。

 騒音が気になるのは逆に世の中が静かだからだ。

 世の中がにぎやかで活気があれば騒音など気にならない。

 故障率など実働試験を繰り返さなければ下げようがない。

 愚かな民衆は魔王の力をもってすれば、容易く蹴散らせる。

 逆らう者は皆殺しだ。

 しかし、魔王は民衆の声に屈した。

 品種改良された鳴かない魔獣が現在の主力となっている。

 消音魔法の研究も進めた。

 結果、部隊の隠密性が増した。

 この研究はそれなりに予算がかかり、大臣を苦しめている。

 今回のデビルレイは品種改良せずとも大人しいと聞いている。

 尻尾の毒針にさえ気をつければ扱いやすいと聞いている。

 異世界にもデビルレイがいるとも聞いている。

 空を飛べなければ数メートル程度の大きさらしい。

 ついでに犬も1メートル無いらしい。

「そういえばあの辺に、3代目ケルベロスいなかったか?」

 2代目はいろいろあって引退してもらった。

 満を持して投入された3代目だった。

「もしや3代目はもう……」

「無事です。無事どころか、あげた覚えのない骨を持っているみたいです」

「今度は懐柔されたのか。どの犬種だ」

「キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルと狆とウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアです」

「名前のバランス!。苗字なしが外タレに挟まれた、酷いときのラテ欄か!」

「でも実際、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルと狆とウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアなので」

「キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルと狆とウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアって!長いわ!キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルと狆とウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア」

「もうキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルと狆とウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアって言いたいだけですね」

「そんなことないキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルと狆とウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア」

「語尾でキャラ付けみたいなボケですか?そんな長いの唐突に語尾に付けられても、わからないですよ」

「たしかにわかりづらい狆。小学生の作文の文字数稼ぎみたいだ狆」

「狆なら問題ないですね。それでお願いします」

「短くてかわいそうな狆狆」

「問題ありました。やめてください、その小学生みたいなやつ」

 名前が短くてかわいそうって言っただけなのに。


「冗談はさておき、偽造通貨が大量に流通するのは不味いな」

 どんな問題があるか詳しくない魔界民のために説明する。

 偽造通貨が増えると国民は何をするか。

 手持ちの現金が偽物扱いされ、使えなくなることを恐れ『物』にしたくなる。

 『物』の需要が増え『現金』の需要が減る=物価が高騰。つまりインフレが進む。

 インフレは直接的に偽造通貨があることでも進む。

 仮に流通している現金の半分が偽造通貨で残りが本物としよう。

 本来100Gのポーションを売る場合、200Gで売りたくなるはずだ。

 200Gの半分が本物なら100Gの価値という事になるからだ。

 実際の金額は別にしても、店舗は偽造通貨を理由に値上げを行う。

 値段があがる『物』を手元に置きたい状況と合わせて、強気にでるだろう。

 商人が儲けるために動くのは正常な経済活動なので、魔王として責めるわけにもいかない。

 このように、対応を間違えると魔界経済はハイパーインフレで詰む。

「そうですね、対策が出来るならしておきたいですね」

 有効な対策の一つに現金を介さない取引がある。

 残念ながらいまいち普及していない。

「こんなことなら呪われた(カースド)払いの普及を進めておけば」

 呪われた(カースド)払いに詳しくない魔界民のために説明する。

 これは呪いを応用した金融システムだ。

 一定期間後に金銭を失う呪いがある。

 この呪いを利用し後払いが出来るようにした。

 しかし、呪いには高度な技術が必要だった。

 それを双方が同意すれば、簡単かつ確実に行使できるようにした。

 これにより現金を持たずに気軽に取引が出来る。

 画期的な点はそれだけでない。

 本来の支払いのタイミングから取り立てまでに時差が生まれた。

 この時差により、流通している通貨の金額以上の取引がおこなえるようになった。

 もちろん、懸念される問題もある。

 取り立てまでに支払い準備が間に合わない場合だ。

 呪いが強制的に家財道具などを取り上げる事になるだろう。

 最悪、呪いで命を落としかねない。

 呪われた(カースド)破産などと社会問題にならぬよう配慮をしなければならなかった。

 少し慎重になりすぎたかもしれない。

 昔、呪いを使わず書類で行う、似たシステムを普及させられなかった。

 慎重になったのはそのためだ。

 今回の遅れは本当に痛い。

 仮に偽造通貨で現金の信用が失われても、呪われた(カースド)払いで経済は停滞しない。

 少しでも時間が稼げれば、それだけでいくつか対策が講じられる。

「変な撮影で邪魔されましたからね」

「本当に何だったのアレ!」

 いや、後ろを向いても仕方がない。

 前向きに金銭チート対策を練ろう。


 そうこうしていると現金回収班が到着した。

 一番大きそうな袋を受け取ると机に広げる。

 硬貨の見た目におかしなところは無い。

 問題が見つかるとすれば製造番号からだろう。

 製造番号は通し番号になっている。

 無理に複製したなら番号が正確でないか、重複するだろう。

 今ある硬貨を三桁ずつ比較してみる。

 jka、shf、dfp、ehw、uie、xyd、piw、fha、jds、abg、iah、upy、pre、wuq、hfu、pgd、ssh、aaj、sfu、piy、rew、pqo、gfa、gbs、sdg、bad、syh、uig、wgq。

 製造番号の一致はない。

 金銭チートはいなかったのだろうか。

 次に大きい袋を確認する。

 ldk、saj、hew、opp、hfd、jsb、nvz、xmn、ctj、xyd、abf、bhw、ieh、uri、wad、saf、jfe、wqh、uew、bqr、eqn、mhj、hjz、cub、waw、hee。

 またしても製造番号の一致はない。

 まて、1袋目と2袋目に……。

 xyd549973、xyd549973。

「あった。この2枚。他は」

 3袋目。

 eqe、xyd、xyd、xyd、xyd、gbu、xyd、xyd、xyd、xyd、xyd、vbs、xyd、xyd、xyd、xyd、xyd。

「間違いない偽造通貨だ。この袋の町の情報を」

「金銭チート居たんですね。すぐに連絡を」

 張り込み班と連絡を取る。

「買い占めがあったのが2時間前で、駅に向かったそうです」

「よし、先回りして網を張るぞ」

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