防御は最大の攻撃~盾の力で倍返しだ~1
9月某日 魔界
この日魔界に新たな道路が開通した。
この道路の開通により町から港まで、わずか1時間に短縮されることになる。
今までは山々を迂回し、半日はかかる道のりだった。
町では鮮度の都合で見ることもなかった魚を、今後目にすることも多くなるだろう。
そんな道路の完成に尽力した立役者は語る。
「魔界の人々の笑顔、その為にやれることをやっています」
今回の主役を知らない人は魔界には居ないだろう。
魔王、彼の人となりに迫りたいと思う。
開通式典でテープカットをしている男。
彼は第二次魔界大戦を終結に導き、住みやすい魔界のための改革を推し進めた辣腕。
その功績はすぐに現れた。
改革を始めてわずか2年で、魔界の経済は倍以上に成長した。
犯罪件数も以前の半分以下に、以降も毎年最少記録を更新している。
その改革の柱となったのが、いわゆるアメとムチの行政だ。
まず、ムチとして警察機構の見直しと人員の強化を行った。
これにより、今まで無法地帯だった魔界に秩序が取り戻された。
この事は、多くの住民に歓迎された。
もちろん歓迎しないものもいる。
旅人を襲って生計を立てていた魔物達は、路頭に迷うことになるからだ。
彼はそこに、すかさずアメを投入した。インフラ整備計画だ。
公共事業としてその魔物達を雇ったのだ。
そして、その労働力で魔界全土に新たな交通網を作り出した。
安全な道、これは魔界の経済を活性化させることに一役買った。
新たな雇用も生まれ、経済の好循環が続いている。
この頃には旅人を襲おうという魔物は居なくなっていた。
Q 全て計算尽くだったんですか?
「ただ、目の前の状況を良くしよう良くしようで、こうなるとは思っても見なかったですね」
彼はハニカミながら答えてくれた。
ただ目の前の事にがむしゃらになる。それが魔王流のやり方だ。
インフラ整備計画はなにも道路だけの話じゃない。
魔力の乏しい者、いわゆる魔力弱者のため、代わりとなる電力インフラを整備した。
現在、魔界では半数が魔力弱者と言われている。
魔力弱者は魔導具で火を起こすのも一苦労、魔導洗濯などもってのほかだった。
そんな魔力弱者の救世主となったのが電化魔導具である。
魔力弱者でも電力の供給さえあれば、通常の魔導具と同じことができる。
これは、魔界を豊かにするためには欠かせないものだった。
電力の供給のための施設も数多く作られた。
最も有名なのは、魔王城のバリアを利用した斥力発電所だろうか。
建設数は最も多く、魔王城を囲むよういくつも建てられ、全電力の80%を賄っている。
さて、この斥力発電だが、仕組みはなにも難しい物じゃない。
水力発電と同様にタービンの羽根を回すことで電力を得る。
水力発電が川の水で羽根を回すのに対し、斥力発電はバリアの弾き返す力、つまり斥力で回している。
水力発電などと比べ特筆すべきは安定性だ。
水力発電は乾季に発電出来なくなるのに対し、斥力発電は季節で衰える事がない。
魔界四天王の城に安置される、四つのクリスタルが破壊されない限り、安定供給される。
魔王の仕事は分刻みのスケジュールだ。
魔王城に戻るとすぐに会議が始まる。
この日の議題は新しい通貨システムについてだそうだ。
詳細はまだ明かせないという。
そして、この会議の場に、忘れてはいけない男がもう一人いる。
魔王が絶対の信頼を置く側近の大臣だ。
「大臣の協力がなければ、こうは行かなかったでしょう」
そう語るのも無理は無い。
今回のインフラ整備計画でも、かかる費用の計算や人員の配備を一手に引き受けていた。
Q なぜそんなに仕事をかかえるの?
「魔王様には集中して政策を考えていただきたいものですから」
そう語る彼は、魔卓で何かを計算し続けている。
取材中、彼が休んでいる姿をスタッフは見ていない。
そのことをどう思っているか、スタッフは直接聞いてみた。
Q 部下を増やそうとは思わないの?
「いえ、増えてますよ。ただ、大臣の下に就くので見た目は変わらないんですよ」
Q もし大臣に何かあったらどうします?
「もし、なんて無いですけど、引き継げるようになっています」
引き継いだところで元通りにできる訳ではない、とも語ってくれた。
魔王がその才能を十二分に発揮出来ているのは彼によるところが大きいのだろう。
こうしている間も、彼の『すごい魔導報告機』スマホへの報告が途切れることがなかった。
「大臣のスゴいところは仕事量以上に、正確性なんですよ」
取材中、大臣の報告に対し、訂正をすることは一度もなかった。
長年の経験により、彼らだけに通じるものがあるのだろうか。
会議後の彼らは、次の現場に向かうべく、すでに転送魔方陣の上にいた。
そんな分刻みのスケジュールで、会議に視察と多忙な毎日を過ごす魔王様。
仕事の合間の食事はどうしても簡素になってしまいます。
バランスの悪い食事、不規則な生活、足りない睡眠時間。
魔王様は日頃の無理がたたって体調を崩してしまいます。
もし、私が倒れたら誰が魔界の平和を守るのか。
これからは健康に気を付けよう!
そんな時に出会ったのが『アムリタの雫』でした。
「大臣に試しに飲んでって言われて、飲んだらその日からスッと体が軽くなって」
魔王様個人の感想です。
「これを飲んでから毎日調子がよくて、もう手放せないよ」
不足しがちな栄養を『アムリタの雫』一袋で補えます。
牛乳をコップで2杯飲んだのと同じカルシウム。
ビタミンCはなんとレモン4個分。
健康を取り戻した魔王様は今日も魔界の平和のために働いています。
「私も魔王様と一緒に飲んでいるんですが、最近は視察の後、足が痛くならないです」
効果には個人差があります
「魔王様にはこれからも健康でいて欲しいので、毎日十袋は飲んでほしいです」
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変なものを見てしまった。
「失礼します魔王様、これって、このあいだ撮影した番組ですよね」
そして、今来たのか、前からいたのか、大臣に変なところを見られてしまった。
「うむ、情熱的なドキュメンタリーだって聞いていたのに通販番組になってたんだよ」
「私はそこまで情熱的には見てないですが。通販だと聞いてます」
前からいたのか。自分大好きみたいに思われた。
「あ、あれ、十袋も飲んだらダメでしょ。体に良いものも摂りすぎたら毒だよ」
「逆に、あれ栄養無いんで大丈夫です」
「インチキ商売かよ」
なぜ、そこまで知っている。
「すみません、魔界の財政も厳しいんですよ」
「それと、ドキュメンタリーの所もだいぶ話盛りすぎじゃね。ちょっと面白かったけどさ」
「盛りすぎだなんて、プロパガンダは大事ですよ」
これ以上は恥ずかしいので話題を変える。
「そんなことより、部屋まで来てどうした?なにかあったか?」
「実は魔王様、二代目ケルベロスがやられました」
「もうやられたか。まあそうなるだろうなー」
「驚かないですか?魔王様。二代目になってから数日ですよ」
「数日って言っても、『左から、チワワ、シーズー、ポメラニアン』じゃなー」
「あ、それ俳句になってますね。さすが魔王様」
「いや、俳句とかいいから!季語ないから川柳だし!というか、やられたんでしょ?」
「そうですね。笑ってる場合じゃないですね。悲しい事件でした」
「本当に、ずいぶんと余裕だな」
「はい、犯人の異世界転生者はもう捕まっているので」
「もう捕まってるの?」
「目撃者から通報がありまして、家で保護しているそうです」
資料を一通り渡される。
どうやら、資料の上では大人しくしているらしい。
「ここって元レジスタンスの村かー。敵対していたとき、いろいろあったな」
「ただ、今はとても協力的ですね」
「でも、保護って大丈夫なの?ケルベロス倒すような狂暴なヤツでしょ?」
「いえ、正当防衛みたいです。ポメラニアンの毒の牙が来たところを盾でガッと」
「あー、ポメ頭は喧嘩っ早かったしなー」
喧嘩っ早いから別の子を派遣したかった。
「しゃーない。そこがポメのかわいさでもあるしなー。というかいつの間に毒の牙覚えたの?」
「はい、実戦配備前にいろいろ覚えてたみたいですね」
「え、他にも覚えてるの?」
「ポメラニアンが各種攻撃の牙、シーズーが回復系魔法、チワワがかわいさアピールを覚えてますね」
「チワワないわー。かわいさアピールとかキモいわー」
魔王様個人の感想です。
「チワワは本当にいらなかったですね」
魔界のチワワは実際のチワワとは異なります。
「まあ、今回の相手は攻撃してこないみたいだし、平和的に行こうよ」
「いえ、チャンスですよ魔王様。相手は武器がないと証言しているそうです」
「でも、ケルベロスやられたし」
「敵意のある攻撃を倍にして反射するだけらしいです。敵意のない炎でこんがりと……」
「やめよやめよ、そう言う物騒なの。というか、敵意の無い攻撃ってどうやるのさ」
「それは、そのーですね、上手いこと」
「上手いことって何さ、話し合いが上手いことだよ。さっきから大臣、何かあるの?」
「出来ればそのー、倒すさまを、プロパガンダしたいなーと」
「プロパガンダしてどうするのさ」
「魔王様グッズを売りたいなーと」
ついに本音がでたか。大臣は目をそらしている。
「魔王様なら勝てます」
「無理無理、攻撃が全部反射されるなら勝ち目無いじゃん」
「攻撃が駄目なら回復魔法とかどうですか?」
「回復してどうするの?よろこばせるの?逆にそれなら賛成だよ」
「無理ですかねー」
「お金で解決出来るならそうしよー。彼の地位を保証して盾を買い取る方向で」
「でももし、相手が断ってきたらどうするんですか?」
「そうなった時のことは考えとくからー。でも、ちゃんと話せばわかりあえるよ」
「魔王様がそう言うなら仕方ないですけど、なるべく安くお願いします」
「可能な限りね、ということで、今回は懐柔大作戦だ」