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思い出すまでもなくクズだそうですよ

「さあ、これでよろしいですわ。お綺麗です、お嬢様」


マグノニさんは、無表情をすこし緩めて、そう讃えてくれたが……


ただの怪談ですよね、コレ。

誉められてるのは顔が無い女というシュールさ。


光があたると色を変えるサーモンピンクのドレスが、似合っているのかもわからない。


なぜに顔を認識できないのかなー。

やっぱ、自分が誰かもわからないからかね。


マグノニさんに手を取られ、化粧室を出ると、直立不動のカーラ女史がいらっしゃった!!


ぐ、ぐはっ

白目をむきそうになる。


「滞在している間は、カーラがお嬢様の近衛を勤めます」


そ、その気遣いは無用にございます閣下!!

ぜってぇ嫌がらせじゃあ!!

ワシが女史を苦手とわかっててやってるよ、あの高貴なお方はっ。


「こちらです、ツィトベレ様」


あの銀色の目でギッと睨まれた。

う、嫌われちゃったかな。

失敗した。苦手ってあからさますぎたかな……

やだなー。

俺のバカー。

なぜもっとスマートにできないのだ!!


とってつけた笑みを浮かべてみたけど、冷たい空気がっ


「お急ぎください」


カーラ女史は先をゆく。

初日に入った、住居部分のホールに出た。


閣下が何もんかはいまだわからない。

しかし、職場と住居が繋がってるってどうよ?


どんだけ仕事がすきなんじゃ閣下。


「ツィトベレ様。狭いですが、こちらの道を通ります。決してお騒ぎになりませんように」


入ってきたときの、お出迎え扉とは別に、普通の大きさのドアが離れた並びに存在していた。


お出迎え扉がホールの中心になるように作られてあるから、隅っこになる。


カーラ女史が扉を開けて、先に入る。

マグノニさんが扉を押さえてくれているので、やだなぁとか思ってるヒマはない。

そそくさと中に入った。


こちらの回廊は、暗い。

明かり取りの穴が、頭より上にぽつぽつとあるぐらいだ。


カーラさんの足音が、カツカツ響く。

いきおいよく早い。

その後ろから、コッコッと途切れに響く、不器用なヒールの音がワタクシです。

マグノニさんは足音がしないんですけど。

別の意味で怖いわこの人!


「……ずいぶんと、おとなしくされてるんですね」


「へっ?」


急に話しかけられてマグノニさんを見た。


「いまさら心証を良くしようとでもお考えですか。無駄なこと。閣下は、そんな小細工で心動かされるようなお方ではありません」


あ、ちがった。

カーラ女史だ。


「あなたも、もうすぐ我々と同じく、ただのツィトベレとなる!散々振り回された我々のっ」


「カーラ」


「っ。余計なことを申しました」


マグノニさんの静かな制止に、感情を高ぶらせかけていたカーラ女史はうなだれた。

だがすぐに顔をあげ、まえを見る。


「もう、すぐそこです」


あー……

これは、ワシが嫌われてるとかじゃねーわ。

もともとツィトベレ嬢にアレなのね。


しっかし、15、6の小娘を、激しく嫌ってるって、なにがあったんだー。


ツィトベレさんよぉぉぉ。

アンタなにしてくれちゃってんのさ。


貴族で嫌われてるってなるとぉ。


下じもを見下して、自分の栄華を疑わない、典型的なボンクラ貴族子女ってやつかね。


世間知らずの小娘が、どんな自己中発言をかましたのか!!

もれなく権力もついてきちゃうよ☆


いらんオマケだわー。


本当に真面目そうだもんな、カーラ女史。

きっとお嬢様の癇癪を、真っ向から受け取って、傷ついたり悩んだりしてきたんだろーなー……




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