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場所を移動しよう。


優雅な笑みを崩さない美中年に提案され、薄暗い小部屋を出た。

最初に見た、白茶けた石造りの回廊の横にある、控え室みたいな部屋だった。


「ここは衛士の詰所だよ。むさ苦しいところに押し込んで悪かったね」


俺はいま、美中年に手を取られ、腰を支えられている。

なんというジェントル!!


マッスル氏は執拗に反対したが、閣下は流れるようにエスコートの体勢に入った。

そのスピードたるや、天才プリンシバルか。


「カーラ」


詰所を出た閣下は、回廊の先に直立不動で立っている、えらく姿勢のいい女性をよんだ。


「閣下!何事もございませんでしたか」


赤紫の髪をなびかせて、小走りに駆けてくるのは……


うひっ!お、おねーさんは、さきほどのUMA!!


水銀みたいな眼を思いだして、ちょっと拒否反応でました。すいません。

ビクッとのけ反りそうになったのを、閣下にがっちりと押し止められましたよ。


「ツィトベレ様は、その」


ちらりと、銀膜の瞳に見られた。

黒目が無くても見られてるって解るものですね。


ヒィ……

も、申し訳ない……

美人なのに、どうしても鳥肌が立ってしまう。

うう〜。白目と黒目の無い、ただ銀色の油膜のような瞳が、どうしても生理的に受け付けない。

怖い……


目を合わせないように、俯いておく。

うう、ごめんなさい。


「カーラ、先に戻ってバクスマンに伝えてくれ。ツィトベレはしばらく当家に滞在する」


「え」←俺氏


「え」←女史


ううう、カーラ女史の方から不審と言う名のレーザービームが射たれているでござる。

ですよねー。

閣下のお宅にお邪魔するなんて、恐れ多いでございますよねー。

アタクシも今はじめて聞きましたのよ。


「畏まりました、閣下」


あ、マッスル氏と違って食い下がらないんですね。

できれば反対していただきたかったよ!!

殿方のお宅に泊まる準備なんてしてきてないわっ

今日のパンツは何色だったかしら。


世の女子が本当に下着に気を使っているのかは知らぬ。

そんな感じを出してみた。



「では参ろうか、ツィトベレ。なに、そんなに遠くはないよ」


「はあ……。(近かろうが行きたくないんでございますよ閣下)」


前門のマッスル部下、後門のマッスル氏。横には閣下という、最強の布陣です。

逃げられる気がしない。


「ではぁ、私はこれでぇ。失礼いたします閣下」


妖精しゃん!!唯一の癒しが行ってしまうのっ?

ひとりにしないでぇぇぇ


「ウルグスラン」


「祓士には守秘義務がございますぅ」


「もちろんだ。ありがとう」


略礼をすると、妖精は回廊から横に逸れ、見えなくなった。


石造りの回廊を抜け、天井がさらに高いホールに出た。

天井から綺麗な布が垂れている。

床には長大な絨毯。わー……、向こうが小さくなっているよー。


先程まで居なかった人が、ちらほらと見える。

通り過ぎる度に、皆様端に寄り、閣下にむかって略礼をとる。


あ、待って。

現実を逃避していて気づかんかったが、閣下のエスコートとかえらく目立って、ますよねー。

女史のレーザービームなみの視線が、あちこち刺さるわ。


いちばんジリ焦げる後ろをみると、苦虫を千匹ぐらい噛み潰したような顔のマッスル氏が。


「やっぱりマッスル氏に連行されたいと思います閣下!」


人目の意味合いをすり替えたい。

あらぬ噂より、罪人と噂されたいよ俺は!


「ヤップリィマッスィーシィ?」


通じませんよね。

わかってました。


「ああ!」


閣下はキョトンとしたあと、頷いた。

まさか気がついたのか?

スゲー閣下、HSK(ハイスペック閣下)


「身の回りのものは心配しなくてよいよ」


ああ……

安心してと微笑む閣下は、さすがよくお気づきですね。

その調子で察していただけませんでしょうか。


見知らぬ他人のテリトリーに入らねばならんということが、真面目系クズにはハードルが高いということを。

閣下はどうやら人たらしであらせられるご様子。

どんな人間とでもお付き合いできるでしょう。


クズには無理なんだよぉぉぉぉぉぉう。


お家に帰らせてぇぇぇぇ。


心の涙むなしく、ホールを抜け、階段を登り、右に左に曲がり、まあつまりは一人で元の場所には戻れんということだ。

そうして、シンプルな木の扉の前についた。

飾り気は無いが、でかい。


「失礼いたします。宮廷警備第二部隊ジガーロ。先触れを勤めます。

閣下のお成りです」


マッスル部下が扉に向かい、朗々と声をあげる。


重たそうな扉が、静かに内側に開いてゆく。


「うわー……」


扉の内側は、またホール。

さっきより距離は短いけど、天井までのガラス窓がある。

衛士小部屋の窓とは比べ物にならない透明感。


「金と権力のにおいしかしないよ閣下……」


開いた扉の左右には、マッスル氏たちと似たような格好の男性がたっていた。

こちらは筋肉ではない。

スラリとした美形だ。


「お帰りなさいませ閣下」


発声がずれることなく、お辞儀も揃って一分の隙もない。

きっちり二呼吸は頭を下げ、三呼吸目で頭をあげた。

おおー


「うん。

ドゥヌベ、ジガーロ。ご苦労だったね。ありがとう」


閣下がマッスル氏たちを労うと、マッスル氏が「恐れながら」と渋い顔で言い出した。


「ツィトベレ・フェザーリーは危険です。荒事に馴れた我々も同席を……」


「閣下に意見とは、偉くなったものだなココ・ドゥヌベ」


さらなる美形来たー。

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