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昔の記憶

「覚えていますか?何故ここに来たのか」

「……黙れ」

「酷いですね。研究対象の癖に」

「ここから出せ。殺すぞ」

「おお、怖い怖い」


 笑いだすハンス。此方からしたら気持ち悪いことこの上ない。


「獣族なんか助けるからこうなるんですよ。精霊王?」

「黙れ」

「キククク」


 気色悪い笑い方だ。


「さて、いつまで虚勢を張っていられるか見物ですねぇ」


 鎖がスパークした瞬間、大量の電気が体を通るのを感じた。ただでさえボロボロなのに魔力まで封じられて、防げる筈がない。身体中が麻痺し、倒れ込む。


「キククク。実験の時間ですよぉ」





「くっ……がぁ……」

「叫んでくださいよぉ。面白くないじゃないですか。これに耐えられるとは流石は精霊王ですけど」

「だ、まれ……鬼畜野郎」

「キククク。魔核をそのまま突っついたらどうなるでしょうかね?」


 手に変な形の手袋を嵌めて俺の胸の辺りを触る。強烈な痛みが身体中を襲った。


「ガアアアァァァ!」

「キキククク!良いですよお!それでこそ研究の醍醐味ですから!キキクククク!」


 魔力が一気に消耗される。って言うかがちでヤバめの痛みだ。ナイフ刺さったとかそんなの比じゃない。


 体の中から組織が破壊される。それが一番正しい表現だと思うけど。こんなこと考えられる辺り、やっぱりこれは夢でしかないな。痛みを何とかしてほしいけど。


「ぐぁ、うっ」

「キククク。もっと叫べ、もっと喚け!」

「あああああぁぁぁ!」


 魔核がそのまま弄られる感覚は心臓を握られるのと似ているのかもしれない。体を固定されているからどうにもできない。


 魔核はさっき言ったように心臓のような器官で此がなくなるとほぼ確実に死ぬ。それは俺も例外ではない。これは魔法を使える奴ならどんな種でも持っているものだ。


 ここで魔力を作り、使うことができる。魔法使いには普通一人一個ずつ魔核があるが、


「驚きましたよぉ。まさか13個も魔核があるなんて」


 と言うことだ。それでも一個壊れたら俺は死ぬ。喩え大量の魔核があったとしても機能は変わらないから。それでも、かなり痛い。


「ぅあああぁぁぁ!」

「良いですよ、良いですよ!いい研究結果が得られそうです」

「フ、ザケ、ルナ……!」

「まだ話せるとは。普通ならとっくに意識ない筈ですけどね」

「ナ、ニガ、シタクテ、コンナコト……」

「簡単ですよ!やりたいから。ただそれだけに決まっているじゃないですか!」


 俺の魔核を弄くり回しながら高らかに笑うハンス。狂ってやがる。


「キチク、ヤロウ……!」

「お好きに呼んでください。さてと。研究始めますね?さっき初めて気付きましたが、女性だったんですね」


 気持ち悪い目付きで胸の辺りの魔核を触りながら凝視してくる。魔核がほんの少し動かされた。


「ぐああああぁぁぁ!」

「おっと、つい見とれてしまいました。研究対象としてもこれ以上は危険ですねぇ。一旦休憩しましょうか」


 俺は魔核の痛みで強制的に気絶した。





「くっ……かはっ……」

「吐血ですかぁ?この辺は思ったより脆いようですねぇ」


 追体験が長すぎる。そう感じているだけかもしれないが、明らかに長い。気絶しまくってるから分かりづらいところはあるが。


「はぁ、はぁ、はぁ……くぅっ!」

「限界ですかねー?まぁ、魔力は十分に戴いているのでいいんですけどね?」

「……ぐふっ」

「言葉も話せなくなってきましたか?」


 固定台の近くにはもう既に水になった俺の血が零れ落ちていた。これ、人間みたいに血の色変わらなかったらかなりホラーだ。


 コンコン、と部屋がノックされる。


「誰です?今実験中なんですけど?」


 そんなことをいいながらハンスが戸を開けに行く。その時、爆発音が鳴り響き、警報のベルが大音量で鳴り出した。


「何を……!」

「ーーー!ーーーー!」


 爆発の音に紛れて声が聞こえない。叫んでるのは判るけど。すると、拘束具が誤作動を起こしたようで、解放される。魔力は限界に近い。転移は不可能だと判断。


「くっ……!」


 ボロボロの体を一先ず何とか走れるくらいまで回復させ、奥に走る。壁を壊して外に出ればーーーー





「………はっ!」

「起きました!」


 え?誰?


「極星様!」

「ご主人様!」

我が主(マイ・マスター)!』

「極星ー!」


 レイラ達が降ってきた。案の定潰れる。蛙が死にかけたみたいな声が出た。


「ちょ、潰れ」

「大丈夫ですか!?お怪我は!」

『魔力はちゃんと循環していますか!?』


 乗ってる、重い!流石に全員乗ってると重いって!状況理解できてないから!説明してよ!


『俺も今起きたから無理』


 お前に頼んでねえよ!





「なるほどね」


 なんとか説明を受けた。どうやら海に墜落したあと海流に流されて一時的に行方不明になっていたらしい。怖い。


 で、今日はクラーケン退治から3日後らしい。昨日砂浜に流れ着いてるのが発見されたらしく、1日は海の中をどんぶらこ状態だったんだってさ。


 俺が海にどぼんでどんぶらこしてた時にレイラ達は必死に俺の捜索をしてくれていたらしい。水の能力者のスキル持ってなかったら確実にお陀仏までは行かなくても海底とかに居たと思う。


「エレン。半分は妾のせいじゃ。すまぬ」


 確かに首輪なかったらどうとでもなってたけどさ。


「過ぎたことを振り返しても意味ないだろ。取り合えず今は無事なんだから」


 これでいいんだよ。首輪は何ともならないかもしれないけど。


 と、思ったら。黄鈴から連絡が来ていた。なんと、外す目処がついたらしい。ひゃっほー!


 いかん。テンションがおかしいな。


「クラーケン退治の方の事後報告は?」

「翔太さんが。私達は極星様の捜索をするので手一杯だったので」


 翔太さん。あんたもどうやら苦労人体質のようだ。奴隷娘達も同じく翔太さんについていったらしい。


「さてと。黄鈴の所に行きますか」

「その必要はありませんよ」


 後ろを向くと、黄鈴の召喚獣である梟のスーが居た。


「黄鈴か?」

「はい。スーの声を借りてお話ししています」

「そうか。で、どうするんだ?」


 一羽の梟が俺の肩に乗った。嘴でなにか突っついていると思ったら、カチャン、と音がして外れた。


「超簡単に外れたじゃん!」

「魔力をうまく流して解錠したんですよ」


 そんな簡単な事だったのかよ。まぁ、いいや。これで解放される!


「魔力もかなり回復してるし、もう大丈夫かな」

「良かったです」


 っていうか、ここどこ?全く気にしてなかった。レイラ達に聞く。


「それは、ギルドのーーー」

「僕ですよ。エレン様」


 奥からさっき俺が起きたって言った女性と一緒にクアが出てきた。


「クア。それと?」

「妻です」

「結婚してたのかよ!」


 今初めて知ったわ。


「エレン様と別れてすぐに付き合い始めて、10年ほど前に」

「まじかー」


 本当にまじかーだ。まさかあの貧弱エルフが結婚までしていたなんて。いや、ギルド長の方が驚きだったけど。


「初めまして。クリステアの妻で、同じくハイエルフのスーザと申します。よろしくお願いしますね、『光輝』エレン様」

「もうその名はあってないもんだから呼ばなくていい。初めまして、今は極星と名乗っています。しがない旅人です」


 取り合えず適当に挨拶をし、後で翔太さんが来るらしいので待たせてもらう。


「そうだ。エレン様。楽器久し振りに聴いてみたいです」

「別にいいけど」

「懐かしいです。昔は毎日聴いていたのにいつの間にか無くなると気になって仕方がなかったんです」


 そうだな、音量のあまりでかくないのが言いかな。三線にしようかな。え?チョイスが変?んなこたぁどうでもいいんだよ!


 ストレージから三線と爪を取り出す。爪は簡単に言えばピックだな。黒くて、指をはめて弦を弾く。


 なんでもいいけど、涙そうそうでいいか。判りやすいし。

 あ、そう言えばクラーケンの死体どうなったんだろう?


『そう言えば回収してないな』


 まぁ、いいけどさ。良い素材にはなるかと思ったんだけど。

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