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もとの姿に戻っただけなんですけれど

短めです

「回収めんどい」

「……はぁ」


 そんなあからさまな溜め息つかないでくれよ。此方が気になる。


「眠くないんですか?」

「こんなこともあろうかと眠気覚まし用意しておいたんだよ。魔力は戻らないけど」


 この眠気覚まし便利だよ。使い続ければ一週間ぐらい寝なくていいんだって。人間は。その後?ぶっ倒れるに決まってるじゃん。


「一先ずストレージに……」

「どうしました?」

「おかしい」

「え?」

「死んだ筈なのに魔力が晴れてない」


 俺の魔眼にはクラーケンの死体に黒っぽい魔力がくっついているように見える。


「どう言うことです?」

「それーーー」


 横から鈍い痛みと衝撃が来た。


「極星様!?」

「問題ない!取り合えず魔法のキャンセルをーーー」


 言い切らない内に海に引き摺り込まれる。水の能力者のお陰で水の中でも息が出来るから問題はないけど、魔力の減りが半端じゃない。何とか起きていられるのも時間の問題か。


 いま俺は触手に掴まれて引き摺り込まれている。死体だから感知できなかった。


 不味いのは、触手に掴まれていること。手をがっちりホールドされているせいで聖十刀に手が届かない。腰のナイフじゃ千切れても一本が精々だ。


 この動きからして俺に狙いを定めてきたな。不味い。抜けられない。滑るし、何本も絡み付いているから抜け出しても次から次へと来る。


 魔法が使える程魔力は残ってない。しかも今この時も吸われまくっている。今まで回復分と首輪に吸われる分でほぼ相殺できていたけど、クラーケンの触手自体が魔力を吸い上げてくるせいでただただ持ってかれるだけになっている。


「ーー!ーーーーー」


 声が声にならん。魔力放出も使えない。ま、あれ使った時点で意識なくなるから使いたくないけど。


 どうする?このクラーケン何とかしないと。手なら有るけどあんまり使いたくないなぁ。あ、眠。


『どうするんだよ!』


 ここでお前が出てくるかよ。どうしような?戻っちゃう?


『それっぽい魔法って誤魔化せば良いんじゃない?この際仕方無いだろう』


 それもそうなんだが、失敗した場合あのサイズで倒れ込むことになる。


『レイラ達なら何とかしてくれるんじゃないか?知らんけど』


 適当だな。ま、このまま渋ってても意味ないか。やっちゃおう。この後の事なんて知らん。


 今まで使っていた幻系統や、変身系の魔法を全部取っ払う。





ーーーーーーーーーーーーーーーーー





「極星!」


 まさかあいつが引っ張り込まれるなんて。クラーケンはどうやらここでの最強戦力を見抜いたらしい。


「翔太さん!皆さんを集めて!」


 その声を聞いて現実に引き戻された。そうだ。あいつなら問題ないだろう。


「此方へ!」


 船上はパニックになっている。ギルドの職員の声なんて聞こえていない。これだったら俺が呼ぶ声も皆に聞こえ無いのではないかと心配になったが、思わぬ人が助けてくれた。


 女性パーティの三人だ。どうやら極星に武器を譲ってもらったらしく、その恩を返したいらしい。


「こっちよ!気を付けて!」


 三人の協力もあり、スムーズに秋桜のメンバーが集まった。極星以外。


「ぐぁ!」

「ぎゃあああ!」


 戦場だ。俺は今まで戦場と呼べるような場にはいなかった。いつも極星が危なくなったら助けてくれた。


 死んだやつも出たかもしれない。俺達のパーティは何とか全員無事だ。各々少しは怪我を負っているものの、たいした損害はない。


 極星がいない。ただそれだけなのに、一体何れだけそれに助けられたのか。やっと今わかった。


「あいつ……なんで上がってこないんだよ」


 あれから数分は確実に経っている。10分いったか、いってないか。それだけの時間、水の中から全く出てこない。


「ん?」


 船が大きく揺れた。しがみついて何とか立ち上がる。海面に目をやると、巨大な影が下から上がってくる。


「なんだあれ!?」


 誰が言ったのか判らないが、本当にその通りだ。段々海面に近付いてくる。極星の髪と同じ、真っ赤な、しかし見る場所によっては金色に見える何かが上がってきた。


 盛大に水面を揺らしながらそれは出てきた。クラーケンよりもずっとでかい、燃えるような色の巨鳥。それが、高々と美しい声で鳴く。


「キュオオオオォォォ!」


 かなりの大音量だが、耳を塞ごうとなんて思わなかった。寧ろもっと聞いていたかった。


 鋭い嘴でクラーケンのど真ん中を抉るように攻撃する。動く度に火の粉のような物が舞い、余計美しい光景になっている。


「ヒシャアアアアア!」

「キュオオオオォォォ!」


 それから先は、一方的な蹂躙。あれほど苦労したクラーケンは僅か三回の嘴の攻撃で完全に動きを止めた。


「すげぇ……」


 おもわず、そんな呟きが出た。その時、突然鳥の体が光ったと思ったらその光が中心に収縮していき、人の形をとる。光が消えた時には、空中から落下していく極星が見えた。





ーーーーーーーーーーーーーーーーー





 あはは……笑えない。やってしまった。それはそれは盛大にぶちかましてしまったぜ!


 もとの姿に戻っただけなんだけど、急激にやりすぎて体の節々が見事に悲鳴をあげている。終わった瞬間、空中に放り出されるのを知ってたけどそのまま戻った。


「ああ、ダサ……」


 段々周囲を見ているのも辛くなってきた。落ちても特に問題ないのでもう寝ることにする。もう、疲れた。





 目が覚めたら檻の中だった。誰か説明プリーズ。これは、あれか。俺が人間じゃないから隔離しました的なあれか。戻らなきゃ良かった。


 首には首輪がはまっていて、勿論手にも足にもある。ご丁重に鎖までついていて……あれ?この首輪ってここまで武骨な物だったか?


 装飾とか一杯付いていた気がする。意味がわからん。


 耳に手をやったら、隼人のイヤリングがなかった。とられたのかな。俯くと少しくすんだ赤い髪が……くすんだ?


 あっれ?もうちょい綺麗な髪色してた気がするんだが。色々なんか変だ。


「いつっ……」


 鎖が指に挟まった。痛い。って言うか、声もなんか変わった?いや、まさかとは思うけど。立ち上がってみる。


 なんか視線が少し低い気がする。うん、間違いじゃないわー。これ進化前の俺だわー。


 見覚えあると思ったらここ、エスプロ帝国の研究所だ。


 エスプロ帝国は俺の世界にある人間国の1つだ。魔法具、魔物の研究なんかが盛んで、俺も対象として狙われた。


「おや、起きられましたね」

「ーーーーっ!」


 檻の前に出てきたのはハンスという研究員だった。こいつは俺を監禁して調べまくってきた事がある。これは、その時と酷く似た状況だ。


 ああ、わかった。追体験か。これはたまに有ることなんだが、俺の記憶が夢としてもう一度体験してしまうやつだ。


 最悪だ。よりにもよってこいつかよ。

 おーい。聞こえてるか?

 ………。


 やっぱり追体験中には邪神も反応出来ないか。

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