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1テルは大体1円です

 私達は次の日にその方と模擬戦をすることになりました。ここで力を見せつけて私が勝ってしまえばこの方は翔太さんに言ってまた奴隷に戻すのではと不安で仕方がありませんでした。


 その方の出したハンデが周囲の枠から出せたら勝ちという、完全に私達を侮った物に、憤りを覚えました。


 昨夜もどこかに出掛けて帰ってこなかったのできっと遊んでいるのだろうとおもい、少々不安ですが懲らしめてやろうかと思いました。


 結構本気で斬りかかったのにも関わらず、その方はほんの少し動いただけで私の攻撃を避けて見せました。


 …………どうなっているんですか?


 その後もいくら斬りかかっても指先で逸らされる始末。最終的にはその指先一本で私は敗北しました。防御特化の方なのでしょう。


 その日の内にマウントベアー退治に出掛けようとまで言い出したのです。最初は無理だと進言しようと思ったのですが、何とか一匹ならやれるかと判断し、いくことを決定しました。


 何とか一匹を私達で仕留めました。全員疲労困憊で疲れきっていました。


 悪夢が、始まった。


 マウントベアーが大量に現れたとき、私はそう思いました。どうやら先程の倒したマウントベアーが仲間を呼んだらしく、13体もの巨体が出てきました。


 6人でかかって一匹なら喩えあの方が一人でなんとか出来ても無理です。確実に殺されます。


 すると、白い髪のソルトという方が、


「僕は2体行きます」


 と言い出しました。最初は全く理解出来ませんでした。全員が各々数を告げると、その方は、6体やると言い出しました。私は止めようとしました。


 貴族にはよく自分が強いと勘違いして獲物に向かっていって死ぬ例がよくあり、それだと思ったからです。


「魔王くらい強くても多分問題ないから」


 ……?


 これは本当に自意識過剰の方だ。そう思いました。私は奴隷の子達を連れて逃げ出そうと思いました。奴隷紋も主人が無くなれば効果はありません。


 そっとバレないようにそれを周りの子に告げようとした瞬間。


「ガアアァァァァ!」

「五月蝿いですよ?ご主人様の耳が壊れてしまう危険性があるので黙ってください」


 先程のソルトという方が巨大な鎚でマウントベアーを上から叩き潰しました。ただの鎚ではないようで、振り下ろされた痕には焦げ目がついており、鎚の尖端がバチバチと電気を纏っていました。


 なんですか、あの武器は。神級と言われても頷けるほどの物でした。


「それ!」

「グガアアアァァァ!」


 不思議な形をした槍に胴体を真っ二つにされ、一瞬で絶命するマウントベアー。


「弱い者には鉄槌を!」


 蒼と呼ばれていた方は強力な魔法でマウントベアーの動きを封じてから、身体中を風魔法で切り刻み、


『属性は風のみですよ?そんな簡単に死なれてはつまらないですね』


 特殊な弓なのか、幾つもの矢を同時に放つ。しかもそれは見えないほどの速度なのです。弓の扱いにもかなり長けているようで、全てが急所に突き刺さっています。


 ……なんて強い方たちなのでしょうか。


 こんなに強い方たちの中に平然と入っていた自分の神経を疑います。


 そして、あの方ですが。


「っと。やっぱり全然力出ないなぁ」


 そんなことを呟きながら何か(・・)をしていく。


 早すぎてなにも見えないのです。手を上に振り上げるといつの間にか下に降ろされていて、それが繰り返される度にマウントベアーの死体が増えていくのです。


「これも使うか」


 残り三匹になったところで背に挿していた巨大な剣、いや、刀でしょうか。それを抜きます。


「あれは……武器?」


 そう呟いてしまうほど、飾りのような物でした。紅く透明な刀身、金色の芯、持ち手にはふんだんに宝石や魔石が散りばめられています。


「よっと」


 消えた。と思ったら私の後ろにいました。


「ひゃあああ!」

「あ、ごめん。此方は大丈夫?終わったからもう安心していいよ?」

「え?でも、三匹……」


 前に視線を戻すと、綺麗に首を切断されたマウントベアーが頭をゴトリと落として次々に倒れました。


「なにが……?」

「斬っただけだよ。あ、回収しないとな」


 空間魔法でマウントベアーをどんどん回収していく姿を見て、私はとんでもない過ちを犯していたことにようやく気付きました。


ーーーーこの方は、強すぎる。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「フォーメーションの確認も出来たし帰ろうか」

「僕もう少し体動かしたいんですけど」

「後で相手してやる。翔太さんたちが疲れてるようだから」

「はーい」


 奴隷娘達の目がなんとなく変わったな。良い方なのか悪い方なのか判らんけども。


「休めたか?」

「あ、ああ………」

「じゃ、帰るぞー」


 また魔法使いの二人を肩に乗せて出発する。


「エレン。転移は使わぬのか?」

「誰かさんのお陰で魔力が足らん」

「そ、そうか……」


 とか言っておきながら外す気配は皆無だ。黄鈴。早くしてくれ。


「え、えっと……」

「トーユちゃん、どうした?」

「貴方は何者ですか?」

「直球だな……」


 この前もそんなこと言われたな。


「好きに考えてくれて良いよ」

「え?」

「俺のことを変人って思ったら俺は変人だし、冒険者って思ったら冒険者だ。肩書きなんてそんなもんだろ?」

「良くわかりません」

「にしし。判んなくて良いよ。だからこそ人は面白いんだから」


 人間も魔族も、精霊も。意志があるやつと一緒にいるだけで面白い。それの方向が喩え戦いに向こうが友好に向こうが。


 大抵の神様は多分そう思ってる。


「面白味を求めて遊んでるだけだよ。俺は」


 それに付き合ってくれているのには感謝している。レイラにもソルトにも、別れたけど隼人だって東だって。

 そこに対立しているものがあるからこそ面白いじゃないか。皆は良い迷惑だけど。


「貴方の事をなんとお呼びすれば?」

「あれ?名乗ってなかった?極星だよ」

「そちらの方はエレン、と」

「あー……好きに呼んで」

「どちらが本当なのですか?」

「どっちも違うよ?」


 は?って顔された。いいじゃん。


「名前も知らない相手と一緒に居たくないか?」

「正直、嫌です」

「くく。面白いじゃないか」

「理解不能です」

「そうだな。そう思ってくれていいさ」


 まだ日は高い。今日は鍛練もつけるから結構良い時間だ。





「マウントベアー討伐依頼を受けたものですが」

「はい。もしかしてマウントベアーが多すぎて討伐隊を組んだ方が良いって言うことですか?」

「いえ、もう終わったので素材の買い取りと証明を」


 受付の人が目を見開く。


「お強いのですね」

「いえ、メンバーが強いので」


 俺は13匹分の討伐証明部位を出す。受付の人の動きが固まった。


「この量を……?」

「えっと、なんかあんまり魔法を使ってこなかったんです。それと、かなり弱かったので」

「鉱毒でもあったのでしょうかね……。直ぐに買い取りますので、他の部分は御座いますか?」

「えっと、これで良いでしょうか?」


 この世界じゃ空間魔法はかなり珍しいみたいだからちょっと躊躇したけど。大丈夫だよね?


 ストレージから熊の買い取り部位を全部取り出す。


「わっ!空間魔法!?…………買い取り始めますね」

「すみません多くて……」


 小分けにするとか考えるようにしよう。





「討伐で一匹十万テリ、13匹で百三十万テリ、買い取り部位の脚と内蔵と腕の肉で一匹5万テリで全部あわせて130+65=195、それに色をつけて二百万テリでいかがでしょうか?」


 うん。相場もそんな位だろう………あの時と物価が変わっていなければ。


「ありがとうございます」

「それと、ギルド長にお会いして頂けますか?」

「………え?」





「翔太さんも代表として付いてきてくれ」

「えええええ!」


 と言うわけでして。俺と翔太さんでギルド長に会うことになった。遅くなるといけないのでレイラ達は帰した。けど。


「エレンー。妾少しご褒美がほしいのじゃが」

「一人で遊んでろ」


 宿が一キロ以上離れているので蒼も一緒だ。何この面倒な感じ。


「蒼。静かにしてくれよ」

「判っておる。エレンの頼みなら断る道理もないしの」

「じゃあ首輪外してくれ」

「………」

「そこは黙るなよ……」


 翔太さんが空気だ。


「どうした?」

「いや、ギルド長って言ったら市長くらいに偉いんだろ?」

「あー。確かにそれぐらいだな」

「緊張しないのかよ……」

「これでも俺一応もっと位は上だし」

「そういえばそうだったな……」


 蒼もだけどな。

「緊張しないなんて羨ましい……」

「する時はするよ?」

「どんな時?」

「勇者勧誘の時とか?」

「意外と普通だった……」

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