マウントベアー退治に出掛けます
「いい依頼無いかな……」
「私は戦えれば何でも」
「怖いこと言うな」
そう言えばパーティ登録してないな。
「翔太さん。パーティ登録してくれない?」
「何で俺!?」
「代表者だから」
「極星だろ普通……」
「血の問題があるから無理。はい、頼むぞー」
血なんか見せられない。光るし、時間たてば透明になるし。
「これなんかどうですか?」
フーちゃんが見付けたのは鉱山のマウントベアー退治。マウントベアーはそのまんまだけど、熊。山に住んでいて、何故か山の植物や岩のみを魔法で操れる。
山から降りるとただの熊なんだけどな。山に居ると危険度は数倍に跳ね上がる。
ランクも不問だ。俺達は登録したてのFランク。アトリートとは違い、Fが最低、Aが最高、それとそれ以上のS。Sランクは世界で三人らしい。
「パーティ登録の名前ってどうするー?」
「適当に決めといてー」
向こうの方からそんな声が聞こえてきたので適当に返す。いいじゃん。適当で。
「マウントベアー退治にしますか。報酬も中々良いし」
それをトーユちゃんに伝えると、少し唖然としたが、何かを思い出したらしく、
「あ、はい。了解しました」
と言ったので決定した。何を思い出したんだろ?
『お前の異常さだろ』
?料理とか?
『バトルセンスに決まってるだろ……』
わ、悪かったな!翔太さんに異常って言われ過ぎてて感覚がおかしくなってるんだよ。
「パーティ名、『秋桜』にしといた」
「コスモス!?かっわいいのつけたな!」
「そんなこと言われても……俺がやってたゲームの最強のパーティの名前つけたんだよ」
「へぇー」
「笑うなよ!」
コスモスって……女性で形成されてたパーティなのかな。
「なに、RPG?」
「そうそう」
「極星様。話が脱線してます」
おっと。いかんな。
「そんじゃあこれやりにいこうぜ!」
「なにそれ?なんかヤバめな雰囲気するけど」
「熊退治」
「無理だろ!俺、狼に殺られかけたんだぞ!?」
「大丈夫だって………多分」
「なんだよそれ!」
「本当に来ちゃったよ……」
「問題ないよ。死なないようにするから」
「説得力がない……」
後ろをちらりと見る。魔法使いの子達が若干疲れ始めてるな。鍛えてもないから当然か。
「クラセント。後ろの二人を乗せていけないか?」
『了解しました。我が主』
クラセントがヒポグリフ形態に戻った。
「「「ええええぇぇぇぇ!?」」」
「あれ?言ってなかったっけ?翔太さんには言ったのに」
「聞いたよ!聞いたけど!本当にヒポグリフだったなんて……」
『私は人肉はそんなに好きでは無いのでご安心を』
「食べるのかよ!」
そりゃあ食べますとも。ヒポグリフだし。人肉を食べるから危険認定されてるわけだし。
「はい、乗って」
「怖いよ……」
「さっきの人なんだけどな……怖い?」
二人揃って頷く。明らかにクラセントが落ち込んだ。
「ごめんクラセント。この子達は俺が運ぶな」
『うぅ………私怖いですか』
「済まんな」
両肩に乗せる。未だ全然子供だもんな。軽い軽い。
「えっと、一人代わりましょうか?」
「大丈夫だよ。この子達二人分より俺の武器の方が全然重いから」
『それは俺に対しての皮肉か!』
そうですけど何か?
「よっこらせっと」
「何で二人担いでるのに俺たちより早いんだよ……」
そんなこと言われてもなぁ。肩の二人はキャッキャしてるし。耳元であまり声を出さないで欲しいんだが。
「…………来る。マウントベアーだな。一体。そうだな。君達と翔太さんだけで仕留めてみろ」
「「「え?」」」
え?なんかおかしいこと言った?
「あの、マウントベアーは熟練の兵士が5人で戦う魔物ですが」
「うん。大丈夫だって。危なくなりそうなら俺がやるから」
不安げだな。問題なく倒せると思うけど。
「最初は私の矢で。その後魔法を」
「それだと決定打がーーーー」
作戦も確り立てられるようだし。ここで俺達が頑張らなくても良いかもな。なんて。
『そんな甘いこと言ってられないだろ』
そうだけどさ。もう正直この子達だけで行ける気がするんだよね。ま、翔太さんの二刀流剣術が最大レベルになるまではここにいるけど。
『適当だな』
はいはい、そうですね!
「来るぞ」
一言かけると全員が配置につく。俺は近くで待機している。
「エレン。妾も少し遊びたいのじゃが……」
……お荷物がついてるけどな。
「なに言ってるんだよ。危なそうだったら入るから邪魔するなよ」
もう面倒。
「グガアアアァァァ!」
マウントベアーの腹部に深く矢が突き刺さっている。
「今です!」
トーユちゃんの声にあわせて全員が飛び出す。翔太さんを一番前にして斬りかかっていく。
マウントベアーが繰り出す魔法を魔法使いの二人がレジストし、出来なかったものも翔太さんが弾く。
「たぁ!」
トーユちゃんの剣が目に当たり、マウントベアーが苦しそうな鳴き声をだす。あれは痛そうだ。
「とりゃ!」
猫の獣人のイムちゃんが自分の爪で引っ掻くが、熊の毛皮には傷がつくものの、そうそうダメージにはならない。
翔太さんが斬りかかり続けているがたまに熊の手で弾き飛ばされている。とは言っても勇者の称号を持っているので殆どダメージは通っていない。
「グガアアアァァァ!」
「早く倒れろおおおぉぉぉ!」
叫びながら突っ込んでいる翔太さんには疲労が溜まっている。ずっと斬りかかってるもんな。お陰で二刀流ランクは3に上がっている。
因みに昨日2に上がったから順調にいけば異世界人補正で計算しても後3日もあれば5になるだろう。
「ギガアアアァァァ!」
あ、変な鳴き方して倒れた。全員息が切れていてもうこれ以上はキツいかな。
「皆お疲れー。大丈夫だったでしょ?」
「最後変な鳴き方してたけど」
「あ、あれ?仲間呼ばれたっぽいよ」
「「「はぁ!?」」」
え?そんなに驚くこと?
「逃げましょう!今すぐに!」
「なんで?」
「私達はもう限界です!ここに居る戦える方たちの人数では太刀打ちは出来ません!」
「大丈夫だよー。魔王くらい強くても多分問題ないから」
「はい?」
「だって……」
ガサガサっと茂みが揺れて熊がぞろぞろと出てきた。
「俺達は、戦闘系の種族が多いからね」
おー。出てきた出てきた。
「ご主人様。僕は2体行きます」
「私は3体」
「妾は相性が悪いので1体じゃの」
『私も武器の相性が悪いので1体で』
「了解。こっちに来てるのは13体だ。残りの6体は俺がやろう」
全員が一斉に武器を取り出す。ソルトは腰の小さくなっていたミョルニルに魔力を通して元の大きさに戻し、俺とクラセントとレイラは各々ストレージから自分の武器を取り出す。蒼は腰の杖を前に構える。
「そんじゃあ、各自決めた分を倒してここに帰ってくること。解散!」
「「「はい!」」」
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最初はこの人が何をしたいのか分かりませんでした。
この人は翔太様のお付きの方らしいのに妙に翔太様に上から目線で、しかも女性を連れ込んでいるのに私達を買ったことに怒っていました。
自分も人のことなんて言えないではないか。そう思いました。
完全に男性らしい仕草をしていたので私は男性だと思い込んでいたのですが、本人曰く女性らしいです。見ていないから本当なのか嘘なのか判りませんけど。
私は奴隷となる前はある貴族の家で使用人をしていたのですが、剣が人よりも出来、近衛騎士の資格が取れるようにまでなってしまいました。
目立ちすぎたのがいけなかったのですね。
仲が良かった筈の使用人仲間に私が主人の部屋に入った等と嘘をつかれ、それをそのまま鵜呑みにした主人に奴隷商に売られました。
「私、何かした……?謝るから助けてよ……」
そんなことを言っても全くの無駄でした。金になるからと直ぐに奴隷に出した主人や、他の助けもしてくれなかった使用人仲間を怨んでいます。いまも。
「ほら、二番!さっさと歩け!」
そんな声と共に身体中に打ち付けられた鞭。傷の痕は一生消えないと思っていました。傷は治ってもその後に残る痕を消すには神官の方にそれもかなり金を積まなければならない高度な回復魔法を掛けて貰う必要があり、そんなことに金を使っていられないからです。
その人は、私達を早々に魔法で綺麗にし、回復魔法までも使いました。神官の経験でもあるのでしょうか?
あれは相当辛い修行を最低でも6年はやらないと身に付かないと聞きます。
この方は一体いくつなのでしょうか?私とそう変わらないような気がしますが。
この方の作った夕食はそれはそれは素晴らしいものでした。見たこともないスープのかかった米に、鮮やかに皿を彩るフルーツ。
「美味しい……」
奴隷になってから食べ物も無い日が続いた程の食生活だったのに、こんなに美味しいものを食べさせて頂けるなんて。私はこの方の評価を今一度見直すことにします。
「極星様。遊ばないでくださいね?」
「え?遊ぶってどういうこと?」
「ご主人様が良くやる、この毒は効くかな……?ってやつです」
「うっ……了解」
俺の考え見抜かれてやがる。




