トーユはトゥーでフーはフォーからですかね?
「え?冒険者になりたい?」
10分休んで魔力も回復したと思ったらいきなり奴隷の子達からそう言われた。
「あー。どうかな。この世界は奴隷の冒険者も珍しくはないけどさ。この人数だからな」
計12人は多すぎる。パーティが3つ作れる人数だぞ。
「それに君たち戦える?」
「私は一応……」
3人は戦闘経験あり、2人は無しか。
「魔法は?」
「簡単のなら」
「成る程」
一応全員戦えるわけだ。逞しいね。
「じゃあ、明日少し俺と手合わせしよう。それで戦えるか俺が見る。皆。それでいいか?」
「「「はい」」」
「じゃあ今日は解散。ゆっくり休め。君達はベットで寝てくれ。ラテ。クラセントのベットで寝てくれ」
「うん」
ストレージから簡易ベットを出す。狭いだろうけど1つのベットで二人寝てもらうとして、蒼はソファーにでも寝てもらおう。
「蒼。ソファーで寝てくれ」
「妾は構わぬが、エレンの寝る場が無いのではないか?」
「別にさっき寝たから問題ない。やることもあるし、皆寝てくれ」
全員が寝たのを確認して警備用ゴーレムを出して置いておく。何かあったら勝手に作動するようになってるから結構エコだ。
取り合えず仕事をやる。ん?思ったより少ないな。今日は稽古が出来そうかな。
「ふぅ、終わった」
夜明けまで4時間くらいか。行こう。警備用ゴーレムに任せて聖十刀を背に挿して外に出る。
「うっ、寒」
クルトア特製ローブを羽織ると寒さが感じられなくなった。高性能すぎだろ。
適当に歩いてあたら近くに広めの草原があったのでそこでやることにする。夜中だからとは言え、冒険者たちなどがこの時間に移動するのも珍しくはないのでバレない保証もないけど。
「よいしょっと……」
鞘から出して振り続ける。たまに方向を変えながら、地面すれすれまで刃を持っていき、止める。それを何度も何度も繰り返す。
下の草などを刈ってしまわないように注意しないとな。最悪の場合バレる。逃げなきゃいけないのは嫌だし。せめて翔太さんの魔王退治が終るかどうか位はここにいないとな。
「その時は……俺はもうパーティにいない方がいいのかな……」
もし俺が魔王と敵対する事になった場合、勝ててしまう自信がある。いや、自意識過剰とかそんなんじゃなくて。今までそういうことをしてこなかったからなんとも言えないけど。
多分レイラを単独で行かせても勝って帰ってくるだろうな。俺がいく必要もない。行ったら行ったでその時だけど。
そんなことを考えながら刀を振り続ける。あ。ちょっと明るくなってきた。この辺で終わっておこう。人目に付きやすくなるし。
「そう言えば公衆浴場って未だ開いてるよな……?」
結構夜中の内に依頼を終わらせてくる冒険者も多い。だから昼以外は大抵開いてる。……行っておくか。
番頭さんに女湯に入る前に止められるかと思ったけど、犬の獣人で、匂いで俺を女だと判断したらしい。
良かったぁ。
「誰もいない!おっし!」
未だ夜の時間帯だから超小声だ。今の内に高速ではいって高速で出よう。
何とか体を洗って、浴槽に浸かれた。さて、出ますか。ん?………やば!声が聞こえる!
この際仕方ない!魔法で速攻で乾かして服を着る。もう扉の前まできてんじゃん!フードを深く被り、なんとか誤魔化して外に出る。ちょっと不審がられたか?
俺は風呂もゆっくり入れないのか……いやまぁ、堂々と入っていっても問題はないんだが。
レイラ達はどうやって入ったんだろう。普通に入っていける容姿じゃないと思うんだけどな。
音を立てないでこっそり部屋に入ると、未だみんな寝ていた。起こさないように気を付けて防音壁を張る。で、そのまま朝食作りだ。
朝はあまり食べない人が多いから昨日のフルーツの余ったやつを幾つかと、パンでいいか。前に家で焼いたパンが確かストレージに入ってたからそれと、ヨーグルトも出しておくか。
時間もあるからゼリーでも作ろうかな。そういえばいいジュースが有るんだよね。
「エレン。もう起きたのか?」
「蒼か。おはよう。俺は寝なくても問題ないから」
「そう言えばそんなこと言ってたな」
「朝食は出来てる。顔を洗ってこい」
蒼を最初としてその内に皆が起き出してくる。それで順次朝食を食べていく。俺は蒼が起きる前に食べた。
「それじゃあ、戦えるかを見るからな。武器は何を使う?」
一人は剣、二人は魔法、猫の獣人の子は爪(武器なし)、蜥蜴の獣人の子は弓だった。全員分の怪我しない武器を創造の能力で作り、手渡す。
「あ、そう言えば名前聞いてなかったな」
「私達、名前ないの」
「無いのか?」
「ご主人様の中には自分で付けたいって人もいるから」
それはそれで困るな。このパーティ人数多いから余計に。
「翔太さん決めてくれ」
「俺!?」
「この子達引き取って来たのはあんただろ」
俺がつけるのは間違ってるだろう。
「奴隷商ではどう呼ばれてた?」
「一番とかの番号でした」
「ふーん。番号を聞いても?」
2、4、8、16、45、62。だった。
「だってさ」
「だから何!?」
「参考としてだよ。本人達も覚えやすいかどうかとかもしっかり考えてくれ。あ、苗字は貴族の証だから付けないでくれ」
「お、おう」
暫く悩んだ翔太さんは、2番の子をトーユ、4番の子をフー、8番の子をエイト、16番の猫の獣人の子をイム、45番の子をヨコ、62番の蜥蜴の獣人の子をロニ。
「安直……」
「い、良いじゃないか!思い付かなかったんだから!」
「くく……いや、いいと思……くふっ」
「笑ってんじゃねーか!」
ごめん。つい。
「ふー……それじゃあトーユちゃん。俺に攻撃して」
「へ?」
「俺に勝てばいいよ。じゃあ俺がこの丸から出たら君の勝ちにしよう」
「そんなハンデあったら勝っちゃいますよ?」
「おおー。勝ってみてくれ。負けたら俺の鍛練不足なわけだから思いっきり来ていいよ」
トーユちゃんは一瞬迷った後、剣を構えて体つきには似合わない速度で間合いを詰めてきた。
「戦士に今すぐにでもなれるね」
「行きます!たぁ!」
斜めに振られる剣の軌道を先読みして狭い輪からでないように気を付けながら避ける。
「ほとんど動いていない!?」
「もっとおいで。君の実力を図る勝負なんだから」
ギリギリで避けるか指先で軌道を逸らしていく。そろそろ此方からも攻めてみるかな。剣を逸らせた指で右肩を小突くように突くと、トーユちゃんが後ろにほんの少し下がる。
「今、何を……?」
「ちょっとつついただけ」
左の人差し指を立てながら笑って見せる。
「さぁ、回避の方のテストも始めようか」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
「よし!問題ないね。次!」
最後は三人まとめて。魔法が使えるフーちゃんとヨコちゃんと、弓が使える蜥蜴の獣人のロニちゃん。蜥蜴の獣人って言っても全身蜥蜴っぽい訳じゃなくて、手足に鱗と、あと尻尾が生えてるくらい。
「三人は後衛職だから、俺に当たったら君達の勝ちでいいよ」
開始すると、的確に額に矢が飛んでくる。狙いはいいな。どうやら矢を俺に当てるつもりらしい。俺の周りを攻撃魔法で攻撃して逃げられなくし、そこを矢でついてくる。
どうやら幾つも連続で射るタイプじゃなくて、一撃一撃を確り当てるのが得意なようだ。
俺は前部、軌道をそらすか首を少し逸らせて避けるなどを繰り返すと、魔法が段々少なくなってきた。矢も同様に。
「参りました」
そんな声が聞こえたと思ったら魔法や矢がやんだ。どうやら矢は全てうちつくしてしまい、魔法使いの子達は魔力切れのようだ。
「多分全員問題ないよ。ギルドに申請しようか」
全員思った以上の力を発揮した。特にトーユ。あの子は判らないが、きっと騎士の家の子だったんじゃないかな?
そこら辺の一般兵など相手にもならない位の強さ。近衛騎士位になれたりするんじゃないかな?
「妾は?」
「蒼は無しな」
「何故じゃ?」
「素性がバレるとヤバイだろ。ギルドに入るというのはそれなりに素性調査もされる。ま、犯罪を犯したかどうか位のものだがな」
それで蒼の素性がバレるとか冗談じゃない。調べた人間を片っ端から記憶消去していかないと。
「蒼は俺の付き人としていてくれ。なにか面倒ごとに巻き込まれたくないし」
「本当の意味で付き人になってもいいのじゃぞ?」
「ロリのじゃは静かにしてろ」
「なぁ!」
『のじゃロリ』か『ロリのじゃ』か何て知らん。俺は最初にあったときにロリだ。って思ったからロリを先にしてるけど。
「黄鈴が急いでくれるのを待つしかないか……」
早くこの首輪を外したい。動きにくい上に魔法も使えない、邪神も外に出られない。何て縛りプレイだ。
「ま、取り合えず今日から依頼を皆で受けてみますか!」
「僕、最近出番が少なくなってきた気がします」
『私の方が少ないです』
「ラテも!ちょっとしかない!」
「モンスターだからでしょうかね……」




