スキルの使い方、それで合ってます?
「また寝ないで仕事したんですか?」
「寝れねーよ……」
書類の量が半端じゃない。俺にとっては睡眠は娯楽だからな……そんなことより仕事しないとって感じだし。
「情報収集終わりました」
「サンキュ。ソルト達は?」
「未だ寝ています」
未だ時間的には早いか。俺には関係無いけどさ。
「休憩してて良いぞ」
「いえ、手伝います」
「休んでも良いんだぞ?」
「もう十分休みましたし、極星様のこれが終わらないと出発できませんし」
「そっか?ありがとう。じゃあこれに判子押してくれ」
あー。精神的な疲れがくるなー。
「極星……ってお前ら部屋一緒なのか!?」
「仕事を手伝ってもらってるだけだ。何かあったか?」
「い、いや。何も。飯はどうなんだ?」
「あ、下で食べてきてくれ」
翔太さんが下りていった。
「終わったー」
「お疲れ様です」
これからどうしようか。候補の国の中から翔太さんに選ばせよう。
「翔太さん。はい。ここから選んでください」
「適当だな……じゃ、ここがいい」
「了解。食べましたね?それじゃあ荷物纏めてきてください」
「それなんだが、昨日剣を王城に……」
「あ、回収したんで大丈夫です」
「早く言えよ!」
さっさと俺たちも朝食をとり、次の町へ進む。馬を買った。
「馬なんて良いのに」
「翔太さんは走れないだろ。全員乗れ」
『我が主!私の背に乗ってください!さぁ!カモンです!』
カモンなんてどこで覚えてきた。
「な!ご主人様!それなら僕の!僕の背に!」
「竜騎士とかと勘違いされるだろ……」
「馬に!馬になります!」
「いや、だからいいって……」
最近アタックが凄い。
「あれ?翔太さんって馬乗れます?」
「乗馬クラブだったんだ」
「意外」
乗馬ができるのか。最近の高校生は違うな。
「じゃあ一頭足りないな」
「「!」」
「じゃあ僕の背に!」
『私の背に!』
「えっと」
「「どっちですか!?」」
「走ってくことにする……」
目に見えて二人が落ち込んだ。と言うことで。
「本当に走るのかよ。絶対無理だろ」
「大丈夫。体力には自信があるからな」
念のためにストレージから聖十刀を出す。
「ぅわ!」
「あれ?見せたことなかったっけ?」
「大剣ってそれのことだったのか……」
「ああ。かなり重たいけどな」
「どれくらい?」
「ん?軽自動車よりは重たいかなぁ」
「冗談だろ?」
「本当。マジ」
まぁ、信じられなくてもいいや。走るぞー。
「そんじゃあ、出発しますかねー」
馬を走らせた皆の横について走る。
「ちょっと行ってくる」
「いってらっしゃーい」
魔物が居たので聖十刀で真っ二つにしてストレージにどんどん収納していく。弱いなー。
「ただいまー」
「お帰りなさーい」
いつものテンションだ。
「いつもこんな感じなのか……?」
「こんな感じだぞ?」
何に驚いているのかは判らんが。
「よし、夜営の準備するぞー」
「こんなところで寝るのか!?」
「ああ、俺たちにとっては当たり前だよ」
手際よく準備していく。翔太さんは完全に分かっていなかったので薪拾いに行かせた。魔物なら問題ない。魔物避けの結界は張ってあるし、もし何かあってもトーラは二刀流スキル与えてるっぽいし、なんとかなるだろう。多分。
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薪拾いって結構大変だ。乾いてないと使えないし、都合良くぽろぽろ落ちているわけでもない。
「あ、見付けた」
とんでもなく時間かかるな……。ボーっと集めてたら目の前に狼っぽいのがいた。状況を理解できなくて俺は狼をただ見ていた。
「グァルルル」
「ひぃ!」
つい、悲鳴が出てしまう。そうだ!剣があった!俺は二本の剣を抜く。綺麗な刀身だ。じゃなくて!
「グァルルル!」
「お、怒ってる!?」
なんで!?俺なにもしてないのに!?
「グルアアアアアァァァ!」
「このっ!」
体が勝手に動いた。どうなってんの!?
「なんで!?」
狼の動きに剣が勝手に反応してくれる。
「てりゃあ!」
はぁ、はぁ。息が切れる。怖い。狼の牙が口元から覗いている。俺が斬った。俺が、殺ったんだ。
暫くその場から動けなかった。すると、近くの茂みから狼が大量に出てきた。群れか!?
また、体が勝手に反応する。けど、俺が認識していないと反応できないみたいだ。後ろからの攻撃とかがたまにかすって服が破けていく。
「い……た」
ああ、どうなってやがる。俺はここで死ぬのか?狼にやられて?俺はバカだ。せめてさっきの間に極星のところに逃げれば助かったのに……。
「グルアアアアアァァァ!」
「馬鹿!血の匂い撒き散らして他の動物が来ないわけないだろ!」
極星だった。左腕を差し出し、わざと狼に噛ませていた。
「お前……腕」
「この服頑丈だから問題ない。っていうかなにやってんだよ。俺たちがいた場所まで血の匂いがしてきたぞ。戦闘手段がないならすぐに逃げないと死ぬぞ?」
腕を狼に噛まれながら俺に説教してくる。どんな腕してやがる。例え服が頑丈でも狼の顎はかなり強い。骨なんか折れるだろう。
「離せこのやろう!」
右腕でぶん殴ったと思ったら重力ってなんだろうって思うくらいきれいに真横に吹き飛んでいった。
「………」
右手を顔の横に持っていき、パチン、と指をならす。すると狼から血が吹き出し、一斉に倒れた。
「はぁ……全く」
何事もなかったかのように言い、俺の方に手を差し出す。あれ?力が入らない?
「腰が抜けたか。よっと」
「?!??!!」
お姫さま抱っこ!?は、恥ずかしい!これマジで恥ずかしい!
「翔太さんの服俺のは入らないな……ソルトのを借りるか」
俺は、もう帰りたいと切実に思った。
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やっぱり駄目だったか。戦闘初心者を放り込んじゃいけなかったかな。
「……なぁ」
「ん?」
「なんであんなに強いんだ?」
「?何を聞きたいんだ?」
「どうやったらあんなに臆せずに立ち向かえる?どうやったらあんな風に剣や魔法を使える?」
「………」
そんなこと考えてたのか。
「そりゃあ、翔太さんとは育ちが違うから」
「育ちなら俺は相当良いぞ」
「家柄じゃなくて、育つ環境だ」
「意味がわからん」
だろうな。まぁ、もういいか。どうせいつかバレる。
「なぁ、翔太さん。誰もいない、なにもない空間に居たことはあるか?」
「自室か?」
「違う。そういう簡単なものじゃない。自室と言う物があるだろ?それは。俺が言ってるのは、時間も物もない。ただの空間」
「……は?」
「ま、判んないと思うけどさ。俺はある空間を造り出す課程でできた存在なんだ」
自分でも言っててなに言ってるのか判んなくなってきたな。
「とにかく、なにもない。叫んでも誰も来ないし、歩いても歩いてもなにもない。終わりもない。そんな世界に産まれたんだよ、俺は。ま、簡単に言えばトーラと一緒なんだよ」
「神様……ってやつか」
「そういうこと」
育ちが違う、というか、種族が違うわけだ。
「人間じゃお前みたいにはなれないのか」
「どうだろ?多分無理だけど」
「じゃあ、俺を鍛えてくれ」
「ん?」
「俺に、戦い方を教えてくれ」
思ってたのとは違う返答が来たな。
「てっきり日本に帰してくれって言われるのかと」
「俺は逃げない。ここで魔王を倒すと決めたんだ。それまでは逃げない」
ほぉ……。
「にしし。俺は逃げない。か」
「何がおかしい」
「いんや?昔俺もそんなこと言ったことがあったなーって」
あのときは若かったな……。
「で、本気なのか?」
「あたりまえだ」
「ふーん。いいよ」
「え?」
「稽古を付けてやる。ただ、先ずは翔太さんがどこまでやれるかを見ないとな……ソルト!」
ソルトならそれなりに勝負になるだろう。と思う。苦手な剣術でやってもらうから多分打ち合いは……できないかな。まぁいいや。
「なんでしょうか?」
「翔太さんと手合わせしてくれ。武器は両手剣で頼む」
「苦手なんですよね……」
「頑張れ」
翔太さん用の片手剣2本、ソルト用に両手剣1本、切れないやつを土魔法で作る。
「はい。これでやって」
二人に渡すと、ソルトと翔太さんが間合いをとる。
「そんじゃあ、翔太さんの実力を見るだけだから、やり過ぎないように。始め!」
スキル効果なのか、本人の意思なのか。翔太さんが間合いを詰める。ソルトは冷静に自分と翔太さんの位置を確認し、死角の方から攻める。
翔太さんの右手の剣とソルトの両手剣がぶつかった瞬間、翔太さんの剣が吹き飛ぶ。
そのまま翔太さんの左手の剣が勢い良く振られるが、ソルトはバックステップで避ける。
そのまま間合いをとったソルトは一気に詰めるがスキル効果で翔太さんがいち早く反応し、軽く振りかぶってソルトを下に叩きつけようとする。
ソルトは飛び上がるように避けて、そのまま大きく振りかぶって翔太さんの首筋にピタリと当てた。
「それまで!」
ふむ。スキル頼み感は凄いけど、自分で反応できているのは良い。
「スキルをうまく使いこなせればかなりの使い手にはなるかもしれないな」
後は、魔法か。本人も使いたがっていたし、教えても損はないだろう。
「流石に初心者森に放るのは間違いだったか?」
「わざとだったのか!?」
「だって戦闘のせの字も知らなかったみたいだし」
「高校生は戦わない!」




