勇者のお供だそうです
「お、おはようございます……大丈夫ですか?」
「ああ、多分……」
フェントにひたすら怒られた。最高神の自覚がないだの、神級の武器を子供に与えるなだの、部屋が汚いだの、戦争回避させたあと放置しすぎだの……後半愚痴だったけど。
よくあんなに声出してられるよな。言ったらまた説教が始まるから言わないけど。
『親の威厳皆無だな!』
うるせぇ。俺だってそんなことぐらい判ってるっつーの!
「俺もう引き込もって良いですか……?」
もうそのレベルですわ。引き込もった瞬間から仕事増えるだろうけど。
「ご主人様!凄いですね!こんなに綺麗なところ来たの初めてです!」
「よかったね……」
珍しくソルトがはしゃいでいる。勿論ラテも混じっている。ただの庭だけどな。雲海とか見えるけど。そりゃそうだよ。空の上だもん。正確に言うともっと上だがな!
「じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい。気を付けてね」
皆がレイラたちを見送る。俺には無い。別にいいけど。こう言うのは形式化したらいけないもんな。
『心が籠ってないもんな!』
はいはい。そうですね!
「準備したかー?行くぞー」
よくよく考えればソルト達は世界線越えるだけでも命懸けなんだよな。よく付いてこようと思えるなー。俺には無理かもしれない。
空中に一人、腕に籠手をつけた緑色の髪の、身長のやや低めな男がたっていた。
「おーい。トーラ」
「あ、代表!」
一応俺は最高神の代表だからこう呼ぶやつも多い。
「後ろの方は人間神ですね。あとは……え?」
「無いだろ?」
「マジですか」
「マジだ」
無いとか有るとかってのは神力の事だ。これがないと普通は世界線なんて移動できない。それを完全に魔力で補っているソルト達は完全に化け物だろう。人のこと言えない気がするけど。
「どうやったんです?」
「こいつらが自分で習得した」
「ええええ」
「俺も驚いたよ。まさか本当にやり遂げるとは思ってなかったんでな」
常識変わるよなー。
「で、条件って?」
「あ、それなんですが。これでは駄目でしょうか?何分適任者が居なくて」
封筒を渡されたので直ぐに目を通す。
「これでいいのか?こんなに軽いのなら寧ろありがたいんだけど」
「本当ですか!?お願いします!」
よし。了承はとったぞ。早速行こう。
「それじゃあ行くよ。3045年で良いんだっけ?」
「あ、こちらをお使いください。直ぐに向かわせますので」
転移門を作ってくれた。
「おお、有り難う」
「お気を付けて!」
「極星様。話が読めません」
「ああ、ごめん。ちゃんと説明するよ」
話し聞いてても判んないよな。
「俺が別の世界に入ると良くも悪くも影響が出るんだ。悪い方の影響だと、トーラに迷惑がかかる事もあるからな。それに対する迷惑料みたいなものを払うんだ」
「あれ?ラント様やアマテラス様に支払ってませんよね?」
「よく覚えてるな……あの人達は良いって言ってくれてるんだ。貸し借りが結構多くて。その分付き合いも長いから友人としてって言う感じだ」
「ご主人様とトーラ様でしたっけ?はそんなに仲が良くないのですか?」
「そういう訳じゃなくて……上司と部下の付き合いって感じだからな。関係は寧ろ良い方だと思うよ?」
「迷惑料ってなんですか?」
「んー?勇者に同行すること」
「「「へ?」」」
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「ここはどこだ?」
学校に行く途中で近道したら突然道が光って……
「やぁ。始めまして」
俺の目の前には見たこともない服を着た緑色の髪の男がたっていた。明らかにオタクだ。なんで緑なのか。って言うか格好いい籠手してんな。
「誰だ?」
「この世界の最高神をしています。トーラといいます。君は勇者としてこの世界に召喚されました」
「は?あんた狂ってんのか?」
「それは酷くないですか……?」
ヤバイ。こいつはヤバイ。オタクの中でも特にヤバイ方の現実を全く見られない妄想野郎だ。
「俺を家に帰せ」
「せめて話は聞いてくれませんか?」
「聞く気になれない。拉致監禁だろ」
「異世界に召喚されて勇者として無双するって良くないですか?」
「はぁ!?夢みすぎだろ」
「そんなこと無いですよ?この世界は『ビラエン』。剣と魔法の世界です」
なに言ってやがる。完全にキチガイだ。頭がいっちゃってる訳だ。もう救いようの無い方に。
「じゃあ魔法とやらを使ってみろよ!」
「これでどうです?」
そいつの手のひらの上に拳位の大きさの火の玉が浮かんだ。
「プロジェクターで写してんだろ?」
「触ってみますか?火傷しますけど」
周囲にはプロジェクターは見当たらない。ちょっと火に近付いてみる。
「あっち!」
「ああ、言ったじゃないですか。はい。ここに手を入れてください」
火が消えたと思ったら水が浮いている。無重力空間かここは。手を突っ込んでみた。ちょっと冷たい位の水。普通の水だった。
「本当に魔法……?」
「手を出して下さい」
手を出すと、火傷の痕が逆再生したかのように戻っていく。
「すご……あれ?これ出来るんだったら最初から冷やす必要なかったんじゃ……?」
「魔法を見せるためにわざとやりました」
この人平気で火傷になるのを待ってたのか。
「どうですか?興味沸いてきたでしょう?」
「わ、沸いてない!」
「嘘か本当か位は見抜けますよ。嘘ですね」
見抜けるってメンタリストか!
「違います」
声に出してねーよ!
「それで、帰して貰えるんですか?」
「貴方はこの世界に少なからず興味を持っている。興味がなくなれば自動的に帰れますよ」
「な!?」
無意識の内に興味を持っていたらしい。不味い。
「此方から言いたいことは1つだけ。魔王を倒していただけますか?」
テンプレキター。
「意味が判らないんだけど」
「魔王を倒してください」
「あんたがやれば良いじゃないか」
「人間がやるからこそ意味があるんですよ。勿論、戦う力も差し上げます」
ラノベかよ。
「今なら、最強の仲間が貴方を助けてくれます!」
「なにその最強の護衛つけますパターン!?おまけ!?」
「向こうの世界に心残りはありますか?」
「いや、……あるわけではないけど」
特に何がしたいとかはない。ただ平凡に過ぎていくだけ。
「お願いします。世界を救う勇者になってください」
少しだけ面白そうだ。テンプレ展開なのは気になるところだけど、平凡な日々を送るよりは絶対にいい。
「……わかった。やるよ」
男のロマンだしな。
「有り難うございます!それで、欲しい力は在りますか?」
「って言うか、さっき言ってた最強の仲間って何なんだ?」
「上……じゃなくてとにかく最強です」
「今何良いかけた!?」
じょうって言ったよな。じょうから続く言葉ってなんだよ。判らん。
「ま、まぁ!力は何が良いですか?」
「流したな……その最強の仲間ってのはどんな戦い方をするんだ?」
折角の力が被ってたら意味無いしな。
「え?えーと……なんだろう?」
「せめてそこは調べとけよ!」
この人大丈夫かよ!?
「そいつは魔法使えるのか?」
「あ、あー。使えると思います……?」
「疑問系かよ……逆にどうやって普段戦ってる?」
「えっと。大剣振り回してますかね……」
怖。大剣振り回すとか完全に異世界だな。
「仲間ってのは一人か?」
「えっ。二人と三匹……?」
まてまてまて。単位がおかしいぞ。
「三匹?」
「三匹」
「人間以外も混ざってんのか!?」
「あ、はい」
何てこった。
「大丈夫ですよ……多分」
多分っていった!こいつ今多分って言った!
「……じゃあ、剣が使えるようになりたい」
「剣ですね。形はどんなのをご希望ですか?」
「そうだな……二刀流とか」
「ふむふむ。面白そうな組み合わせですね」
自称神様の手のひらが光ると、二本の剣が出てきた。
「これを貴方に差し上げます。神級の武器です。これを使える力を貴方に同時に差し上げましょう」
「おお……なんか判らんけどすげぇ」
光ってる。
「では、これからの貴方に幸あれ。それと、呉々もお仲間さんを本気で怒らせませんようにお願いします」
「ああ、わかった……ん?最後なんて言った?」
なんかとんでもないこと聞いた気がする。と思ったら目の前が真っ暗になった。
「……ん?」
目が覚めたらだだっ広い原っぱに寝転がっていた。どこだここは。周りを見渡すと二本の剣が落ちていた。……夢じゃなかったか。
「これじゃあ最悪盗まれるだろ」
ここで最悪なことに気がついた。
「どうやって運ぼう……」
ゲームとかなら腰に刺すだろう。俺の服は学校の制服のまんまだ。刺すところなんて勿論無い。何てこった。
「っていうか最強の仲間って何なんだよ。誰もいないし。まさか自分で見つけた仲間が貴方の最強の仲間なのですとか言う訳じゃないだろうな!」
だだっ広い原っぱに俺の声がむなしく響く。すると、少し離れたところからガサガサと音がした。
…………行ってみるか。
俺は剣を抱き締めるように持って歩いていった。
「いやー、時間掛かったな。代表待たせちゃったな」
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「極星様。暇なので探検にいってきます!」
「あー。いってら」




