出発です!
あの海水浴の後、俺はすぐにあのビキニを封印した。
「もう着ないんですか」
「着るか!」
ビーチバレーやったんだけど、グラスさんの視線が完全に俺の胸に向いていた。エ、エロオヤジ……!
まぁそんなことはどうでもいいとしまして。
もうすぐ季節は秋。この世界を発つ時になった。
「極星様。大切なお話があります」
「どうした?」
「ソルト君達が異世界移動を覚えました」
「……うそ」
ガチでやり遂げたらしい。神以外で異世界移動を覚えたのってこれが初めての記録じゃないか!?
「まじで覚えたのか……こんな短期間で良くできたな……」
「執念の結果ですね」
「いやー。まさか半年在るか無いかくらいの時間数でよくやったな」
「ご存じでしたか」
「ククク。当たり前だろ。俺を誰だと思ってる?」
ギリギリだけどマスターしたか。すげぇ。
「隼人に悪いな……」
「そうですね。罪悪感は半端ではないですね……」
隼人だけ連れていけないなんてな。大丈夫だろうとは思うけどさ。
「そんじゃあ、明後日に行こうか」
「そうですね」
明後日に決定した。
「明後日に出ます」
「もう止められないんだろう?」
「すみません。もう決めましたので」
「あの家は隼人君に?」
「はい。隼人をよろしくお願いします」
グラスさんはなにも言わなかった。言わないでくれた。本当に感謝してもしきれないな。俺はコッソリグラスさんの最近読んでいる本の中に白金貨を50枚ほど突っ込む。
「ありがとうございました。グラスさん」
次はカフェだ。
「キョクセイ君。何処か行っちゃうんでしょう?」
「明後日に出ます。これはこの店で使ってください。それと、このお金は皆さんで分配してください」
店のお金、白金貨100枚。おばさん達に払う給料、白金貨50枚を渡した。
最後のステージ。ギターで弾き語りすることにした。
いつも通り前に出てお辞儀し、
「今日は突然ですが、ステージに立つのはこれで最後にします。これからは、吟遊詩人の方などがここで弾いてくれることになればと思います」
ざわつく。一旦無視して椅子に座り、魔力を込めながら指を動かす。
曲はチェンジ・ザ・ワールド。定番でしょ?お、俺だってクラシックばっかりやる訳じゃないんだからね!
「後は隼人か」
学校に行ってみると直ぐに通された。グラスさんが言っておいてくれたらしい。
「ここでお待ちを」
案内された部屋は前と同じ部屋だった。違うところは何故か大量に置いてある御菓子。テーブルが埋め尽くされてるんだけど。
別にお腹はすいてないからお茶を飲みながら隼人を待つ。来たタイミングが丁度授業中だったから結構時間が経っている。
「極星?」
「お、隼人。ってまた増えてないか?」
後ろの女の子が3人位増えている。
「行くんでしょ?」
「ああ。明後日だな」
「……ぼくはやっぱり駄目なの?」
「駄目だ。それは譲れないぞ?お前の体に負担がかかるからな」
それに、隼人にはここの生活が合ってるだろうし。
「家はお前のものだ。好きに使え。家具とかは埃とかが放置しておくと大変なことになるから持ってくけどな」
「……うん」
「それと、金庫に俺が貯めた分が結構入っている。無駄遣いはしても良いくらいだけど、あんまり散財するなよ?」
「うん」
なんか旅に出る子供を心配する母親みたいになってるな。
「最後に。俺が楽器を弾くことは勿論知ってるよな?」
「うん」
「お前にも俺が作ったやつをあげよう。お前なら多分直ぐに吹けるようになる」
隼人が一番気に入っていた楽器。フルート。横笛だな。銀色の木管楽器だ。
「フルート?」
「ああ。お前ならきっとうまく使えるだろう。それと」
ストレージから1本、剣を出す。
「神剣だ。これをお前にやる」
「神剣……?」
「この世界では最高の剣だろうな」
魔剣にするか聖剣にするか迷ったあげく、神剣を作ってしまった。
「何処にこんなのが……?」
「作った。まぁ、そんなのはいいや。お前なら正しく使えるだろう?」
本当ならもっと後で渡そうかと思ったけど、先に渡しておく。この剣は持ち主を選ぶ剣だ。登録された持ち主のみにしか扱えない。簡単に言えば他のやつが持っても精々打撲武器だ。
「俺の魔力が入ってる。いざとなったら使え。結構な力を発揮してくれるだろう」
「ぼくには似合わないよ……」
「なんだ?珍しく自信ない?」
いつもなら使うって即行で言うけどな。
「噂がこっちに広まるくらい強くなるんだろ?だったらこれくらいの武器持ってないと示しがつかないぜ?」
「……わかった。貰う」
「ククク。頑張れよ」
『意外と渋ってたな』
あれが普通なんじゃないか?クラセント達がアッサリしすぎなんだって。
『そうかもしれんが……』
まぁ、あれをどうするかは隼人自身が決めることだ。俺は関与しないさ。
「忘れ物無いか?」
「無いです!」
二日後。俺たちは世界線に向かう準備をしていた。家具とかは全部ストレージに突っ込んだから家の中がスッカラカンになった。
「極星!」
「隼人?学校は?」
「抜け出した!」
「おいおい」
隼人が制服のまんまで追い掛けてきた。
「これあげる」
隼人が持ってきたのは少しだけ形の歪な小さなイヤリングだ。
「魔道具じゃん」
「作ったんだ」
学校では魔道具の作り方を教えてくれるのか。すげぇ。進んでる。俺なんて自分で編み出したんだけど。
「そっか。じゃあこっち貰う」
右側のイヤリングだけ貰った。
「こっちは?」
「持っとけ。お前が作ったんだろ?」
「うん!」
隼人も自分の左側に付けた。
「ぼくやるよ!ちゃんと噂を聞いてよ!」
「ははは。判った判った。じゃあな」
「隼人君。怪我しないようにね」
「頑張って」
『病気にはしっかり対策を』
「バイバイ!」
俺、レイラ、ソルト、クラセント、ラテの順に挨拶を終える。ラテが喋ったのはここが初めてだな。実際は結構前から話してたけど書く暇なくて。じゃなかった。
「世界線ですか……」
「地味だろ?」
世界線の所まで転移し、神力を解放する。
「行くぞ?」
「「「はい!」」」
まぁ、一旦家に帰るけどな。
「大丈夫か?」
「ゼェ……ゼェ……ゼェ」
クラセント達は息が切れている。世界線移動なんて普通は無理だからな。負担もそれだけ大きいし魔力も相当使う。
「歩けるか?」
「だ、大丈夫です………」
ギリギリに見えるけど大丈夫なら良いや。
『少し位心配してやれよ』
それはそうだけど。
「ここがご主人様のお家……」
『綺麗です』
「おっきい!おっきい!」
ラテはおっきいとしか言ってないな。
「はいるぞー」
フェントの部屋を軽くノック。
「どうぞ」
声が聞こえたので入る。
「精霊神様。お久し振りです。後ろの方々はソルトさん、クラセントさん、ラテさんですね。お初にお目にかかります。魔神のフェントと申します」
「「「よろしくお願いします」」」
「精霊神様。少しそこに座ってください」
顔合わせが終わった瞬間、フェントの説教が始まった。
「前回の勇者の件の強行突破もそうですが、貴方は自身の神力の多さを分かってないんですよ!そんなんだから……」
たっぷり一時間説教された。
「はい、すんません……」
「大体貴方は最高神としての自覚がーーーー」
「その辺にしておいてあげてください」
レイラが助けてくれた。
「ソルトさん方。お見苦しいところをお見せしましたね。客間に滞在なさってください」
「え、あ。はい」
俺は放置ですか……?
「俺は……?」
「まだ終わってませんよ?精霊神様?」
「ひゃ……」




