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気まずい。これは気まずいです。

「世界……?」


 ソルトには教えたことなかったな。


「前見せただろ?俺が鳥になったとき」

「あの変身術は見事でした」

「あれが本当の姿なんだ。要は、普段ずっと人間に変身してるだけ」

「僕と一緒ってことですか……?」

「そういうこと」


 確かにソルトと一緒だな。意識したことなかったが。


「それは理解したとして……世界移動って?」

「そのまんまだ。異世界に行くってのが正しいかもな」

「そんな魔法が在るんですか?」

「魔法じゃない。それができる体なんだ」

「……どう言うことですか?」

『神そのものなのですよ、ソルト』


 クラセントが答えてくれた。


「そうでしたか」

「驚かないんだ」

「神でもなきゃご主人様くらい強くはなれないでしょうし」


 確かに人間離れしすぎだったか。


「俺は異世界の精霊神でね。レイラは人間神だ」

「いつもやってるお仕事って」

「神様業務って言えば良いのかな?」


 それから俺はクラセントとソルトになんでこの世界に来たのか、なんで出ていくのかを話した。


「そんな!?隼人は!隼人はどうするんですか!?」

「隼人はもう一人でも大丈夫だよ。過保護になりすぎだ。グラスさんも居るし、その辺は問題ないだろう」


「じゃあ……僕達は?」

「ソルト達は……連れていけない」

「「何でですか!」」

「ピイ!」


 そう言われるとは予想してたけども。


「……ソルト達はこの世界の生き物だ。何処にでも居るとは思えない」

「どう言うことですか」

「隼人の産まれた日本と言う世界は魔法がない。モンスターが居ない。それどころか、人間以外の生き物は獣だけ」

「人間だけの世界……」

「隼人はこの世界に置いていくのか、希望するならば日本に連れていくが……多分ここに残るだろう」


 そこで話を切り上げる。もう今日はなんとなく話さない方がいいだろう。


「突然ですまん……今は記憶に留めておく位にしておいてくれ」


 そのまま俺は自分の部屋に向かった。




ーーーーーーーーーーーー




 僕にも力があれば………。もしも世界を移動できるほどの力があれば僕だってついていける資格はあるのに……。


 リビングにはご主人様を抜いた全員が椅子に座って誰も話せないで居ました。


 なんでご主人様は僕に自分のことをほとんど教えなかったのかこのときに判りました。


ーーー僕が力不足だからだーーー


 僕が弱いから。僕が力を持っていないから。


 だからご主人様はなにも言わずこの6年間ここに居続けたんだって。今更ですが判りました。


「クラセント。僕達はやっぱりお荷物なんですね……」


 もうそう言うしかありませんでした。涙がどんどん溢れてきます。僕がお荷物だからこの世界に置き去りにするつもりなんでしょう。ご主人様は良くも悪くもお人好しです。今まで僕に優しくしてくれたのは只の良心に従ってのこと……。


 僕なんかもうどうでもいいのでしょう。


「ソルト君……」


 レイラさんがこちらを見つめてきます。僕の考えがひねくれてるんでしょうね。なんだかその顔が無性に腹ただしく感じるのです。


「レイラさんは!レイラさんはご主人様と一緒に行けるから!僕なんかお荷物としか考えてないんでしょう!?」

「ソルト君……」

「こんな面倒なやつが無理なことを否定して騒いでるんだって思うんでしょう!?」

「そんな!」

「僕はそんな浅はかな考えで動いていません!僕は……!僕は……!」


 ああ、なんて僕はバカなんだ。いままでご主人様の足枷になり続け、挙げ句の果てに泣きじゃくりながら騒いでいる。こんな駄目ドラゴン捨てられて当然なんです。寧ろなんで今まで愛想をつかされなかったのか甚だ疑問に感じるほどです。


 レイラさんに罪を擦り付けて、何が楽しいんだ。僕はこんなことしたくもないのに……。


『ソルト!いい加減にしなさい!』

「クラセント……」


 普段は殆ど大きな声を出さないクラセントが怒鳴り付けてきて僕は我にかえりました。

 気が付いたらレイラさんに掴みかかっていました。ごめんなさいが、言えませんでした。


『私達は確かに我が主(マイ・マスター)の足枷かもしれません。けれど、それは私たちの責任であってレイラ様はなんの関係もありません!頭を冷やしなさい!』

「クラセント……ごめんね。レイラさん、すみませんでした」

「構いませんよ?私も極星様が勝手に出ていったとき暴れまわって下界にまで影響が出てしまったことが有りますし。お気持ちはよく判ります」


 暴れまわって下界にまで影響が出てしまったって……どれだけ本気で暴れたんでしょうか。


「ごめんなさい」

「構いませんって。それと、私から1つアドバイスです」


「貴方達も自分で異世界に行けるよう練習すればいいんですよ」


「「へ?」」

「ピリュ?」


 どうやっても僕には無理だと思うのですが。


『レイラ様はご存じないのかも知れませんが、異世界移動ができるのは神のみです。その力を持たない私達はどうあがいても無理でしょう』


「絶対にそうとも限りませんよ?勇者の存在はご存知ですか?」

「それぐらいは」

「異世界から人を呼べるのに此方からは無理でしょうか?」

「でもあれってランダムなんじゃ?」

「この世界がどうかは忘れてしまいましたが極星様の作った世界は極星様が自分で赴き勇者を勧誘していました」


 つまり、選ばれる人間は偶然じゃなく必然……?


「簡単にいえば人間には負担がかかりすぎるので自分の意思で世界移動は無理です。でも、人間以外の貴方達ならば出来るかもしれません」




ーーーーーーーーーーーー




 下で何を話してるんだろう……さっきソルトっぽい叫び声が聞こえたんだけど。


『気になるなら見に行けばいいじゃん』


 そんなことできるか!雰囲気悪くしたのは俺なんだし。


『へたれだなー』


 男は知らんが、女に使う言葉ではないとグラスさんから聞いたぞ。


『お前に性別を当てはめること自体が間違ってる』


 否定できんな!ただなんかイラつくぞ!




ーーーーーーーーーーーー




「それで、本当に僕達も?」

「可能性は在ります。ただ、神の気質を持った私でも5年は掛かってしまいました。この3ヶ月でできる保証はありませんし……」

「「やります!」」

「ピリュウ!」


 なんでもいい!ご主人様についていけるならなんだってする所存です!


「そうですか。それでは早速特訓開始といきましょうか?」

「時間が惜しいです。今すぐにでも始めましょう!」

『問題は場所ですね。空間魔法を使って時間経過を遅らせる空間を作りましょう』

「ピイ!ピリュウ!」


 僕達はやりますよ。ご主人様!貴方が例え鬱陶しいと言ってもマグマの中であろうが地獄の果てであろうがついていきますよ‼




『完成しました』


 いつもの数倍の速度で魔方陣を構築していたクラセントが空間を完成させました。


「この中の時間は?」

『この中での1時間が此方の20分です。これが限界でした』


 成る程。ご主人様ずっと入っていることはできないから1日練習できても6時間ほど。つまり、僕たちが1日に練習できる期間は18時間でしょうか。


「つまり、本当の期間は最大で90+67=157日。半年もありませんね」

「それでもやるつもりですか?」

「「勿論です」」

「ピイ!」


 そのときから特訓が始まりました。ラテは話すところから。クラセントは時空移動の魔法を、僕は時空固定の魔法を。

 時空移動の魔法は異世界と異世界の間にある空間を移動するものです。神の気質を持った人ならば覚えなくてもいいのですが、僕達はただのモンスターなので覚えないと無理なのです。

 時空固定の魔法は、空間を一時的に歪めてそれに固定する魔法です。


 少し分かりにくいですね。簡単に言えばいつも流れ落ちている水をコップに移すような作業です。形のきまってない空間を一時的に固まらせてそこに飛び込むのです。これがないと時空間の流れにのみこまれて死んでしまいます。


 僕達は何時間も練習し続けました。ご主人様は気づいたのでしょうか。最近妙に1人でお出掛けなさるのです。カフェに行ったり、買い物をしていたり。


 全然知らなかったのですが、少し遠出をしてある村に行き、そこら周辺のモンスターを狩りまくって感謝状を頂いたとかなんとか。ご主人様の事だから予想ぐらいはつけているのでしょうか。


 前に空間を開けっ放しにしていたら知らないうちにご主人様が帰宅してきてそれを見つけてしまいました。


「ご主人様……えっと、これは。その」

「男同士でなんかしてんのか?じゃあ俺は入るわけには行かないな」


 笑ってご自分の部屋に行ってしまいました。確実に気付かれてるのか、全く気づいていないのかいまいち良く判りません。




ーーーーーーーーーーーー




「ふぅー」


『どうした?』


 いや、あれ完全に時空移動の練習してるじゃん?


『それぐらいはやるだろうって知ってただろう?』


 それもそうだけど。大丈夫なのかなって。あんだけ体を痛め付けてたらいつか壊れそうだ。


『心配し過ぎだ。あいつらは人間じゃないんだから。俺達が一番人間離れしすぎだけど』


 まぁ。そこは否定しないよ。


『隼人との面会って明日だっけか?』


 そうだよ。なんて言おうか……。

「隼人は理解できるかな……?」


『理解はできるんじゃない?あいつあの年にしてはメチャクチャ頭良いし』


 それはそれで心配だな……。

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