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俺は一応カフェのオーナーですよ?

 忘れてた……こんなに金持ってたっけ?


 久しぶりに金庫を開けてみたら、白金貨が大量に置いてあった。そうだよな。最近いくら入ってるかなんて全く確認せずに皆に、これ入れてきてーって軽く頼んでたからな……。


「いくらだよ」


『んーと、2000枚は越えてるかな』


 2000枚?えっと……。


『40億だな!』


 ああ、うん。思考が停止してたよ。そんなに稼いでたっけか?全然思い出せない。けど。毎日何かしら高ランクモンスター狩ってたからな……。


「もういいや……カフェ行こう」





「キョクセイ君!迷宮に行ってたんじゃないの?」

「もう終わりましたよ。少し稼いだ分をお裾分けしにきました」

「助かるわー。いくらかしら?」

「白金貨10枚ですね」

「え?」

「白金貨10枚です」


 おばさんの表情が固まる。


「そんな大金!?取っとかなきゃ駄目よ!?」

「いえ……白金貨なら一杯……」


 軽く2000枚は越えてたからな……。


「冒険者ってそんなに儲かるのね」

「俺もビックリしましたよ……久しぶりに金庫を開けてみたら白金貨が……いや、なんでもないです」


 コーヒー豆を買うお金は結構いる。この辺にはコーヒーの木がない。というか気候があわないから俺が仕入れてきている。最近はもう此方に送ってくれる。いい農家さんと契約できた。その代わり、輸送料も膨らむから高い。

 今のところ、カフェの売り上げはいいけど、コーヒー豆の仕入れる値段が高いので利益は全然ない。


 それどころかちょっとでもお客さんが少なかったりすると寧ろマイナスになってしまう。値段を上げるのも考えたけど、貴族の方なら兎も角、頑張ってお金をためて飲みに来てくれるお客さんもいるわけで。


 相変わらず俺が冒険者とか演奏をし続けないとこの店は速攻で潰れてしまう。かなりの綱渡りだ。


「これでコーヒー豆のお金には困らないですよ」

「困らないけど……本当にいいの?」

「はい。今回の探索でかなりお金が入ってきたので」

「無理はしないでね?君が居なくなったらこの店直ぐに潰れちゃうから」

「はい。気を付けます……」


 今日はチェロにしようかな。最近弾いてないし。


 前に出てお辞儀。常連さんが結構いる。このカフェは俺の演奏を聴きに来てくれる人も居て、そういうのも話題になり、結構リピーターが多い。


 俺は椅子を出して座り、チューニングを開始する。この音は外にも少しだけ漏れるようになっている。俺がここで演奏するかどうかは完全に俺の気まぐれだ。だからわざとらしく外に漏らして今演奏してますよーって見せつけて客を引き込む。別にズルくはない。


 この店は運が良いと演奏してくれるって感じなので、演奏を聴きに来てくれたのに俺が居なくて店員のおばちゃんに噂と違うと怒鳴りかかる人がいたらしい。看板にも書いてあるのに。


『演奏を聴けるかどうかはあなたの運です』って。


 どうしたかって?丁重に帰ってもらったよ。


 今日はチェロだから、サン・サーンスの「白鳥」にしようかな。この曲は動物の謝肉祭って言う組曲の中にある曲で、かなり有名だ。知らない人はあんまり居ないんじゃないかってくらい。

 因みにチェロはヴァイオリンを大きくしたやつ。座って弾くもので、地面に立て掛けて使う。掛けた魔力は「反響」色んな所に響かせられる。


 7曲くらい弾いて舞台から降りる。今日は折角だからキャラメルラテでも飲もうかな。俺結構甘党で、砂糖をそのままでも全然食べれる。前にちょっと食べたらウェント(月神)にストレスでもあるのかと本気で心配された。

 なんでストレスがたまる=砂糖を食べるなのかは不明だが。


「今日は飲んでくの?」

「はい。今って休憩ですよね?」

「そうだけど?」

「じゃあ自分で作ってきますので、休んでいてください」

「え?別にいいわよ?」

「いえ、コーヒー豆の状態とかも見ておきたいので」


 キャラメルラテを作るついでに機械のチェックをする。ん。ちょっと緩んでるかな。


 そんなこんなで機械の調整をしながら作って端っこの席に座る。うん。もうちょっと甘くてもいいかな。でも普通の人ならこれくらいか?


『お前の舌にあわせると食べ物が甘ったるくなるからな』


 お前にあわせると辛くなるだろ。


『辛いものは良いじゃねえか!』


 あんなん舌の感覚が鈍くなるだけだろ。


『それ言ったら甘いものだって食ってると気持ち悪くなるじゃん!』


 ならない。って言うかお前は俺の体使わないと物の味分かんないじゃねーか。お前が乗り移って好き勝手食うと喉とか舌とかが痛くなるんだよ!


『ハン!お前なんか……』


 なんか言い争ってたら気配がした。感じなれた気配と、今さっき会ったばかりの気配……振り向くと、入り口にあのお嬢さんとグラスさんがいた。


 なんでいるんだよ……俺の店だからか?


「いらっしゃいませ」

「ここがあの王都で有名なカフェですわね!」


 おおぅ。王都で有名って、このカフェの口コミなのか、俺が王子を負かしたのかどっちか判らんな。取り敢えずフード被って後ろ向いとこ。


「何になされますか?」

「これ!これがいいですわ!」

「苦いですが大丈夫ですか?」

「私は大人ですもの!そんなの関係ないですわ」

「では私ももらえるかな?」

「はい。ブラックコーヒー2つですね」


 ブラック頼んだのかあの子。飲めるのか?俺は飲めるけど。甘党だからといって苦いのが嫌いなわけではない。辛いのが受け付けられないだけで。




「キョクセイ君。ちょっといいかしら?」

「どうしました?」

「なんだか機械の調子が悪いのよ。見てもらえる?」

「え?さっき点検しましたけど」

「そっちじゃなくて、なんだっけ?れじすたー?」

「あ、そっちですか!」


 一気に残りを飲んでレジを見に行く。あー。これは中に部品が入り込んだな。


「これ一回分解するしかないですね」

「今お願いできるかしら?」

「任せてください。チャッチャと終わらせますので」




「お待たせしました。ブラックコーヒー2つです」


 お。あの子にブラックコーヒーがいったな。手を動かしながら会話を聞く。別に盗み聞きではない。


「これがコーヒーですわね!」

「そうだよ。熱いから気を付けてね」

「熱いですわ!」

「気を付けてね」


 あんまり話聞かない子だな。


「に、苦いですわ!こんなに苦いものよく飲めますわね?」

「大人は苦いのがいいって言うからね……飲めない?」

「無理ですわ……もう少しまろやかになって甘くなってくれればいいのですが」


 もうそれはブラックじゃない。


「残すしかないですわ……」


 何!?勿体ないぞそれは!コーヒー豆の仕入れにどれだけ苦労したか分かってないからそんなこと言うんだ!……仕方ない。行くか………。


「お客様。ミルクとお砂糖を入れては如何でしょうか?」

「それがいいわね!ってさっきの男みたいな女冒険者!」


 男みたいな女冒険者って長すぎだし、なんか嫌なんですけど。


「せめて冒険者にしてください」


 多分砂糖と牛乳必要だろうと思ってたからもう既に持ってきてある。


「なんでここにいるんですの!?」

「なんでって。ここ、自分が経営してる店なので」

「ここを!?」

「ええまぁ。おっと、今レジ直してる途中だった。それではごゆっくりどうぞ」


 レジを使えないままだと正直困る。さっさと直さないと。




「まさかここの経営者だったなんて……驚きですわ」

「フフフ。驚いたかい?」

「当たり前ですわ!あら?それじゃあVランク冒険者を負かしたのはあの冒険者なんですの?」

「そうだよ。極星君よりも強い人はこの世界には居ないんじゃないかな?」


 グラスさん。それは買い被りすぎです。


「なんてこと……そんな風には見えませんわ」

「君にはそう見えるだろうね。極星君の強さを直ぐに見分けられる人はかなりの大物くらいだろう。隙があるように見えて全く隙がない人なんだ」

「よくわかりませんわ」

「そのうちわかると思うよ。極星君のパーティはたった数日で17階層の迷宮をクリアしてしまう強さがある」


 別に口止めしてないしいつか判るからいいやって思ってたけどグラスさんその辺りの口が軽すぎる。


「17階層!?何年もかけてやるようなものだと聞きましたわよ!?」


 マジですかー!ゆっくり探索していれば良かったな……。


「そうそう。極星君の本当の強さは誰にもわからない。どんなモンスターも本気を出す前にやられてしまうらしいからね」


 事実ですけど。もう少し隠そうとしてほしいです。





「でーきた!」


 分解作業中に盗み聞……じゃない。聞こえてきた話に微妙に集中しちゃったけど此れぐらいなら手元見ないでも出来るもんな。

 おっと、会計するお客さんがいるみたいだな。


「銀貨1枚と銅貨3枚になります」


 やっぱり高いよなー。まぁ、これ以上下げると俺が投資していかないと無理だし、これ以上あげると飲みに来てくれるお客さんに悪いしな。


 日本円にすると約1300円だ。高いでしょ?


「確かに。またお越しください」


 ん。足音が聞こえる。これはグラスさん達だな。


「極星君。会計を頼めるかな?」

「はい。ご一緒で?」

「ああ。頼むよ」

「ではブラックコーヒー2杯で銀貨1枚と銅貨2枚になります」


 グラスさんが財布をとりだす。


「それって高いんですの?」

「結構庶民には高いんですよ。この店はギリギリですのでここより下げられないんです」

「お店は人気なのに?」

「コーヒー豆の仕入れ値段が高いので利益は殆どでないんです」

「ここの従業員の給料とかは?」


 言っていいのかな?まぁ、いいや。


「なんとか遣り繰りして。無理だったら自分の財布から出してます」

「自分の!?」

「冒険者なのでそれなりに稼げるんです。演奏料だけでもやっていけたらいいんですけど。あ、銀貨1枚と銅貨2枚丁度ですね。ありがとうございました」


 お嬢さんがこっちをすごい見てくる。


「じゃあなんで店を?」

「何ででしょうね?最初は楽器を弾くためでしたけど。今は多分お客さんが来てくれるからですよ」

「偽善者なのね?」

「言い方悪いですよ?まぁ。そんなところです」


「それでは、またお越しください」

「レジが壊れるなんて」

「実はお金が出てこなかったのを無理に引っ張ったのよ」

「そりゃ壊れます」

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