歪み
俺はアマテラスさんと一緒に歪みの位置まで来た。
因みに、時間自体はもう止めている。
流したまんまだと魂が全く別の世界へ紛れ込んでしまう可能性がある。
歪みを前にすると体が震えてくる。
あの時は本当に運がよかっただけ‥‥‥。今度はどうなるかわからない。
大丈夫、大丈夫。
歪みを直すのはもう何十回も成功している。
落ち着け、大丈夫、大丈夫。
「‥‥‥恐いの?」
アマテラスさんが俺の顔を覗きこんで聞いてくる。
俺は今、全然力が使えない。
体を常に修復しているせいで、本来の10%位の力しか出ない。
だから余計に恐い。
「ねぇ、調子‥‥‥悪いの?」
実は今俺が死に掛けている事をアマテラスさんは知らない。
周りが常にこき使ってくるけど、今の俺はちょっと強めの
神力を解放した瞬間、ポックリ行っちゃうぐらい弱い。
「僕が‥‥‥やろうか?」
「いいえ、これはこちらの落ち度です。私がやらなくては」
本当にそうだ。アマテラスさんは何も悪くないのにこちらの尻拭いをしてくれる。
すると、体に激痛が走る。
これ‥‥‥
「傷、物凄く深いね」
「っ‼」
これ、前にもあった痛みだ。
アマテラスさんの特殊能力の1つ。
「有罪判定。有罪確定」
この有罪判定っていうのは相手の嘘を見抜く能力だ。
ただ、嘘じゃなくて隠し事だと、隠している事を口走ってしまったり、俺みたいに傷を隠したりしているとその傷が滅茶苦茶痛む。
本当に拷問並みに痛いから勘弁して‥‥‥
「何があったか‥‥‥教えてくれる?」
「うぅ‥‥‥」
話しかける前に能力解除していただけないでしょうか。
声が出せないくらいのレベルで痛いです。
「あ、ごめん」
やっと解除された。
「ゲホッ、い、いえ‥‥‥」
首が絞められたみたいになる。
「君がそこまで弱ってるなんて‥‥‥」
「‥‥‥死にかけてるんですよ」
「うん、最初見たときから変だと思ってた」
まじか。
流石はアマテラスさん。
「ま、まずは歪みを直しましょう。‥‥‥それから、全てお話します」
「わかった」
歪みを直すには、神力を使う。
今回は神力を俺が使えないので、アマテラスさんの補助になる。
まず、歪みの周りの時間を全て止める。
これは魔力で何とかなるので俺がやる。
そのあと、アマテラスさんの神力を流し込んでいく。
これの分量、速度、密度を間違えるとさらに広がってしまい、それどころか前の俺みたいに閉じ込められてしまう。
アマテラスさんが流し終わったら、もう発生しないように魔方陣を張っておく。半分これは気休めだ。
時間を戻して、俺の世界へ帰る。
あの話をするためにアマテラスさんも一緒だ。
「いつみてもおっきいね‥‥‥」
やめてください。
こんぐらいでいいかなー。って適当に創ったら他の最高神達のはもっと小さかった。
っていうのに気づいたのは50年位たってからだった。
恥ずかしい‥‥‥
そうこうしている間に俺の部屋についた。
あ、そう言えば資料フェントに頼んだまんまだった。
ま、いいか。
そう思って部屋に入る。
そうしたら大量の資料が‥‥‥
机の上に乗りきらず、床に積み上がっている。
ゴミ屋敷みたいだ。
うん、ありったけ持ってきてって言ったもんな。
「‥‥‥応接室にしましょう」
「これ全部君が見るの‥‥‥?」
「ええ、一応」
精神が狂いそうな量だ。
俺は狂ってねえよ。
応接室で全部話した。
俺の今の力のこと、戦争のこと、勇者のこと。‥‥‥部下に殺されかけたこと。
全部話した。
「そっか」
アマテラスさんは本気で心配してくれた。
「ここから‥‥‥離れるんでしょ?」
「はい。少なくとも、力が戻るまでは」
「どこに行くつもりなの?」
「それは‥‥‥まだ」
「でも、君より力の強い人って居ないんじゃない‥‥‥?」
「そんなことないと思いますけど」
「少なくとも僕は見たことないよ」
「‥‥‥確かに」
3000年位前では1柱いたが、力を扱うのがあの頃よりずっと上手くなっているし、力の総量が増えたから問題なく勝てる気がする。
どうしよう。
俺はどうでもいいと考えるタイプだが、自分より強い神様は招きたくないって考える神様が殆どだ。
もし自分の世界で暴れられたら、誰も止められないから。
うーん。色々とヤバイことが重なりすぎていて何も考えられん。
どうしたものか‥‥‥
「ねぇ、行くとこ無いなら日本‥‥‥来る?」