最強の冒険者ギュテスですって
「いよいよ今日ですねー」
「暴走した自分を今恥じているよ‥‥‥」
「今更ですよご主人様」
『我が主なら確実に勝てるでしょう。応援していますので気を張らないようにリラックスして試合に望みましょう』
クラセントさん。それ逆に追い詰めてるぞー。
「行きますか‥‥‥‥気乗りしないけど」
「ピリュ!」
コロシアムに向かう途中、沢山の人が俺と同じ方向に歩いていく。俺の試合を観に行くためだ。あの王子が『カフェのオーナーと最強冒険者の激突!』なんて記事を色んな所に書きまくったお陰でこうなっている。
お陰でうちの店は大繁盛だけど!金がガンガン貯まっていくけど!
『いいじゃん』
良くは無い!良くはないぞ!
「フィムさん‥‥‥」
「私に会ったのが貴様の運の尽きだ!最強の冒険者に手も足も出ずにやられるがいい!」
「でもフィムさんって俺がちょっと威圧しただけで気絶しましたよね?」
あ。無視された。いいけど。
「ふー‥‥‥やだぁ。もうやだぁ。色々面倒なんだけど‥‥‥」
選手待機室で聖十刀を磨きながらボーッとする。客はドンドン入ってくる。賭けが行われているけどクラセント達以外は俺に入れてないだろうな‥‥‥ん?一人いた。
グラスさんやん!あの人仕事は!?サボってんのか!?
『俺出たいんだけど。楽しめそうじゃない?』
駄目に決まってんだろうが。天の天敵に勘づかれたら俺だけならまだしもソルトや隼人が危険なことに巻き込まれる危険性がある。分かるだろ。
『分かってるさ。お前と俺は考えてることは一緒なんだから』
お前に言われると気持ち悪いわー。
ガチャ。と音がして選手待機室の戸が開く。
「お前が対戦相手か?弱そうだな。死んでも知らねぇぞ」
髪の毛が灰色の筋肉がスッゴい男が入ってきた。しかも超上から目線。流石にイラっと来た。
「ええまぁ。よろしくお願いしますね」
「ケッ!死ぬ覚悟無いなら出ていきな」
何でそんな話になるのか。
「武器は刃が潰してない真剣勝負だ」
「は!?何ですかそのルール聞いてないんですけど!?」
「言えばビビって逃げ出すと思ってな」
ヤバイ!俺最悪この人殺しちゃうかもしれない。
「それはお前の武器か?脆そうだな。俺のお下がりと交換してやるよ」
「結構です!」
『俺が脆いだと!?極星!こいつ殺せ!今ここで殺せ!』
アホか!今ここで殺したらそれこそ捕まるわ!後でボッコボコにするからお前は黙ってろ!
「お二方。準備ができました。コロシアムにどうぞ」
あー。どうしよ。
「格の違いを見せ付けてやる」
こいつ殺したくて仕方ないんだけど。
「今回の試合は!なんと!このオーグラスの演奏家キョクセイと第一王子アトラ様の決闘!」
観客が湧いている。もうやだ。帰りたい。
「アトラ様の代理として。なんと!最強の冒険者!『ギュテス・ジャーノルド』が参戦!さあさあ!音楽家キョクセイはどう切り抜ける!?」
俺の紹介雑!そっちの方がありがたいけど。
「今回のルールはいたって簡単!相手が気絶、降参するまで!非殺傷結界が張られているので全力で殺しあってください!」
よかった!殺しても大丈夫なんね!
「ただーし!一撃必殺等になると本当に死んじゃうので気を付けてくださーい!」
全然大丈夫じゃなかった!刀でズシャッといけばいい訳じゃないのか。
「魔法の使用は認められています!また、武器は何でも大丈夫です!ただ、真剣でお願いしまーす!」
要するに。
『何をしてもいいから相手を気絶、降参、または殺すまで試合は終わらないって訳か』
あー。どうしよ。あいつが降参するとは思えないから寸止めはやめた方がいい。かといって魔法をぶっぱなしてもなー。
「それでは両者!登場です!」
「はぁ‥‥‥‥」
「グハハハハ!俺の勇姿を見せるときだぁ!」
なに言ってんだこいつ。
一足遅れて俺がコロシアムに出る。あいつがど真ん中で剣を掲げてアピールしている。何やってんだよ。
『プライドを叩き折ってやれ!』
言われなくてもそのつもりだ。
「それでは両者配置についてください!いいですか?戦闘、開始!」
始まったか。
「うらああぁぁぁ!」
うぉう。なんであいつでかい武器で間合いを詰めるんだ?俺みたいに相当武器を使い馴れてないとできないだろ。いや、使い馴れてる。か。
「え。おっそ!」
「な!?」
おっそ!マジでおっそ!
「1!2!3!」
掛け声と共に地面から大量の氷の柱が出てくる。
「こんなもの!」
お、流石は最強の冒険者だな。動きがいい。
「でりゃああああぁぁぁ!」
「ん」
攻撃を全部捌いて避ける。聖十刀は背に背負ったままだ。
「なんで当たらないのでしょうか!?ギュテス選手!体調でも悪いのか!?」
俺が凄いとは考えないのな。いや、別にいいけど。
「そろそろこちらからも手を出させていただきます」
聖十刀を鞘から抜き、ギュテスに軽く斬りかかる。
「ぐっ!」
剣で受けたがそのまま真横に吹き飛んでいった。弱い。
「な、なんということでしょうか!ギュテス選手が吹き飛んだ!?いや、これはきっと自分を魅せるためにギュテス選手がわざとやったのでしょう!」
なんだそれ。みたまんまを信じろよ。俺は聖十刀を地面に突き刺し、
「神の頂点にたつものより命ず。汝らにこの一時のみ力を授けよう。命をもち、自分で考え動き、わが敵を倒さんと願う」
誰にも聞こえないように腹話術っぽく口を殆ど動かさないようにして言う。
すると、地面から地響きが鳴り響いた。
「な、何をしたのでしょうかキョクセイ選手!?」
地面から大量の土人形が出てくる。全てが動物で兎などの可愛らしいのからライオンとかの肉食動物まで、種類は様々だ。
「フフ。耐えられるかな?」
思わず笑ってしまう。この技、魔法なのかは微妙な所だ。神力を地面に流し、一時的に命を吹き込む。簡単に言えば九十九神を大量生産だ。
「な、なんだこいつらあああぁぁぁ!」
よし!あとは放っておけば動物達が何とかしてくれる。高見の見物だな。
「ぐあっ!」
お、ライオンが噛みついた。血がボタボタ出ている。グロいなんて思わんが。
「せ、正々堂々と戦え!」
「魔法ですよ?ルールにも魔法使用許可はありましたし?」
そんなに言うならいいさ。まぁ、動物に群がれて試合終了ってのも可哀想だ。少し位相手してやればいい。
「下がれ」
俺が命令するとそれまでギュテスに群がっていた動物達が一斉に道を開ける。
「さて。やりますか?」
「ふ、ふっははは!奥の手を見せたお前に勝ち目はないわ!」
そう言って突っ込んでくる。はぁ。
「おっそ」
鞘ごと聖十刀を一閃。再び吹き飛ぶギュテス。
「ど、どういうことでしょうか!?ギュテス選手、キョクセイ選手に手も足も出ない!」
当然。種族の格が違うのさ。
「う、ううおおおおおっぉぉ!」
「もうめんどい。お休み」
鞘から抜き、魔力を流し切れ味をわざと悪くする。そのまま逆袈裟に切り上げる。ギュテスが防げるはずもなく、血を吐きながら吹き飛ぶ。その後、死んだように動かなくなり、結界の力で外に弾き出されて巻き戻し映像のように体が修復される。
「はぁ‥‥‥。次は、アトラ王子。貴方です」
観覧席に座り、茶なんか飲んでいたアトラ王子に話しかける。アトラ王子はまさか俺が勝つとは思っていなかったのだろう。目を大きく見開き、半分泣いている。
「な、なんということでしょうか!最強の冒険者ギュテス選手を打ち破り、キョクセイ選手、勝利だああぁぁぁ!」
観客席の方からとんでもない大音量で歓声が浴びせられる。そんなのはどうでもいいが。
『いいなー。俺もちょっとやりたかった』
弱すぎて話にもならなかったがな。
『まぁね。動物軍団に負けそうなるってよっぽどだよな』
「キョクセイ選手!戦闘後のお気持ちを!」
「まだだ」
「へ?」
「アトラ王子。貴方です。約束をお忘れですか?」
もう逃げようとしているアトラ王子に追い討ちをかけるようにして話し掛ける。
「代理と戦ったら私が相手する。そう聞いてこの決闘を受けたのです。まさかお忘れですか?」
「‥‥‥‥」
アトラ王子の顔が恐怖に歪んでいく。先程の戦闘を見せ付けられたら当然嫌だと思うだろう。だが、こちらはギュテスなんかと戦いに来た訳じゃない。アトラ王子をボッコボコにするために来たんだ。
ハハハ!俺に喧嘩売った事、後悔させてやる!
『こえー』
あ?
『何でもないでーす』




