グラスさんは親バカなんですね
「あ、ご主人様。お帰りなさい」
「もうちょっと心配してくれよ」
クスリと笑うと、
「ご主人様が負けるなんてこと、天地がひっくり返っても有り得ませんので」
その自信はどこからくるんだ。
とにかく、こっちが何かあったら大変だと思ったが大丈夫みたいだな。まぁ、ソルトもいるし。
ドラゴン相手にしてまで泥棒しようとするアホは早々いないと思うけどな。
「これからは、本格的に副業として冒険者をやっていこうと思う」
「構いませんが‥‥‥理由をお聞きしても?」
「特にこれといった意味はないさ。ただ、今回のことで色んな方面に俺のことが知れたからな‥‥‥保険みたいなものだ」
今回、冒険者だって名乗ってきてるから実際に殆ど冒険者っぽい事やってなかったらなんかちょっとね‥‥‥。
次の日。
俺は早速ギルドにいってみた。
こんなに人が居るとは‥‥‥ちょっと予想外。
「新入りか?」
うおっ!いきなり話しかけられたからビックリした。
「ええ、まあ。良い依頼とかありますかね?」
「いきなり討伐系受けんのか?」
「変でしょうか?」
「いやまぁ、変ではないんだが‥‥‥お前さん、戦えるのか?」
そっちか。
「一応は」
「自分を過大評価しない方がいいぜ?」
過大評価か‥‥‥。
俺、自分の事を過大評価してるかな?寧ろ過小評価し過ぎと周囲から言われるくらいなんだが。
「多分大丈夫ですが‥‥‥肝に命じておきます」
「命あっての物種だ。気を付けなよ」
「ありがとうございます」
依頼ボードに改めて目をやる。こうしてみると結構この辺ってモンスターが多くて物騒なんだよな。
俺が気にしなきゃいけないのは天の天敵なんだけどな。よくよく考えてみるとなんでゼリオとあんなに仲良くなれたんだろうな?
「うーん‥‥‥」
色々あるが‥‥‥。
俺は討伐系を基本的に受けるつもりだ。自分のスペックを理解しやすいし、基本的にお金が稼げる。
やっぱりランクは高い方がいいかな。
報酬も中々いいし、流石にゴブリンとか相手なら俺の力を試す前に全滅してそうだから、俺の攻撃にもなんとなーく耐えられるくらいの‥‥‥。
「極星君!」
おお、グラスさん。
「おはようございます」
「おはよう。と言うか、やっと正式に冒険者になってくれるのかい!?」
周りがめっちゃ注目してるのをグラスさんは気付かない。
「え、ええまぁ。ちょっとやりたいことがありましてええええぇぇぇ!」
話してる途中にグラスさんは俺の手を引っ張っていつものギルドマスターの部屋に駆け込んでいった。
「‥‥‥なんだ今の」
周囲の反応も当たり前っちゃあ当たり前だろうな。
ギルドマスターの部屋に放り込まれた。
「‥‥‥もっと‥‥‥優しくお願いします‥‥‥」
「ああ、すまないな。つい興奮してしまって」
いつになく上機嫌のグラスさん。
「何かあったんですか?さっきから機嫌が凄い良さそうですが。何か良いことでも?」
「ふっふっふ。よく聞いてくれたね、極星君。実はうちの娘が、パパ助けてくれてありがとうって‥‥‥ぐふふ」
まるっきり絞まりのない顔してるぞ。
「それは良かったですね」
「そうなんだよ‥‥‥ぐふふ」
笑い方‥‥‥。
「まぁ、それは一旦おいといて本題といこう」
置いとかないで回収してくれ。
「君は正式に冒険者になってくれるのかい?」
「ええまぁ。そのつもりです」
「急に受け入れてくれたのはなんでだい?」
「天の天敵のやつらに完全に顔ばれしたからってのが大きいですね」
「顔ばれすると不味いのかい?」
「俺がカフェとかにずっと居座っているとカフェ自体が狙われる可能性が高いからですね。あと、町中で遭遇したときに周囲を巻き込んでしまう可能性が高いからです」
近所のおばさんたちは俺たちに良くしてくれるし、迷惑はかけられないからな。
「成る程ね。町の外の方が危険が少ない、と」
「そんな感じですね」
「じゃあ君にプレゼントをあげよう‼」
「わーい‥‥‥なんですか?」
「ノリは良いんだね‥‥‥これだよ」
そういって水晶を渡される。普通の水晶だ。未だ加工もしてないやつ。原石状態の。
「それをギルドカードの上に乗せてごらん」
?なにがしたいんだ?
とにかく、乗せてみた。何も変わらんけど。
「これってなんです?」
「まぁまぁ‼もうちょっと待て‼」
グラスさんが興奮している。何が起こるのだろうか?
「おお‼」
水晶が溶け出した。
「ちょっ‼溶けてますけど‼」
「大丈夫。こういうやつなんだ」
水晶が溶けるって何度の熱が‥‥‥あれ?全く熱くない。魔法か何かに反応してるのか?
どんどん溶けて水晶が小さくなってくる。
「いよいよだ‥‥‥」
隣でグラスさんがワクワクして仕方がないって感じで覗きこんでくる。ちょっ‼近いって‼
俺の中から魔力が大量に吸い込まれていく。
「え!?魔力がとんでもない勢いで吸われるんですけど‼」
「そりゃそうだよ。全部吸われるよ」
「いや、説明してくださいよ‼」
「ふっふっふ。これはランクアップの儀式なのさ‼」
ランクアップ?でも俺って最高のZランクだろ?
「Zだからもう上がらないじゃないですか」
「チッチッチ。もうワンランク上のランクがあるんだよ‼」
何ランクあるんだよ。
「これを知っているのはギルドの超上層部か、各国の王位しかしらないんだよ‼」
「じゃあ、俺より強い人が本当は居るんですか!?」
「いや?君が世界初のZランクだし、この儀式を受けるのも君が初めてだ」
だから興奮してんのか、このおっさんは!
「ランクなんて討伐系を受けられるくらいのものがあれば十分なんですけど」
「ランクがあがれば良いことたくさんだよ、極星君!」
そうっすか。
「吸われ過ぎて目眩がしてきたんですけど‥‥‥」
「いや、普通なら数秒持たないくらいだからね?全く、何て魔力量だ。このオーグラスのエネルギー全部賄えるんじゃない?」
「多分いけますけど‥‥‥ああ、やばい。クラクラする」
俺の魔力を極限まで吸い上げたギルドカードが光りだした。
そう思ったら、体から力が抜ける。
神力を魔力補充に当ててなんとか持ちこたえた。
「なんで倒れないのか疑問にもならないよ」
「いや、これものすごい疲れるんですよ?魔力がスッカラカンになったのを体力で補充してるんですから」
「‥‥‥それのやり方を知りたい」
俺が手を離しているのにギルドカードは宙に浮いたままだ。
「なんでここまで吸い上げるかな‥‥‥」
俺はぶつぶつ文句を言いながら空気中の魔力を取り込む。やっと目眩がしない程度まで回復した。
「産まれるぞ‥‥‥」
は?
産まれる?
「あの、どういう事か説明‥‥‥」
するとギルドカードが突然眩しすぎるほどの光を発する。が、不思議と目は光を浴びたときのような痛みは感じず、逆に神々しいとでも言おうかそんな感じに光っている。
ギルドカードの上に、光り輝く魔石が生成された。
いや、魔石って規模じゃない。とんでもないくらい大きい。人が一人楽々入れそうなデカさ。
それが生成されてギルドカードが床に落ちた。
「なんですか、これ」
「さぁ‥‥‥?」
あんたが困惑してどうすんだよ‼
「これ売ったらいくら位になりますかね?」
「もう国宝級だよ‥‥‥」
そんなに凄いのか。




